中村中(あたる)の歌世界002●「僕らの音楽」安藤優子さんとの対談記録

真っ赤なドレスが鮮やかで美しかったし、すごく魅力的な輝きを放っている人だと思いました。
対談相手の安藤優子さんは、さすがお姉さんですね。ちょっと臆病気味な彼女に「もっと恋愛で当たって砕けなさい」とアドバイスしたりして、温かみのある素敵なトークが繰り広げられていましたよ。・・・気付いたら思わず番組内容を文字に起こしちゃっていました(笑)。よかったらお読みください。
<経歴紹介>
ナレーション:
シンガーソングライター・中村中(あたる)さん。1985年6月に、男の子として生まれた彼女は、幼い頃より自分の性に違和感を抱き、誰にも相談出来ない孤独な日々を送ります。一方で、Winkに刺激を受け、大好きになった「歌」。いつしか彼女は、自分の中にある不明感を紛らわすため、誰に聴かせるわけでもない曲を、作り続けて来ました。まずは安藤さんが、彼女の抱えてきた心の葛藤に迫ります。
●「恋」(1980年。松山千春の歌のカバー)・・・ギター一本で歌う。<対談>(対談相手:安藤優子)
安藤「性同一性障害ということを、今回、表に出してアーティスト活動をおやりになるって言う・・・それは、いろんなそういう思いの流れの中で、大きな決断だった?」
中村「もともと、出来れば、そういうことを言わなければ、それでいいと思ってたんですね。イロモノ扱いされたりとか、すごく・・・音楽が聴きたい人とかに邪魔な情報になってしまうんじゃないかって思ってたんです。」
安藤「あぁそうか、『こういう人が書いたこういう曲だ』って言う・・・」
中村「はい。そういうものがすごく嫌だったので、皆さんが聴いてくださったように、解釈してくれればいいと思ってたから。ただ、純粋に歌だけで勝負しようと思っているとか言っているくせに、隠していること・・・行動が、あんまり真っ向勝負じゃないような感じがして。」
安藤「表に出てる性と自分が思っている性が違うということに関して向き合うというのは、これまた壮絶な時期だったんじゃないですかね。」
中村「なんだか自分の中に違うものがいるような感覚があって。自分自身に憤りを感じたりとかしていて。」
安藤「あぁ・・・、う~ん・・・苛立つわけですね。」
中村「そうですね。どの部分について怒っているかわからないんですよ、その。自分の・・・もう、性なんかどうでもよくって、どうして自分のことなのに認められない自分がいるんだろうという、そっちに対してもイライラ~ってしていたり。」
安藤「・・・やり場がないですよね。」
中村「そうですね。」
安藤「でもそんな時いつも、やっぱり、音楽が・・・」
中村「だいぶ、そうですね。救われています。単純に自分が煮詰まっていたり、言えないことを、曲にぶつけていたりということが凄く多くて。」
安藤「歌にだったら何でも思いを託せる。」
中村「託せるような、気持ちだったんです。」
安藤「歌を信じてたんですね。」
中村「あぁ・・・そうですね。歌っている間っていうのは、すごく、やっぱり。夢中になれたというか。ただ・・・一度、歌を諦めたことがありまして。」
安藤「どうして諦めちゃったの?」
中村「それは、変声期が来てしまって。単純に、そういうことなんですけど。すごく自分の声が・・・すごく嫌いな所まで落ちてしまって。そうした時にやっぱり、歌が好きっていうだけで始まった音楽なのに、自分自身の持ってることで嫌いになるなんて思ってなかったから。あたし、歌うたえないやって思って。すごく最近まで、本当に思ってたんですよね。」
安藤「もう、すごく物理的にっていうか生理的に嫌なわけですか。」
中村「嫌なんですよ。なるべく・・・」
安藤「聴きたくない?」
中村「聴きたくなかったし。ただ、やっぱり音楽は捨てられなかったからうまく逃れてたんですね。あの、作品作りですとかピアノを弾くっていう事とかに。うまく逃げてたんですけど。」
安藤「歌わないで・・・」
