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フツーに生きてるGAYの日常

やわらかくありたいなぁ。

2023-06
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LGBT可視化に向けて015●STN学習会② イギリスのLGBT教育事情

72%のレズビアン、ゲイ、バイセクシュアルの成人が、子供のときにホモフォビアによる嫌がらせのために何度も登校拒否をした。

●そのうち50%が自殺や自傷を考え、実際に40%が一度は自傷行為をしている。 

 STNの勉強会で、尾辻かな子さんが説明した 「ホモフォビアによるいじめに対する学校での取り組み」というイギリスでの会議の報告書に書かれていた調査結果です。ちょっとびっくりしてしまう数値かもしれませんが、もし僕も調査で同じことを聞かれたら50%のうちに入ると答えるでしょうから、この数字の意味する深刻さは、自分の体験として納得できます。

 この報告がなされた会議は7月4日にロンドンで行われました。イギリスのStonewallという団体が行っている「Education for All」というキャンペーンの一環であり、きちんとしたサイトも立ち上げられ、IBMがスポンサーとして関わっているなど、とても大きなしっかりとした運動となっていることがわかります。そのことだけでも、とても羨ましく感じられます。
(→「Tackling Homophobic Bullying in our schools conference」基礎資料のPDFはこちら。)

 ハイセンスな教材DVDを配布

 尾辻さんはさらに、この活動の一環として制作されたイギリスのDVD「SPELL IT OUT」を紹介してくれました。これは学校教育の現場でホモフォビアをなくすための教材DVDで、なんとイギリスの学校には無料で配布されているそうです。すごいですね~。

 映像を見たのですが、「教材」といっても決して堅苦しくはなく、おしゃれなドラマのような感覚で見ることができます。生徒がゲイやレズビアンであることをカミングアウトした時の対処法を、ドラマ仕立てで描いているのですが、映像のセンスも柔らかくてユーモアがあり、思わず笑ってしまうような場面も満載で、楽しみながら見ることが出来ます。

 印象的だったのは「教職員の中にもLGBTはいる。しかしカミングアウトできない。だから生徒もカミングアウトできない」という言葉。要するに学校現場で起きている悪循環を端的に指摘しているのです。

 生徒にカミングアウトされた時の対処法

 たしかに教師って「清く正しく美しくあらねばならない」という社会からのプレッシャーを受けやすい職業ですから、LGBTのことを「不潔で不正で醜い」存在だと見做す空気が支配していたり、無意識にそう思い込んでいる人が多い社会では、かなりカミングアウトし辛い立場なのかもしれません。

 また、教師が当事者でなく、こうした問題に無知な場合はなおさら、生徒が先生を頼って意を決してカミングアウトしてきてもトンチンカンな対応をしてしまって、生徒を余計に苦しめてしまいがちなのだそうです。だからこそ、まずは教師本人が持っている偏見や意識のあり方を疑ってみることから始めるべきだという風に、映像は語りかけます。

 そのために学校現場ではどのようなトレーニングをするべきか。授業の中にLGBTに関する教育を盛り込んだり、友達がカミングアウトした場合にどう接するべきなのかを話し合う授業を設けたりする光景が紹介されます。そしてまずなによりも、生徒がカミングアウトしてきても教師が慌てずに対応出来るよう、LGBTに関する最低限の知識を蓄えておくことの必要性が語られます。しかし、答えがあると思ってはいけないそうです。安易なマニュアルに頼ろうとせずに「まずは生徒の話をきちんと聴き、個人対個人としてちゃんと向き合うこと」の大切さを説くのです。

 マニュアルDVDのようでありながら最終的には「マニュアルに頼るべきではない」ことを語る姿勢が素晴らしいではありませんか。そして最後のメッセージも印象的でした。

「ホモフォビアを問題化すると、学校はどんな人にとっても、より安全な場所になります。」

・・・つまり、自分とは異質な他者への想像力を皆が持ち、「違い」を攻撃するのではなく「認め合うこと」は、どんな人にとっても過ごしやすい環境になるということなのです。

 まずは教師が基礎知識を。

 制度面で大きな差のある日本の現状とイギリスを比較することは酷かもしれませんが、こうした映像の日本版はぜひ作られるべきだし、イギリスの学校と同じように全ての学校現場に配布されてもいいのではないかと思いました。そしてもちろん、授業のカリキュラムに「性的マイノリティー」に関する項目が含まれるようになるべきです。

 生徒に教えるためにはまず教師本人が「学び、咀嚼する」必要があります。つまりカリキュラムに含まれるということは、教師自体も学ぶということにつながります。すると教師自身のカミングアウトも、より行いやすくなるのではないでしょうか。

