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2023-06
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川西玲子著「歴史を知ればもっと面白い韓国映画」●BOOKレビュー

 つい最近まで「近くて遠い国」であり、情報が少なく日本からは「よくわからない国」として映っていた韓国ですが、ヨン様ブームの威力で一気に「親しみを持てる国」にイメージが塗り替えられたのは、ほんの3年前の2003年から翌年にかけて。あのブームのおかげで一気に映画やテレビに韓国の映像が流れ出し、ヒットチャートも韓国出身の歌手が賑わすようになりました。

 「カッコいい」とか「流行ってる」とか、そういう「感覚」によってもたらされた(あるいは仕掛けられた)ブームではありますが、確実に人として「親しみ」を持つことにはつながったように思います。見えないから相手に勝手な妄想を抱いて敵対視してしまう。見えてしまえば実はなんでもない。同じ人間としての想像力を持つために、「映像」の果たした役割は本当に大きかったと思います。このことは未だにテレビ映像として「日常が見えない」存在である北朝鮮の人々を語る際にも、念頭に置くべきなのではないでしょうか。テレビは「映し出す」ものには親しみを呼び起こさせますが、「映し出さないもの」には妄想をもたらしやすいメディアですから。

 まだ「韓流ブーム」が起こる前。韓国映画は「一部映画ファン」たちの間のみで熱狂的な人気を博している、知る人ぞ知るマニアックな存在にしか過ぎませんでした。僕はその頃アルバイト先の女の子に誘われるがまま、キネカ大森という映画館で行われていた韓国映画特集に通ったことがあります。それが韓国の映画にちゃんと触れた最初のきっかけでしたから、つまりそれまでの20数年間、僕は韓国映画を観たことすらなく育ったのです。隣の国のことなのに、なんということでしょう。

 耳慣れない韓国語に戸惑いながらも見てみたら本当に面白かったし、地味だけど骨太で志が高く質の高い韓国映画の数々は、忘れられない記憶として残っています。「ペパーミント・キャンディー」「われらの歪んだ英雄」「豚が井戸に落ちた日」など。共通するのは、どれも皆「鋭い社会風刺」という牙を秘めているということ。その頃は今よりも韓国社会が緊張状態にあったためか、映画作家たちが「表現者としての魂」を鋭く持っていたように思います。

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DVD
「ペパーミント・キャンディー」

 ランダムハウス講談社から今年発行された川西玲子著「歴史を知ればもっと面白い韓国映画」は、ヨン様ブーム以前からの韓国映画ファンだった著者による、とても丁寧な韓国社会分析になっています。僕の大好きな「ペパーミント・キャンディー」をはじめ、「シュリ」「JSA」「シルミド」などの近年のヒット大作までも網羅し、映画で描かれた時代や社会背景をより深く知るための格好のガイド本です。

 いざ「歴史」を学ぼうと意気込むと、難しい知識を習得しなければならない気がして敷居が高く感じられてしまうのですが、映画で親しんだ「映像イメージの記憶」と共に読み進めてみると、とても頭に「入って来やすい」感覚を味わいました。知れば知るほど現実世界の複雑さにワクワクしますし、知りたくなることが芋づる式に増えていくこと請け合いです。そして、日本の歴史とも密接に関わりあっていることをもっと意識せねばと思いますし、韓国の人たちと知り合う上で「知っていなければ失礼にあたること」の多さにも気が付くことでしょう。

歴史を知ればもっと面白い韓国映画 「キューポラのある街」から「王の男」まで

  「二極化」が進行する社会

 ところで。この本の中で、シンポジウム「これからの多様な性&家族&ライフ・スタイル」で語られたことにも共通する、 とても気になる記述を見つけました。

 社会の分裂や世論の二極化は、民主主義社会で世界的に起きている傾向である。アメリカの大統領選挙は、二回続けて僅差の結果。世論が真っ二つに割れていることを示した。実際、ブッシュ支持派と反対派と、家族観からファッション、聴く音楽まで違う。同じ国の市民とは思えない分裂ぶりだ。

 日本も今、そういう傾向を強めている。政治問題に関しての世論調査は、毎回ほとんど拮抗している。韓国もそうなってきた。多様性は民主社会の基本だが、二つに分かれて対話が成立しないような状況はあまり良くない。

 多様性を尊び受容する人々と、それを恐れて拒否する人々。両者が拮抗しながらも「対話」が成立しにくい状況に、日本社会はますますなってきているような気がします。こうした風潮がさらに強まってしまうのだとすれば互いに疑心暗鬼が増すばかり。キナ臭さが漂う由々しき事態を打開する方策を、本気で考えて行かなければ危険です。FC2 同性愛Blog Ranking
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コメント

この記事へのコメント

初めまして。韓国映画の中でも「ペパーミント・キャンディー」をとりあげる人がいるなんて。うれしくて思わず書き込みました。マニアックだった頃に、、監督にサインをもらったことがあるのですが、「人生は美しい」と書いてありましたよ。

多様性の問題は、確かに難しくなってきている面もありそうですね。
個人としては、どこにいても、多様性を受容しようとしない(できない)人もいれば、それを尊重して人と接することのできる人もいるものだと、どこかで楽観している面もあります。誰かの排除や拒否は、結局の所、自分自身を生きにくくしていくものでもありますしね。

●Rhinoさん。

はじめまして。
Rhinoさんは、あの頃の「韓国映画マニア」のお一人だったんですね(笑)。
「ペパーミント・キャンディー」は、Rhinoさんのような「マニア友達」に誘われて
見ることができました。ほんっと~に、全身を感動が突き抜けた映画です。
描かれている内容は、最初見たときにはよくわからなかったけどそれでも感動した(笑)。
その後、「マニア友達」から韓国社会の背景をいろいろ教わっていくと、
どんどん深みが増してきて、また見たくなる映画でした。(そして見ました。笑)
監督のサインもらったんですか、いいな~。僕、この監督大好きです、尖ってるから。

社会の「二極化」が進んでしまっているのだとしたら、ちょっとしんどいけど
「違う意見の人とも対話する」ことをやるべきなんでしょうね。

取り上げてくださって、ありがとうございます

以前お知らせした通り、本を出すことができました。
10代の頃から韓国に関心を寄せ続けてきた思いと、見続けてきた蓄積を形にできて、嬉しく思います。

世間では「韓流」は終わりと言われていますが、この本は脱「韓流」本なんですよ(笑)
韓国映画が韓流を超えて、普通の映画として日本社会に定着し、
日韓両国でいい映画をずっと見続けていけるよう、心から願っています。

●川西玲子さん。

お知らせしてくださったおかげで、この本を読むことができました。
「目から鱗」がたくさん落ちましたよ。
いい映画というものは、根源的な部分で人と人とをつなぐことができるものだと思います。
また、映画の作られた社会背景・歴史などを知ることは、すごく楽しいことでもあります。

イ・チャンドン監督

こんばんは、はじめまして!
イ・チャンドン監督の『オアシス』もいいですよ、『密陽(シークレット・サンシャイン)』もいいですが。

昨年の釜山国際映画祭ではトランスジェンダーが主人公の韓国映画を2本観ましたが
2本とも賞をとっていました。
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