フツーに生きてるGAYの日常

やわらかくありたいなぁ。

2017-10
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KIRA'S CABARET「カルテット」●PLAYレビュー

 ゲイをオープンにして活動している俳優、青山吉良氏。

 映画『メゾン・ド・ヒミコ』で柴咲コウ演じる沙織と一緒に楽しそうに女装をしながらはしゃいでいた「あの方」。女装でディスコに出かけ、かつての会社の後輩に見つかって失神して倒れる演技をしていた「あの方」。

 「あの」青山吉良さんが立ち上げた演劇プロデュース企画「KIRA’S CABARET」の第一回公演は、ハイナー・ミュラーの『カルテット』を果敢にも取り上げた。

 ミュラーといえば旧東ベルリンで50年代から劇作活動を開始し、「ベルリンの壁」が崩壊する前後までの激動の社会を鋭く風刺し、先鋭的な戯曲として結実させ世界の演劇界に多大なる衝撃を与えた劇作家。特に『ハムレットマシーン』という戯曲は既成の演劇システムを根幹から疑わせる衝撃的なスタイルのテキストとして、今でも繰り返し世界中で上演され続けている。(本人は1995年に死去)。

 僕はかつて、ミュラーの『ハムレットマシーン』に衝撃を受け、彼の自伝を読み漁ったことがある。大国に翻弄される小国の運命や、権力者に翻弄される国民の運命を、男性に陵辱される女性に置き換えて表現することの多いミュラーの演劇作品は、「東ベルリン」という特異な環境で冷戦時代を生きざるを得なかった作家の、屈折した冷ややかな視点に満ち、とにかく尖っていて刺激的だ。

ハイナー・ミュラー著「闘いなき戦い―ドイツにおける二つの独裁下での早すぎる自伝」
ハイナー・ミュラー著「悪こそは未来」

 『カルテット』は二人で4役を演じるスキャンダラスな内容の愛憎劇。真っ赤なドレスに白い大きなかつらを被り、まるで「白髪のドラァグクイーン」であるかのような扮装で登場した青山氏は、女役と男役を何度も往還しながらミュラーのテクストと格闘した。青山氏独特のアンニュイな雰囲気が漂う風貌は、退廃的で死臭が漂うミュラーの劇世界にマッチする。

 なにより青山氏の演技は、とかく難解だとされがちであるミュラーのテクストをきちんと肉体化し、シュークスピアのように「格言の数珠つながり」のような台詞に「魂」を吹き込むことに成功していた。彼の俳優としての経験の蓄積の分厚さが、如実に滲み出ていて圧倒される演技だった。ただ、もう少し演者二人の間での演技上のコミュニケートが上手く成立していれば、さらに魅力の増す舞台に昇華したことだろうと思う。

 これだけ「文学的」で暗喩と隠喩に満ちたテキストを90分間の二人芝居で見せるのには、相当な覚悟と集中力が必要だ。しかし演出も手掛けた青山氏は、派手な演出的な技巧には走らず「演者の存在の魅力」で勝負するという賭けに出た。

 結果、観客の集中力が最後まで持続するには、なかなか厳しい舞台成果ではあった。しかし、「男」や「女」というジェンダーを次々と往還してみせる演技的な仕掛けの面白さは感じられたし、青山氏の存在そのものから伝わってくる並々ならぬ意気込みと「表現者としての魂の叫び」は伝わってきた。そして今後も「彼が出るなら」舞台に足を運ぼうと、決意する僕がいた。

 まずはプロジェクトの船出を祝福したい。今回の公演での経験を生かし、今後はさらにエキサイティングに「エンターテインメント性」も加味しながら、他ジャンルのクリエイターとも融合し、さらなる発展と積極的な活動が展開されることを期待する。

<公演は14日(日)まで>
KIRA'S CABARET公式ホームページ


●青山吉良氏のプロフィール(HPより)
 21世紀に入り50代を迎え、ゲイとして表現を発信していきたいとカミングアウト。ドラァグショーへの出演、ゲイのアクティビストとして活躍している大塚隆史と演劇ユニット「D.O.G.」(Dangerous Old Gays)の旗揚げ、映画「メゾン・ド・ヒミコ」(監督:犬童一心、2005年公開)への出演等、新しい挑戦が始まっている。主な出演作品としては岩波ホール「トロイアの女」、冥の会「メディア」、横浜ボートシアター「マハーバーラタ・王サルヨの誓約」、t.p.t.「あわれ彼女は娼婦」、シアターX「女中たち」、新国立劇場「野望と夏草」、空中庭園「悲劇フェードル」、フライング・ステージ「トリック」、D.O.G.「違う太鼓」など。

●菅原顕一氏プロフィール (HPより)
 幼児期に結核を患い、小学校は養護学級で過ごす。アングラ劇にあこがれ上京脳腫瘍が判明し、家族のいる仙台に戻る。回復後、NHKの仙台放送劇団に入り、数々のラジオやテレビドラマに出演。代表作に芸術最優秀賞受賞の『塚本次郎の夏』(1977)がある。また、当時の仙台で新風を吹き込んだ劇団「演劇工房」に参加。舞台でも活躍するが、またも体調不良で入退院を繰り返し、さらに交通事故で左の手足に麻痺が出るようになり、演劇を断念する。50代になり演出家・笛田宇一郎の「障害のある身体だからできる演劇もある」との言葉に刺激を受け、ベケットの一人芝居の上演を始め演劇活動を再開する。

●青山吉良氏のメッセージ(パンフレットより)
「多様性のある社会。それを支えていくのは想像力です。自分と違う存在とどう向き合うか・・・。今ほど想像力の危機を感じる時はありません。ささやかな場ですが、KIRA’S PROJECTが演じる側、観る側双方の想像力が出会い、よりしなやかに力強く生まれ変わる磁場となることを願ってやみません。よろしくご支援のほどを!FC2 同性愛Blog Ranking
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コメント

この記事へのコメント

以前観た映画『危険な関係』のグレン・グローズと吉良さんを対比させながら見ていました。楽しかったです。

●seaさん。

観に行かれたのですね。ハイナー・ミュラーの台詞は本当に
「文学的(=活字で理解する種類の言葉)」なので、言葉に引っ張られると難しいんですよね。
それをどう「言葉以外の表現で」肉体化できるかどうか。
青山さんは「搾り出すような内面表現」を目指して格闘し、健闘していたと思います。
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