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フツーに生きてるGAYの日常

やわらかくありたいなぁ。

2023-05
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「クイア」を学び切り拓く005●砂川秀樹著「パレード」

 パレードの最終実行委員会に参加するとき。急に無性に読みたくなったので、以前から持ってはいたものの読んでいなかったことを思い出してリュックに入れました。そして大阪への行き帰りの高速バスの中で、この本を隅から隅まで熟読しました(笑)。2000年に東京でのパレードが復活開催された時の証言記録集であり、実行委員長を務めた砂川秀樹さんが監修・編集したものです。

 東京では1994年に第一回のパレードが開催されたものの、90年代の後半は大規模なパレードの開催は途切れてしまっていました。同時期に札幌でのパレードは連続開催されていて、どんどん発展し続けていたのに、なぜか東京は・・・。

 空白期間が長引く中、「そろそろ復活させたい」という気運が人々の間で高まり、実行委員を引き受けるという有志たちが集まって準備が始まります。そして・・・苦労してなんとか、4年ぶりに大規模なパレードを復活させたのです。その当時の盛り上がりとか、関係者たちの感激とか、苦労したエピソード等がぎっしりと溢れんばかりに詰まっていて、はちきれそうな勢いの感じられる本です。

 この本の面白いところは、独自原稿だけではなく「いろんな媒体から」2000年のパレードに関する文章や感想を収録しているところ。「Badi」「G-Men」「薔薇族」などの大手ゲイ雑誌はもちろん、個人のサイトや地域の活動家団体の機関紙に書かれた感想まで、幅広い資料を集めているので多角的な視点から、2000年に起こった東京での「熱い夏」を振り返ることが出来るのです。

 また、いまやパレードと同時期に開催されることが恒例になっている「二丁目のレインボーまつり」も、この時がはじめての開催だったそうです。それまでは「パレード」といういわゆる社会的な「活動」と、二丁目の「商業的な部分」が東京で連携しあうことはありませんでした。しかし、そこをなんとか結びつけて大きなムーブメントを巻き起こしたわけですから、2000年の活動家たちの功績は本当に大きいと思います。

 やっぱり、何事も楽しくなければ続きませんよね。参加者たちが楽しめて商業的な活性化にも繋がるというスタイルは、2000年の成功によって定着しました。東京でこれからも安定して毎年夏に「パレード」と「祭り」が同時開催され続けることは、こうした動きを他の地域でも根付かせて行くための重要なモデルケースとなり続けることでしょう。

 「はじめてのこと」というのは、先行きがわからない分だけ不安を伴いますが、「なんとか実現させたい」という思いの求心力が奇跡を起こすこともあります。その成功体験から生じた喜びは、確実に次へとつながる原動力になります。今年、関西で無事に第一回のレインボーパレードが実現できたのも、こうしたコミュニティーとしての体験が、多くの人々の身体や記憶に蓄積されて継承されて来たからだろうと思います。

 現に10月22日の大阪には、全国のあちこちからパレードを成功させるために同志たちが集まっていました。2000年の「復活ムーブメント」を牽引した砂川さんをはじめ、本当にたくさんの「パレード経験者」の方々が楽しそうに歩いている姿を見かけました。実行委員会の打ち上げの席にも多くの方が訪れ、いろんな話を聞くことができました。

 そうした人たちの思いが次へ次へと繋がって行く。そして新たな人々を巻き込んで大きな流れを作って行く。僕は今年の夏からやっと、こうした活動に参加しはじめたばかりですが、知り合う人々の中に「体験の豊かな蓄積」が確実にあるのだということを感じ、嬉しくなることが多いです。

 この本を読み終わって胸に込み上げてきたのは、なんとも言えない「温かさ」でした。熱い思いは熱いうちに記録しておかなければ消えて行く。消える前に記録するべきだという「使命」を感じ、丁寧に作られた証言集。
 2000年の「熱さ」を、その数分の一でも追体験したような気持ちにさせてもらえる本でした。「思い」を記録してくださっていて、本当にありがとうございました。
砂川秀樹監修・編集「パレード―東京レズビアン&ゲイパレード2000の記録」

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