中村「歌わないで、音楽はでも好きだしって。そうじゃないと、もしかしたらちょっと・・・人生そのものを諦めかねないなっていう・・・こともあって。」
安藤「そういう苦しさみたいなのを、お母さんとかに訴えたことなんてのは、あったんですか?」
中村「あんまり・・・無かったですね。私がこういう性格ですから、母も似ていて。すごく『気にしぃ』で、あの・・・真正面から向き合っちゃうんですね。『そんなことないのに』って思うんですけど、すごく、私を、その~・・・なんでしょうね・・・。女性として産んであげられなかったことを、すごく気にして・・・。」
安藤「う~ん・・・。そこは・・・ではお互いに辛い思いをしちゃいましたね。」
中村(涙ぐみながら、うなずく)
安藤「でもそれは、お母さんのせいじゃないもんね。」
中村「そうですよね。(涙をぬぐう)」
安藤「でも今は、お母さんも誇りに思ってらっしゃるんじゃないですか?・・・ね。ご一緒に乗り越えたっていうことですね。」
中村「(涙を流しながらも笑顔で)そうですよね。すごく、そう思います。」
<ライブハウスでの出会い>
男として生を受けながら、年齢を重ねる毎に大きくなる「女としての自分」。当時17歳。思春期を迎えた中村さんは自分の声にも絶望し、人を信用することが出来なくなっていました。そんな彼女を救ったのが、逃げ場としてすがるように続けた音楽と、ライブハウスで出会う仲間の存在でした。
(ライブハウスでのインタビュー)(かつての仲間との再会場面)
ライブハウス店長「どうやって・・・」
中村「この子の心を・・・?」
店長「まずそこだよね。」
中村「開くか・・・(笑)。
店長「ノックしてるんですけどぉ~って。」
中村「うふふ。」
店長「出てきません?そろそろぉ、みたいな。(笑)。
中村(笑い転げる)
ナレーション:中村「はなっから嫌う人とか、はなっからバカにしたりする人ばかりだったから。・・・そういうことが無かった。まず、『この人はなんなんだろう』の興味からみんな入ってくれる人ばかりだったから、よっぽど人間らしい人たちだなと思って、あ、ここなら上手く行くかもと思ったのかも。」
ライブハウスでの出会いによって人付き合いを学び、少しずつ世間に心を開くようになった彼女は、当時住んでいた近所の成田駅で路上ライブを始めます。
大好きだったタコ焼き屋さん「ひっぱりだこ」へ。
ナレーション:オーナー「最初来た時はね、かわいいって・・・言っていいの?」
中村「いいよ。」
オーナー「かわいい男子高生だった。」
中村「ハハハ」
オーナー「詰襟にオカッパで。あの頃から女らしかったわよ」
中村「あはは~」(飛び跳ねて喜ぶ)
心は女性。けれど身体は男性。葛藤する彼女に容赦なく浴びせられる周囲の冷たい視線。長く閉ざしていた中村さんの心を癒してくれたのは、彼女を「一人の人間」として迎えてくれた、人の温かさだったのです。

(岩崎宏美とコラボレーション。向き合って二人で歌う。)
・・・15歳の時にはじめて書いた。5年間、片思いだった人と友達にすらなれなかった思いを綴った一曲。
→岩崎さんはアルバム『Natural』で「友達の詩」をカバーしている。その歌詞を「幼い頃から戦い抜いた人の言葉」だと感じたそうです。
●岩崎宏美「Natural」
●「冗談なんかじゃないからネ」(2006年)安藤「今の気持ちって、どうですか?」
中村「今ですか?。今はもしかしたら・・・。今これから、少しずつ楽になって行くのかなって。自分の中のルールとしては許せないことなんですよ。お仕事をしながら、自分のことについて、ちょっとずつ向き合って行こうなんて。そんなの『しながら』はいけないでしょって。そういうのはちゃんと『やってから』仕事をしなさいって。」
安藤「それはでもね。全然違うと思いますよ。倍以上の立場から言わせてもらうと、みんな、仕事をして、仕事をする中で、自分を育てるんですよ。仕事でいろんなことに向き合ったりする時に、自分にこんな面があったのかって。自分の嫌な面も見るし、で、自分のいい部分もちょっとわかったりして、また努力して、また新しい自分が出来て・・・。特に中村さんの場合は、自分自身の思いを託していく『歌』っていうことと、自分自身の生き方とか生き様っていうのは、絶対に切り離してはいられないんじゃないかなって。」
