「クイア」を学び切り拓く004●パフ名作劇場「リム★デズリナイト」

パフナイトをご存知の方は「えっ・・・あのレズビアンの交流スペースにっ!」と思われるかもしれませんが、僕は結構レズビアンの人たちの中に混ざると落ち着く性質です。簡単に溶け込めます(爆)。ゲイばかりの空間にいると、なんとなく「下心」の混じった視線が飛び交っているような気がして緊張してしまうのですが(←考えすぎっ!笑)。レズビアンの人たちの中では、そういう感覚からは自分が解放されます。(あくまでも自分の問題なんですけどね。)

●田中玲 著「トランスジェンダー・フェミニズム」
さてさて今回はレズビアンの映画監督であるリム・デズリさんの特集上映ということで、LGBT系映画マニアと化している最近の僕にとっては絶対に外すことの出来ない機会。わくわくしながらコミュニティースペースのドアを開けました。会場内はレズビアンの人たちばっかりで、ゲイは僕を含めて2人だけ(笑)。まったく緊張せずに「ふら~っと」席に着いたら、隣の方から「あの・・・失礼ですけどトランスの方ですか?それとも男性?」と訊かれてしまいました(笑)。

上映された映画は『え?びあん?!』『父さん、母さん、わたしは… 』『ラベルは?』『バブルティー物語』『恋人はバンバイア』の5本。CMのパロディーのような超短編作品もあれば、ドラマ仕立てでカナダのテレビ局で上映されたという中編作品もあり幅広い内容でした。
リム・デズリ監督の作品は今年の第15回東京国際レズビアン&ゲイ映画祭で『愛のカタチ』を見たことがあったので、見たことのある役者さんも出ていましたし、この監督独自のカラフルでポップな作風は馴染みのものでした。レッテルを貼ることをギャグで笑い飛ばしたり、一見軽いスタイルの中に鋭い風刺を込めた作風は、他の監督にはない独特な「トッぽい」センスだと思います。

上智大学の新聞学科在学中にビデオ制作実習の授業で映像に興味を持ち、イメージフォーラムに通い実験映像に出会います。その後テレビ朝日に就職しながら、「クイアの自覚」を持ち映画の自主制作を続け、『使い捨てレズ』 『♀RoTiCiSm(エロティーズム)』などの実験的な短編を制作。国内のレズビアン&ゲイ映画祭ほか世界のレズビアン&ゲイ映画祭でも上映されます。テレビ朝日をやめてフリーになってからは、Vシネマで「シュガー・スィート」を制作。しかし日本という国の窮屈さにあきれ、表現者としての新天地をカナダに求めて移住しました。

ところがラッキーなことに、やがて「もっと有色人種のカルチャーを」という社会的な動きが起こり、その機会にテレビ局にプレゼンしたら企画が通り、レズビアンが主役のドラマ『バブルティー物語』を制作することに。有色人種で、しかもレズビアンが主役のドラマが堂々とプライムタイムに放送されるという画期的な結果に結びついたのです。他に、この日上映された『父さん、母さん、わたしは… 』 『ラベルは?』も、カナダのテレビのプライムタイムで放送されたそうです。
彼女の表現の根幹は「渇望」だそうです。自分がクイアとしてカミングアウトしたときに、見たいものがなかった。だから自分で「見たいものを作る」という渇望が、彼女を突き動かしているそうです。デビュー作を制作した動機も、あるハリウッド映画への「リベンジ」だそう。その映画ではレズビアンのカップルが描かれていたけれど、最終的には「男に取られる」結末だった。「そんな表現しかない」ことへの怒りが、彼女を突き動かしたのです。

もともと実験映像から映像にかかわりはじめた彼女にとって、テレビというメインストリームで「ホームドラマ」を作ることは、表現方法としては「対極のスタイル」に転向したように思えます。しかし彼女はテレビ局出身ということもあり、「通るものを作って広める」ことをカナダでは選択したそうです。「通らない(実験的な)ものを作って広まらない」よりも、まずは「広めたかった」ということです。
彼女は現在、日本に戻ってきています。次回作は日本で制作しているそうです。自分の表現衝動に忠実に、その時々の環境の中で「自分に出来ること」を選択しながら作品を生み出してきた彼女の生き様を見ていると、とても勇気を与えられました。

●パフナイト「今夜もお騒がせ!リム・デズリナイト」
●次回パフナイトは「へぇ~性教育委員会」11/4(土)18時から
●リム・デズリ(Desiree Lim)監督公式ホームページ
●リム・デズリ監督作品「FLOORED BY LOVE」 「Sugar Sweet」 ・・・海外のamazonで発売中
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