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フツーに生きてるGAYの日常

やわらかくありたいなぁ。

2024-05
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キム・キョンムク「顔のないものたち」●MOVIEレビュー②

 第一のパートのラスト。部屋に一人取り残された若い男は、しばしの沈黙の後、ビデオカメラをおもむろに取り出す。そして窓の外らしき場所にカメラを向け、覗き込む。

 覗き込んだ「先」という設定にされているらしい部屋の中にも、どうやらゲイの男同士がいる。一人は袋を頭からすっぽりと被っている。もう一人は普段着のまま。なにが始まるというのだろう。

 ベッドに寝転んだ袋の男。その袋の口の部分には穴が開けてある。袋の男は普段着の男に、さかんに「あること」をおねだりしている。普段着の男は「そんなこと出来ないよ」と拒絶しながらも、次第に「やってみようかな」という気持ちになったらしく、ズボンを脱いで要求されるがままに袋の男の顔にまたがって座る。まるで便器の上に座るかのような体勢で。

 つまり袋の男が普段着の男に要求していたことというのは、「自分の口に向かって放尿してくれ」ということだったのだ。明かりが煌々と点されたなんの変哲もない一室で、突然繰り広げられようとしている放尿の光景・・・。普段着の男は監督自身なのだろうか・・・三脚に据えたカメラを、自分たちの行為がもっともリアルに移る場所への動かし調整しながら、自らの放尿場面を執拗に撮影しようとする。しかし、さすがにベッドの上では勝手が悪く、なかなか事が実行出来ない。

 「こんな体勢だと無理だよ。」
 普段着の男が言うと、袋の男はベッドの下の床に寝転がる。そして、普段着の男はベッドの上で力みながら、下にいる袋の男の口にめがけて脱糞することになるのだ。次第に興奮し、裸になる袋の男。カメラはその一部始終を至近距離から撮影し続け、ボカシが入ることもない。「えっ、マジで見ることになってしまうの・・・!?」というスリルと好奇心を喚起されながら、観客は目の前に提示される映像を「見る」しかない。

 時折、袋の男の膝が立ち上がって放尿場面をカメラから隠すのだが、その瞬間のなんと「ホッ」とすることか・・・。しかし無慈悲にもすぐに膝は倒れ、普段着の男の尻から、あと少しで糞が放たれるかというその時、画面には奇妙なアニメーションが挿入される。

 放尿シーンをうっすらと画面上に残しながら展開されるそのアニメは、とても暴力的で過激な内容。漫画でよく描かれる通称「巻きグソ」があちこちに落とされる光景だ。生きているものの上だったり、日本やアメリカの上だったり・・・。さらにはエイズ感染の広がりを髣髴とさせるイメージなどが、強烈なスピードで次から次へと展開される。密室で行われている放尿という行為が、アニメーションの挿入によって一気に「広がり」を持ち「別次元のもの」として立ち上がり、観客のイメージや思考を刺激する。そしてアニメが終わったと思いきや、ついに観客は放尿の場面を見てしまうことになるのだ・・・!

 放たれたものを口に含む袋の男。興奮している。自らの身体や性器の周りに糞を塗りたくり、さらに興奮して自らの性器を弄び始める。放尿の終わった普段着の男はカメラを持ち、その姿をアップでカメラに記録する。つい先刻まで自分の身体の中にあった糞。それが今、目の前で袋を被った男の肉体に塗りたくられ、性的興奮の道具と化している。

 あまりにも衒いがなくストレートにアップで映される「糞」の映像。最初はやはり嫌悪感を抱いた。「なんでこんなのアップで見せられるんだ・・・。頼むからズームのスイッチを押さないでくれ。」
しかし願いは空しくカメラは容赦なく、この世で最も「汚物」とされがちなものの姿をリアルに目の前に映像化する。

 長い間見ていたら、不思議な感覚と思考が呼び覚まされた。「そういえば、どうして僕はこれを気持ち悪いと思うんだろう。」

 糞といっても、この世の中に当たり前に存在している物質であり、生々流転の一段階に過ぎない。人が口に入れた食べ物が、体内で消化された結果できるただの物体じゃないか。僕はなぜ、これを「汚物」として嫌悪し、「見つめる」ことすら拒否してしまうのだろう。

 袋の男は「汚物」にまみれながらも興奮し、ついに射精する。カメラは、射精された男の白い液体までをも丁寧にアップで映し出す。その頃にはすでに観客は「汚物」を見慣れている。もう、なにが起こっても受け入れられるような感覚世界を漂っている。自らの判断する「清濁」の基準がグラグラと揺さぶられるような大地震が僕の内面世界で続いていた。その揺れは激しく、あちこちに傷をつけながら破壊を続け、いろんなものを粉砕してくれた。