中村「あぁ・・・そうですね。」
安藤「うん。切り離したら不自然ですよ。」
中村「そうですよね。不自然なことを・・・しそうになっていました。」
安藤(笑)
中村「危ないところだったなと思って・・・」
安藤「うん。うん。・・・これからも、恋愛をしたりとか。・・・今もされてます?」
中村「・・・ええ。」
安藤「そりゃそうですよね。好きな人必ずいますよね」
中村「います。」
安藤「失礼いたしました(笑)。
中村「いえいえ(笑)。」
安藤「どういう恋愛が理想ですか?」
中村「どういう恋愛が理想?」
安藤「うん。距離感とか・・・友達でいいよってのは駄目ですよ(笑)。」
中村「あははははは・・・そうですよね。単純に、幸せであれば・・・恋愛でなくても幸せであればいいかと思います。」
安藤「ほらぁ、またそうやって」
中村「あ~ン(笑)。」
安藤「(笑)恋愛でなくてもとかって、ちょっと『おっかながり』で。」
中村「はは・・・」
安藤「それはガンっと行かないと駄目ですよ。いいじゃないですかそれで。当たって砕けちゃっても。」
中村「うん。」
安藤「また、当たればいいんですよ、どっかに。」
中村「そうですね。」
安藤「中村あたるっていう・・・」
中村「中村当たる・・・ほんとだ。ありがとうございます~いけない忘れてた(笑)。」
安藤「ちゃんと当たるんですよ。」
中村「ちゃんと好きだって言うように・・・したいです。」
→「友達の詩」のカップリング曲。ピアノ弾き語り。

●中村中 2nd SINGLE 「友達の詩」
●中村中公式ホームページ
NEWS!
●10月10日放送の日本テレビ系DRAMA COMPLEX「私が私であるために」で「心は女性だが身体は男性で生まれてきた1人の“女子大生”」が主人公のドラマ放送。
中村中さんがミュージシャン役でドラマに初出演するそうです。
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●中村中(あたる)の歌世界。出会えたことにありがとう。
→FC2 同性愛Blog Ranking
コメント
見ました。
「僕らの音楽」を見て、また、akaboshiさんのブログで知った北丸雄二さんの特別寄稿も読むことができ、昨晩は私にとってもいい時間を過ごすことができました。
シチュエーションは異なっても、私も実際この歌詞のように感じて過ごしていることがあります。
中村中さんって、すてきですね。私もあんな感じになれたらいいのになあ、なんて思いながら、かわいくてちょっと寂しげな雰囲気に惹かれました。魅力的ですね。ジョージ・マイケルの歌と心への響き方に共通なものを感じます。中村さんのライブがあったら行ってみたいです。
ご紹介、ありがとうございました。
●lastchristmasさん。
天真爛漫という感じで。
でも話が、いざ「そこ」に触れると、抑えていたものが溢れ出して止まらなくなる。
胸の中に秘めているものが強固な分、自然とミステリアスな雰囲気が醸しだされるし
そこを「魅力」として生かしていけば、どんどん輝く人なのではないかと思います。
僕もライブ、ぜひ観に行ってみたいですし、直接声援を届けたいです。
同じ境遇を持ち、同じくシンガーソングライターとして音楽を続けてる中村中さんには共感が持てます。
しかも名前まで似てるので、私の場合本名ですが、中村光と云いますもので。
性同一性障害に付いては4年前にSRS(性再適合手術)を受けましたので、今は克服出来ましたが、戸籍上はまだ男性です。
音楽的な方向性は違うにせよ、私も中村中さんを限りなく応援してます。
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