マスメディアのゲイ描写001●ケバケバしいネオンの下の「夜の蝶」
「ハンカチ王子」狂騒曲〜週刊新潮2006年9月7日号普段マスメディアに目を通していると、ふとした時にゲイやレズビアンが登場することがあります。その多くは、ただ単に記事を賑わすためだったり、ネタが無いときの「穴埋め」に使われたり。必要以上に面白おかしく書くことで既成の「ゲイ・イメージ」を厚塗りするだけの無能で怠慢なものが多いのですが、最近ではなかなか好意的に取り上げるものも増えてきました。
まだ我々は「可視化」の中途段階にあり、日常生活では「クローゼット」であり続けている人が圧倒的に多いのが現状です。だからこそ、一般マスメディアでLGBTが「どのような書かれ方」で「どのような扱われ方」をしているのかは、露出が少ない分一つ一つの影響力も大きく、とても気になるところです。
当ブログでは以前から「たかがテレビ」のシリーズで、主に「テレビにおけるゲイ描写」を眺めて批判してきましたが、新しく始めるこのシリーズでは主に雑誌・新聞・ネット媒体を中心に、「ゲイのコミュニティー以外の一般マスメディア」が、LGBTをどのように扱っているのかを眺めてみようと思います。まず最初は「祐さまフィーバー」関連記事から。
高校野球にまったく関心がないので僕は知らなかったのですが、どうやら今年の甲子園テレビ中継では新たな「マスメディアのアイドル」が誕生したようです。優勝した早稲田実業の斉藤祐樹選手。
決勝戦でタフな投げっぷりを披露し、その「好青年ぶり」がテレビ受けしやすかったらしく、ワイドショーや週刊誌を中心に今や「ヨン様」を凌ぐほどの人気者となり、主婦を中心にフィーバーが巻き起こっている・・・と、書かれています。
メディアは「アイドル」を作れば部数や視聴率が伸びますから、必要以上に「人気」を誇張し煽ります。また、それに素直に乗せられてしまう人たちが相変わらず多いという事実には今更驚きもしなくなってしまったというのが実際のところ。
しかし見過ごせない記事を発見。斉藤投手をメインの特集記事で取り上げた週刊新潮9月7日号では、新宿二丁目のゲイ「までも」が、そのフィーバーに加わっているらしいことを記事にして煽っているのです。以下、一部を引用します。
「その仕草」がなぜか新宿2丁目「ゲイに大人気」紅顔の美少年に強く心惹かれたのは、昼の住人ばかりではない。新宿2丁目に暮らす「夜の蝶」が気になって仕方ないのは、ハンカチを使う際の、その繊細な仕草だった。
「私たちから見るとね、祐さまが汗を拭くときの仕草ね、゜パタパタ″って、軽く叩いて、汗を押さえるように拭くでしょ。あれはね、お化粧を落とさないように気をつけてる私たちと同じなの・・・」
と、語るのは2丁目で長くゲイバーを経営するベテランママの一人である。
「普通の男の子なら、ハンカチを広げて拭くでしょ。でも、祐さまは、丁寧にハンカチを三つ折りにしてね。きっと私たちと同じ感性を持ってるはずだって。みんなですごく盛り上がって応援したのよ。急にここ2丁目界隈に高校野球ファンが増えちゃったくらいなんだから・・・」
鋭敏な2丁目ママの観察眼によれば、「ハンカチ王子」を゜仲間゜とみなす根拠はそれ一つではないらしい。
別のバーの従業員の話。
「絶対、そうだと思うのよねー。だって、インタビューで好きな芸能人を聞かれて、もこみちって言ったのよ。速水もこみちはここ2丁目でも好感度抜群。ああいうタイプが好きなら、斎藤君は私たちと同じタイプなのよ」
<中略>
ケバケバしいネオンの下の話題まで独占する「ハンカチ王子」・・・・・・。
狂騒曲が沈静化するにはまだまだ時間がかかりそうだ。
おいおい、いつの時代だよ(笑)。この記事を読んでまずは「昭和の香り」がしてくる言葉使いのオン・パレードに笑ってしまいました。記事を書いた人の名前すら明記されていない無責任記事なのですが、書いた人はどうやら年配の方だと推測されます。「新宿2丁目に暮らす夜の蝶」とか、「ケバケバしいネオンの下」とか、まるで60年代〜70年代の昭和ムード歌謡を彷彿とさせる言い回しから、そのことを察することが出来ます。
それにしても、「祐さま」をテレビで見て「これはゲイに人気があるに違いない」と直感し、わざわざ新宿2丁目にまで出かけてゲイバーのママから証言を取るとは・・・。この匿名ライターさんは、ずいぶんとゲイ的感性に理解があって2丁目にも馴染んでおられる方のようです。
「2丁目に行けばこういう証言が得られるに違いない」と予測して取材に出かけ、期待通りの証言を語ってくれそうなベテランママに取材し、特集記事の最後の「締め」として使い、そつなく記事をまとめるセンス。ひょっとしたら「鋭敏な2丁目ママの観察眼」とは、この記事を書いたライターさん本人の観察眼なのかもしれない・・・な〜んてことを思ってしまえる内容でもあります。本当に2丁目に取材に行ったのかどうかも、固有名詞が全く使われていないので怪しいものではありますが。
ケバケバしいネオンの下で飛び回っている「夜の蝶」という描写で、2丁目のゲイを自分とは関係ない「隠花植物」として突き放すかのような言い回し。ゲイは「特殊な閉鎖環境で地味に隠れて生きるものだ」というステレオタイプは、こういうところから補強されて行くのだな、と確認させてもらえる典型的な記事ではありますね。→FC2 同性愛Blog Ranking
コメント
恥は書き捨てられない。
将来的に、差別表現の状況証拠が国会図書館で検索されるという事態を、まったく考えていないんでしょうねえ。
当時は差別を禁止する法律がなかった、とでもウソブクつもりなんでしょうか?
ある意味で、とっても楽しみです。
●nobaraさん。
発言を述べている人の名前も店の名前も書いていない。
いくらでも創作できてしまうし、責任逃れができますよね。
そうしたやり方で、相変わらずの「ステレオタイプ」が補強されるのは
酷い話だと思います。大手出版社なんだから、そのへんしっかりしてほしい。
昭和の香・・・
マスメディアってのは文化の最先端いってるっていうのも、
とっくの昔に幻想になってるのかなあ。
参考メディア
情報の受け手対象はそうとうニッチになりつつあるんじゃないでしょうか。
というか、メディアとしての使命を忘れた分、フィクション化して
自分からニッチスパイラルに嵌り込みつつあるように思います。
ネットの時代、マスメディアも、参考メディアに格下げになるんでしょうね。
少なくとも私の感覚ではそうです。
だって、マスコミの癖に無知っていうか、いい加減すぎるっていうか。
こういう記事を書く人は顔と実名晒して欲しいわ。やっぱ人間、自分の言動に責任を持つべきでしょう。
斉藤君だってきっと困ってますよ。
●Kazuccineさん。
特にこのテの週刊誌は、わざと「古臭さ」とか「バタ臭さ」を売り物にしてる感じがあるね。
●nobaraさん。
「マスメディア」ではなく「参考メディア」になっていますね。
僕らの意識も改革して、従来のようにメディアに「権威」を感じてしまう思考停止状態を
疑うべきだと思いました。
●さすけの友さん。
本当に汗水垂らして取材して、真剣な気持ちで書いたのだとしたら
自分の名前を「署名」したくなるのが本来の姿ですよね。
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