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2023-12
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長谷部安春「レイプ25時 暴姦」●映画レビュー

日活ロマンポルノは愛の宝庫だ

「桂千穂の危ない悦楽映画図鑑」というレイトショーが開催中。
大林宣彦監督の「HOUSE ハウス」の脚本家だという桂千穂さん。「HOUSE」は大林監督の劇場映画デビュー作であり、いちばん彼の魅力が凝縮されているスゴイ映画。あんな毒々しいパラレルワールドを展開する人が、日活ロマンポルノで多数脚本を手がけていたという・・・これはもう、期待せずにはいられない。

「ロマンポルノ」というと、食わず嫌いの人にはなかなか近寄れないジャンルかもしれない。
僕も最初はそうだった。

20代前半の頃の僕は、いくつかの映画館の年間パスポートを持ち、連日のようにハシゴして、なんでもかんでも見まくっていた。当時、高田馬場と池袋にあった「ACT」という名画座では、ほぼ日替わりの特集上映があり、日活ロマンポルノもやっていたので恐る恐る見に行った。
・・・最初はその刺激と毒気にフラフラするほど衝撃を受けたが、だんだん衝撃は快感になった(笑)。そして、ただのピンク映画ではなく、中には相当オモシロイ作品があることも知った。なにより人間の欲望・暴力・本性が剥き出しに表現され、あからまな姿で提示されるというのが魅力だろう。
中には、あからさまな表現を突き抜けて普遍的な人間の姿が表現されている傑作もある。

一皮剥けば愛に飢え、それぞれの愛の渇きを埋めるためにもがき苦しむのが人間というもの。
薄っぺらなハリウッド映画よりもずっと確かに、そして誠実に、人間本来の姿が描かれている。


暴力というのは、濃厚なコミュニケーションの究極の形かもしれない。

ガソリンスタンドで働いている冴えない男が、或る日、赤いジャンパーの男をかくまったところ物語は始まる。赤いジャンパーの男は、ゲイの男の追跡を逃れながら、あちこちで女性を強姦しているらしい。冴えない男は、彼と行動を共にするうちその退廃的で虚無的な生き方の虜になり、一見善良な顔をした女性を強姦することに病みつきになって行く。

世間の倫理・道徳からしたらこのような行為はもちろん犯罪。この映画はそうした世界をフィクションの中でリアルに描く。その妄想めいた世界に圧倒されながらも、犯し犯され、殺し殺しあうバイオレンスの中で見え隠れする、登場人物たちの一瞬の恍惚の表情が印象に残る。

例えば純粋無垢の象徴としてバレリーナの若い女性が登場するのだが、窓から侵入してきた男二人に輪姦され、血まみれになり泣き叫びながらもやがて彼らの虜になる。果ては金を払ってまで行為を要求するようになる。一度知ってしまった快楽は、人を虜にする麻薬のようなものなのだ。赤いジャンパーの男は、あちこちでそうした虜を作りながらも、何者にも執着しない。ただ一瞬の快楽を求めてさまようのだ。

強姦や殺人という暴力は、生身の人間同士が行う以上、どちらにも強烈な痛みが生じる。
それってもしかしたら、濃密なコミュニケーションの究極の形なのかもしれない。
正しいとか正しくないとかいう道徳的な問題は別として、そうしたものの虜になって依存症になり退廃して行く姿というものに、僕はものすごく人間らしさを感じる。

そうしたものを包み隠さずフィルムに定着させる人たちに、人間というものへの
嘘偽りない、まっすぐなまなざしを感じた。


「レイプ25時 暴姦」
製作=日活 1977.01.22 公開
製作 ................  伊藤亮爾
企画 ................  奥村幸士
監督 ................  長谷部安春
助監督 .............  浅田真男
脚本 ................  白坂依志夫 桂千穂
撮影 ................  森勝
音楽 ................  月見里太一
美術 ................  川崎軍二
照明 ................  土田守保
編集 ................  鈴木晄
出演 ................  山科ゆり 石山雄大 高橋明 塚田末人 八城夏子 田畑善彦

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コメント

この記事へのコメント

いいなーレイトショー。結構イイのやってるもんねえ。自分は石井輝男監督の60年代モノとか凄い好きです。ピンク/ロマンポルノ系もいくつかみましたが桂千穂さんの興味あります。”ピンク映画の歴史”みたいのや”ピンクを作ってた人のインタビュー”などのドキュメンタリー映画がここ数年海外の映画祭などで上映されたり、学会で特集されてりしてるんですよ。
こっちの海賊版だけど”神田川淫乱戦争”というの見ました。他のもみてみたいっす。

「ロマンポルノ」って、見たい見たいと思いつつ、一度も機会がないですね…。映画館に1人で入るのも恥ずかしいし、誰かを誘うのはもっと恥ずかしいような。縁がないんだなぁ…きっと、と思っていたのですが、そのうち自分で機会を作って、見てみようと思いました。
なんとなく、ですが、良心的な人が憚るようなモノや表現には、妙に惹かれます。

