フツーに生きてるGAYの日常

やわらかくありたいなぁ。

2017-11
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ダンカン・タッカー「トランスアメリカ」●MOVIEレビュー

 「人工的」

 やっと日本公開された「トランスアメリカ」を観てから数日経った今。この映画を思い返した時にまず浮かぶのは主人公ブリーのキャラクターの特異性。「かわいい」とも言えるけれど、むしろその「女性性の濃さ」がグロテスクにも感じられる奇妙な存在感が気になってしょうがない。

 背筋を常にピンと伸ばし、清楚で清潔感あふれる実直な振る舞いを心がけ、意識的に「模範的な女性」としての身体感覚を意識し続ける彼女。堅苦しいまでに誠実に「女性」であろうとする彼女の振る舞いは、どこか「人口的」であるために可愛らしくも滑稽にも思えるのだ。 常に意識が張っている危うさと儚さを感じさせる存在の仕方。すごく疲れるのではないだろうか。

 この印象は、生前の三島由紀夫が登場する映像を見た時に彼を見て感じる「意識的に誇張された男らしさ」とか過剰なエネルギーのもたらす「コテコテ感」と似ている。

 三島の場合は幼少時、祖母に囲われて女性的に育てられたため、学校に通う年齢になってから自分の異質性に気が付き、通学の車内で見かける男子を観察しては必死に「男らしさ」を研究して身に付けたそうだ。内面は女性として育ったのに、そんな自分を嫌って日常生活では「女性性」を必死で殺し、文学作品の中で発散した。そして社会的には過剰なまでに「男」であることを意識し続け、肉体的にも精神的にも必死で「男性性」を追求した生涯だったと言えるだろう。

 「トランスアメリカ」の主人公ブリーは三島とは違って、肉体のあり方を内面(女性性)に合わせて行くことを選んだ。しかし本人が意識的にジェンダーを選び取っているという点では三島と同じ。したがって濃度の濃い「女性らしさ」を全身から過剰なまでに醸し出している人物として造形されている。男性から女性へのトランスジェンダー(MtF Transgender)の人が皆そうであるわけではないようだし、それぞれ個人差はあるようだ。ブリーほど極端に「女性性」を追及する人ばかりではない。すなわちこの映画では、いわば「典型例」として、わかりやすく演じられているということは言えるだろう。

 「嘘」

 生まれつきの性別に「違和」を感じ、性転換手術をしようとしていたブリー。その矢先に、かつて自分が男として付き合っていた女性との間に出来た「息子」と再会することになる。息子の生活のあまりにも荒廃した様子を見て放ってはおけなくなったブリーは、自分が父親であることを隠しながら、性転換手術の地へ向かって息子と二人でアメリカ横断の旅を続ける。

 この映画の一つのポイントは、「嘘」という行為(概念)なのかもしれない。ブリーは自分が男の身体で生まれたことを「嘘」だと感じ、女性の身体を自分にとっての「真」だと感じて手に入れようと手術までする。すなわち彼にとって「男」とは「嘘」と同義。だから、かつて自分が「男性として」女性と愛し合った過去も「嘘」だから葬り去りたい。無かったことにしたいのだ。したがって息子にも、自分が本当は父であるということを告げない。

 しかし息子はまだ若い。真っ正直に生きている。年齢を重ねた人間に特有の「嘘」との折り合いの付け方を知らない息子と、「嘘」を抱えたままの父親の関係がスリリング。いつ息子に「嘘」がバレるのか。いつかバレるに違いない。そんな危うさが、この映画の物語を引っ張る強力な「サスペンス」になっている。

 「真」

 ブリーは家族と再会し、トランスジェンダーとして生きている「真」の自分の姿を初披露する。父・母・妹はそれぞれに衝撃を受け、ブリーに対して無神経な言動を浴びせる。しかしブリーはそういう種類の無神経さには傷つき慣れているようだ。「女であること」には誇りを持ち、何を言われても動じない強さを身に付けている彼女。アメリカの典型的な保守思想の権化のような堅物の母親との対決も、ブリーを本質的には揺さぶらない。そんなことは覚悟の上だから。

 しかし、そんな彼女を唯一、根底から揺さぶったものがある。それはやはり、息子の「まっすぐな」真の心だった。なんと息子は目の前のブリーが実の父親だということに気づかずに、恋心を抱いてしまうのだ。

 息子から色っぽく告白され、ベッドに誘われた時。ブリーは自分の「嘘」から逃げていたことを知る。
 過去を捨て去ることは出来ない。男の身体で生まれ、そのことで苦しんだという過去を「無かったこと」にすることなど、出来ないことなのだ。

 「綺麗」

 捨て去ろうとしていたものを受け入れることが出来たとき。それまで肩を怒らせて虚勢を張っていたブリーの「何か」が変わりはじめた。分厚く塗りたくっていた化粧が剥がれ落ち、人工的ではなく真に安らいだ笑顔を、はじめて浮かべることが出来たように感じた。それは美しい笑顔だった。主演のフェリシティ・ハフマンを僕はその時はじめて「綺麗だ」と感じた。

 人というのは、無駄な自意識に捉われているうちは、真の笑顔で笑うことなど出来ないものなのかもしれない。FC2 同性愛Blog Ranking
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コメント