 第三のパートは、もう一度「第一のパート」のホテルの一室に戻る。ビデオカメラを覗き込んでいる男のが映し出される。つまり、今見た光景は、このビデオの男も見ていたものであるかのように思わされるカットつなぎである。

 そこへ突然、字幕が入る。
 「この映画の最初のパートは、監視カメラにより撮影された映像である。」
 ・・・「えっ!?、まさか・・・」と驚かされるが、租借する暇もなく次の衝撃が。

 ビデオカメラを覗き込んでいた男がファインダーから目を外すと、そこにいるのは他でもない「監督自身=キム・キョンムク」なのだ。第一のパートで中年男に身体を売っていた男娼の男とは、まったくの別人。つまり、全てが実写映像であるかのような捉えどころのなさとリアリティーを作品の柱にしておきながら、最後の最後に「作者が顔を出す」ことできっちりと映画全体を「フィクション化」して、この作品は終わるのだ。

 キム・キョンムク・・・。どこまで人を翻弄すれば気が済むのか。
 どこまで人として、ゲイとして、映画としての新たな領域を開拓しようとしているのか。
 彼がこの作品に込めた社会風刺は、映画風刺、芸術風刺でもある。
 つまり、自分も含めた「全てのもの」に対して、ナイフを突きつけてしまっているのだ。
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「顔のないものたち」
(FACELESS THINGS)
2005/video/65min
監督・製作・脚本・編集・録音
:キム・キョンムク
(KIM Kyong-Mook)
音楽:イ・ミンヒ
出演:キム・ジンフ キム・ジョンチョル
配給:キム・キョンムク

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コメント

この記事へのコメント

監督の挑戦は続く

パート2は、『ここまで、映して良いのだろうか?』と言う限界に臨んでいましたが、観ていると感覚が麻痺してしまいました。
愛が深いのかどうかよりも、そういう性癖なんだろうと思いましたが、そのSEXから、お互いに深い愛を生み出すのか?それとも、通りすがりの愛なのか?と思うと、よく解りません。

パート3では、実はそれらを監督がカメラを通して、見ていたと解りますが、挑発的な一つの示唆ではないだろうか?と思いました。
残酷性もあり、見る人の内臓をえぐる程のショッキングさを持ち合わせながらも、どろどろとした灰汁の無さに、この作品の正直な部分を感じています。それが、監督の若さから来るのかも知れないし、ガラスの様な精神から来るのかも知れないし、とにかく興味深いです。
類を見ない映画でした。





新宿洋ちゃん

う~む。やっぱり観てないとなんともいえませんね。特にこの作品の場合。

ところで、今日、新宿二丁目に行ってきたのですが、道で、『メゾン・ド・ヒミコ』に出演していた「新宿洋ちゃん」にお会いし、少しお話することができました。映画のなかの洋ちゃんは、なにかとろんとした感じで、あれは彼の地だったのかなと思っていたのですが、はじめてお会いした洋ちゃんは、すごくシャープな感じのする人で、そのギャップに驚きました。
私がこの映画が好きといったらとても喜んでくれて、ばっと映画のなかのセリフを再現してくれたのはとてもうれしかったです♪
で、握手をさせていただいて、でも私の方からできることは何もなかったので、あの映画が好きというしるしに、映画の中で歌われた「わが母が教え給いし歌」をちょっと口ずさんだら、とても喜んでくれました。
洋ちゃんも言ってましたけど、『メゾン・ド・ヒミコ』が公開されてからもう一年たつんですね。なんか、すごく早いような気がします。
(ごめんなさい。関係ない話題で。)

新宿洋ちゃんだって、良く解りましたね。
今思い出しても、『メゾン・ド・ヒミコ』は、不思議な映画でした。

●seaさん。

人が強烈に希求するものって「よくわからない」ほどにたくさんあるし、
人の数だけ多種多様にあるものだと思います。
本人としても、どうしてそういう行為を求めてしまうのか「よくわからない」のだと思います。
だからこそ人って面白いし、世の中って面白い。

●lunatiqueさん。

お返事遅くなってすみません。

「洋ちゃん」って、キクエ役をやっていた方なんですね。
映画のパンフレットを引っ張り出して調べてみたらびっくり。
この記事の写真で、女装している方ですよね。
↓(・・・うわっ、この頃の僕の文章怖いですね~トガってますね~。ヤダヤダ。笑)
http://akaboshi07.blog44.fc2.com/blog-entry-161.html

パンフには、こんな風に経歴が書いてあります。
「20代から浅草の飲食店で見習いを始める。
60年、仕事の拠点を新宿に移し、66年に“洋ちゃん”ののれんを構える。
以降、新宿界隈内で移転しながらも、40年に渡って店を切り盛りし、現在に至る。
今回は、"洋ちゃん”の常連であった本作関係者の紹介により、初の映画出演となった。」
・・・今でもお店、やってらっしゃるんでしょうかねぇ。会ってみたいです。
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