 それに、教師に基礎知識がなければ実際にLGBTの子供を目の当たりにしても対応のしようがないでしょう。(本当はすでに、いくらでも目の当たりにしているんですけどね。)今の日本のように相変わらず「タブー視」して、いることがわかっているのに語ることさえ憚られる風潮のままで放置していては、苦しむ子供がこれ以上増えて行くことを止めることは出来ません。

 冒頭で紹介した調査結果のとおり、LGBT権利運動先進国のイギリスでさえLGBTの約半数が「登校拒否をし、自殺を考えたことがある」という調査結果が出ています。学校現場での「LGBTいじめ」の問題は、依然として世界共通の問題です。

 「おかま~ぁ」「レズ~ぅ」「女みたいだな、気持ちわり~」「お前、男か?」・・・こういう言葉って言われ方とシチュエーションによっては本当に傷つきますからね。しかも親に対しても相談できなかったり、友達にも打ち明けられないままで自らの性の特殊性と直面するときの孤独は、自己否定の感情を簡単に喚起します。そんな時に、せめて先生が正しい知識を持っていたり、学校の授業で少しでも触れられていたら、どんなに救われることでしょう。

 思春期ってけっこう繊細ですから、教育問題って実は「命に関わる問題」でもあるのではないかと思います。

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☆文中の「LGBT」とはレズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダーの略称です。
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コメント

この記事へのコメント

すごい興味あります

ってか、うちの県でもこういう研修やらなくちゃいけないよな、とか思いました。
うちの県は県庁の職員さんにTGの方がおられるので、LGBT教育には
まだとっかかりやすいのかもしれませんが。
昨年いた高校でもね、同和だの人権だの、そういうことに関してはすごく
熱心だったのに、ことLGBTの話題が出てくると、にやにやする人が出てきたり・・・。
教職員の間もそんな感じだったんで、まずそういうのから改めないとなって思います。
僕自身、生徒からも先輩の先生方からもいやな言葉を投げかけられたりしました。
長々とすいません。。。

●Kazuccineさん。

生徒が一大決心をして先生に相談しても「にやにや」されたら、
どうしていいんだかわからなくなってしまいますよね。

とても勉強になります。

初めて拝見しました。
今私は通信制の高校で教員をしていますが、おそらく生徒の中にはLGBTの人がいると思います。まだ打ち明けてはくれませんが…
何年か前になりますが、近所に住んでいた後輩がレズビアンであることを私に言ってくれ、少し相談にのったことがあります。最初は驚いたけど、別にそういう人がいても全然おかしく無いし、人それぞれで良いと思うので、打ち明けてくれたのが本当に嬉しかったです。しかし、もしかしたら自分が気づいてないところで差別とかしていて傷つけていたとしたらどうしよう、と本気で悩んだことがあります。知識もないし、学ぶ場所もなかったので今までそのままにしていました。しかし、このブログを見せていただいて、きちんと勉強しなければいけないって気づかせていただいたので本当に感謝です。またちょくちょく見させていただきますので宜しくお願いします。

●mimiさん。

はじめまして。教員の方に読んでいただいて、ヒジョーに嬉しいです(笑)。

周囲に居るLGBTの人に「打ち明けられる」ということは、
ある意味ではすごく素敵なことだと思っていただいていいと思うんです。
「人間的な信頼」「人間的な親しみ」を感じるから、打ち明けてしまえるわけで。

mimiさんに打ち明けた後輩のレズビアンの方も、
mimiさんを本当に信頼していたし人間的に好きだから打ち明けたんだと思うし、
それだけ優しく温かい雰囲気をmimiさんが持っているということなのではないかと思います。

「もしかしたら自分が気づいてないところで差別とかしていて傷つけていたとしたらどうしよう」
と悩まれたことがあるということですが・・・
それはあまり気になさらなくてもいいのでは、と思います。
当事者でなければわからない領域というのは必ずあるものだし、
LGBTの側も、細かいことにいちいち目くじら立てて傷ついているのではなく
「知らなくて当たり前。本当に傷ついた時には面倒くさがらずに、
そのことを相手に説明する。」
・・・そうしたやりとりを繰り返して行けば、お互いに、より親しくなるチャンスにもなりますし。

完全にわかってもらわなくていい。
ただ、LGBTであることを「隠さずに話が出来る人」が周囲にいるというだけで、
ものすごく救われた気持ちになるものなんです。それだけでいいんですよ。

今後もぜひ、思うことがありましたら聴かせてくださいね~。
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