この記事へのコメント

なるほど

みごとな映画評。しかし、それにしても三島との比較は思いつかなかったなあ。なるほど、人造のジェンダーね。あの気の張り方はまさにそういうことだったんだ。ぼくはただただブリーのけなげさにやられてすっかり観客になりきって見てました(笑)。
この5月、監督のダンカン・タッカーと話をしてきたんですが、これって、ブリーにとってのロード・オヴ・ザ・リングだっていってました。詳細は私のブログで、ご参考までに。

らしさ

「男らしさ」「女らしさ」
これ、多分LGBTを取り扱った話題には必ずといっていいほど出てくることだと思います。
過剰に女らしさを意識した「オネエ言葉」、男らしさをノンケ以上に追及した「イカホモ」。
どっちも極端だなあって思って、ちょっと滑稽にも思えますが。
今はどっちかっていうと三島由紀夫的なゲイが多いような気もしますね。
自分は・・・。どうなんだろ?男性的かつ女性的?中性的かつ両性的?なんて思ったり。

予告見たケド

それだけで涙が出そうになった・・・
akaboshiっちは泣いたんかな?(笑)

 ハンドル名を改めました(笑)
 トランスアメリカ……L&G映画祭で予告編を観て、ああ、面白そうだなと思いました。
 僕の友人に女性の心を持った肉体男性がいます。最近までズッとゲイだと思っていたら、実はTGだと告白してくれたのです。彼女も数日前、このトランスアメリカを観たそうで、良かったと感激して、メールを寄越してくれました。
 akaboshiさんの実に見事な感想文を読んで、観たくなった人たちが、さらにたくさんになったように想います。

「らしさ」はあいまい

男性が思う「女らしさ」、女性が思う「男らしさ」って、自分とは違う筈と言う先入観で、極端な理想を抱いてしまうのかも。
自分自身、女性として育って考える女性らしさって、周りから押し付けられた感覚が拭えません。自分や身近に育った女の子も、子供の頃は男女同じように泥だらけになって暴れ回る悪ガキだったし、その一方で男女同じように人形で遊んだりと、明確な違いはどちらもありませんでした。
それが大きくなるに連れ、男の子は人形遊びがカッコ悪いと言われ、女の子は腕白でいると「お嫁に行けなくなるよ」と「脅迫」され、少し大きくなれば好きな男の子も出来、気に入られようと無理してでも、世間が思う「女らしさ」を身に付けて行く。

結局、「男女らしさ」って生きて行くのに有利なように、自ら生活の知恵として身に付けて行くだけの事なんでしょうね。
本来は、どんな男らしい男性にも女性的な部分があるし、どんな女性らしい女性にも猛々しい男の部分がある。

私の両親は忙しくて「らしさ」のしつけはしなかったせいか、私を筆頭に、妹も弟も実に両性的です(笑)。もちろんいい大人ですから、社会では「らしく」やってますが、姉弟で集まると言葉遣いもしぐさも男女の境はなく、どちらかに偏りもなく、三人ともそれが一番楽です。

きっと「らしい」方が、自分自身でも、他人から見ても分かりやすくていいと思う人が多いとは思いますが、「らしさ」って本当にあいまい。

不思議なんですが、K姉妹とか、極端にセクシーな女性タレントって、返って男性っぽく見えます。まるで、女性願望の強い、性転換した元男性のような・・・

記事無関連コメントですいません。

工藤静香さんが9月に新曲出します。みゆきさん提供です。
いよいよいよいよです。

引越しのあいさつにきました

この度MSNからfc2へ引っ越してまいりました。
「ため息の理由」
http://boysnextdoor.blog55.fc2.com/

今後ともよろしくお願いします!!

久々に面白い映画を見た思いです。全てに無理が無くて、自然に繋がっている所が好きです。人を取り巻くしがらみから開放される事ばかりが、自由になれる事ではなくて、それらと上手く付き合っていく事も、人間らしいのだと、今更のように感じました。TBさせていただきます。

みましたよ~
一緒に見に行った友人と共通した感想は「脚本がとてもよくできている」「トビーがかわいそう」(笑)
ちょっと物足りなかったのは、井筒監督が「虎ノ門」で言っていたとおり、「女が描ききれていない」ことでしょうか。トビーのお母さんのことをもう少し掘り下げて欲しかったかな。まあ、この映画にあれ以上のことを求める必要性はあまりないような気もしますが。
音楽も良かったです。主題歌のCDが欲しくなりました。

●かがみさん。

そういえば、トビーのお母さん・・・つまりブリーの元恋人(←?)のことは
映画では具体的に描かれてはいませんね。
ブリーは、その過去を封印したかったようですから・・・
映画の大部分がブリーに寄り添って進行する以上、しょうがないことなのかもしれませんね。

TBありがとうございました

TBありがとうございました。
しかし、なかなかの卓見です。感心してしまいました。

「嘘」というのが、キィであるとは思いましたが、その「嘘と言う概念」をブリーの過去にまで広げると言うところまでは思いつきませんでした。
たしかに、この映画は「嘘」ということが、キィ・ポイントになる訳ですね。

それから、「真実」ということ。
「嘘」と「真」なんていうと、なんだかむず痒くてそれこそ「嘘っぽく」なりますけど、この映画はそういうのを上手くオブラートに包んで、「はいッ!」と明るく差し出してくれたような気がします。

●みるとんさん。

おっしゃるとおり、この映画の魅力は
見ている最中は小難しいことを考えさせずに、明るく楽しませてくれるところですね。
そして観終わってから、いろんなことに思いを巡らすことが出来る豊かさ。
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