●flowfreeさん。
石井輝男監督も、かなりグロテスクな表現者ですよね。
ピンク映画。
日本映画が斜陽化するとともに興隆したのですが
志のある監督は、低予算や制約の中でも負けずに
(逆に制約を逆手にとって)素晴らしいものをたくさん作ってますよね。
公開当時、実際に見に来る観客がどれほど気づいていたかは疑問ですが。
それでも手を抜かずにやっていたというのがスゴイ。
「神田川淫乱戦争」は黒沢清監督のデビュー作ですね。
タイトルはとりあえずピンク映画っぽいですが全然エロくないです。
濡れ場もありますが、まったくエロくない。
規約上しょうがないから入れた、という感じで淡々とSEXしてます(笑)。
これぞまさしく制約を逆手にとってピンク映画自体を茶化してしまったかのような
オモシロイ作品だと思いました。
監督の戦略的な「ピンク映画崩し」を感じさせます。
例えば、ピンク映画なのに・・・
なぜか小津安二郎調のFIX(固定カメラ)低位置からの撮影が多用されてますし(笑)。
結果的に・・・
この世の空虚で乾いた質感を捉えた怖い映画だと思いました。

●santanicoさん。
いわゆる現役の(ロードショーの)本物の成人映画館には
たしかに入りにくいと思います。僕もそうです。
映画見てると変なおじさんが寄って来ますし(笑)。
だから、見るのなら
こうした名画座でやる特集上映で見た方がいいと思いますよ。
この「レイプ25時 暴姦」 の時も、観客の半分以上は若い女性でした。
男性はいても、女の子に連れて来られた彼氏とか・・・
ちょっと意外な雰囲気で驚きました。
だから、とてもフツーの雰囲気で見ることが出来ますよ。

そうなのよー、神田川淫乱戦争!映像がなんかしょうがないからH入れた、というか、観てて虚しくなるんだよね。知ってますねー。DVD持ってるんですよ。これみて、やっぱり深いなあ~とか思って。小津のカメラワークは、友人と一青窈初主演映画「珈琲時光を見た時も同じこと言ってたのよ、って小津記念のための映画だったから当たり前か。
ピンクとロマンポルノの違いも”Pink Ribbon"というフジイ・ケンジロウ監督のドキュメンタリー話していた気が。これは結構前の監督とか女性監督もでてて興味深かったです。”百合祭”の浜野監督はピンク映画が一番元気だったときの唯一関わった女性(助監督)だった、ということで彼女に関しては一時色々読みました。やっぱり男性がメインだったから役割が決められてた、などなど。
映像は専門(趣味じゃなくて)でしたよね。映画じゃないけど最近自分は70年代の天地茂出演の江戸川乱歩ドラマに注目してます。有名俳優・女優がテレビなのに凄い事してるし演技のレベルも凄い。さすがあの時期の、と一人で関心してます。

「ACT」、懐かしいですねい。
他では上映されないマニアな作品が観れて、
時々足を運んでいました。
日活ロマンポルノはやはり特集でいくつか観ました。
まだ十代でしたので、かなり刺激的で:笑
今観ると全く印象が違うでせうね。
お仏蘭西に居た時に、アチラのフィルムセンターで観た
仏映画で日活ポルノが影響受けたンでないの?
と思わせるものがありました、、

●flowfreeさん。
黒沢清監督は、虚しさだとか、空っぽの感覚とか、
一見ドラマティックではないものの中にドラマを感じているのかな?と
思ったりします。
かなり「突き放した」表現が多くて、冷たいんだけどなぜか安らぎを感じたり・・・。
浜野佐知監督は、ものすごい数のピンク映画を量産してきた女性ですよね。
舞台挨拶している姿を見たことがあるのですが、
さすが男だらけの現場で叩き上げてきただけあって
エネルギーの塊のような人でした。
「ピンクはいくら作っても評価されない」という発言が印象に残ってます。
天地茂さんの江戸川乱歩シリーズは、まだ未見です。
テレビドラマなのにすごいんですか・・・興味ありますね~(笑)。

●ろゆふさん。
「ACT」ご存知ですか、嬉しいです(笑)。
今から思うと夢のような名画座でした。
年間パスポートが15000円で、池袋と高田馬場の2館が入場フリー。
しかもほぼ週代わりで国内外問わず、かなりマニアックな映画を
フィルムで上映してたんですからね~。
もう、時間が空いたらとにかく入り浸って、なんでもかんでも見てました。
気に入ったものがあったら 5,6回繰り返して見たり(笑)。
でも、そんな良心的なシステムだから経営はヤバかったみたいで
(僕みたいな奴のせいですね・・・笑)。
だんだんプログラムが客入りを意識してつまらなくなってきて、
僕も一通り見たから足を運ばなくなったのですが・・・
ある日突然、閉館しました。
興行関係の友人からの噂では、経営者は夜逃げ同然だったらしいです
(正確にはわかりませんが。)
僕にとっては、あれだけの量の映画をフィルムで見れたということが
今となっては本当に、夢のような記憶となっています。
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