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2019-11
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ジャック・ベッケル「モンパルナスの灯」●MOVIEレビュー

 ジェラ-ル・フィリップ人気の根強さ

 1959年に亡くなったフランスの俳優ジェラ-ル・フィリップ。最近、彼の映画祭が頻繁に開催されている。先日、池袋の新文芸坐で行われていた映画祭に、はじめて出かけてみたのだが驚いた。超満員なのである。しかも客席のほとんどを中・高年の方々が埋めている。女性が圧倒的に多いのだが男性もけっこういる。ジェラ-ル・フィリップとともに1950年代の映画全盛期を体験した世代なのだろうか。絶世の美男子であり、理知的な名俳優だった彼にスクリーンで会うべく、今でもワクワクしながら出かける人たちがこれほどたくさんいる。そのことにまず感動した。

 余白の豊かさ

 映画は画家モディリアーニの生涯を描いたものなのだが、どうしても以前見たミック・デイヴィス監督の「モディリアーニ~真実の愛~」と比較しながら見てしまう。「モディリアーニ」の方は最近の映画なので予算をふんだんにかけ、ロケ・セットも豪華に組みエキストラも大量に動員しながら、めくるめく映像技術を駆使して彼の人生絵巻を派手に具現化していた。

 それに比べ「モンパルナスの灯」は地味である。ドラマティックな展開は最小限に抑えられ、過度なBGMを抑制し、主演のジェラ-ル・フィリップの演技に観客の視線が集中できるように作られている。きっと余計な小細工などは必要ないのだ、一人の名優さえいれば。

 そう言ってしまえるほど、ジェラ-ル・フィリップの存在感と演技には魅せられた。この映画の翌年に36歳で彼は急逝してしまうのだが、肝臓癌に侵されている俳優自身の不健康な顔色が皮肉にも、貧困にあえぎ続けたモディリアーニを演じるのにふさわしい風貌を実現させている。モディリアーニ自身も絶世の美男子だったらしいので、とてもリアリティーのある形でスクリーンの中に「息づいて」いるのだ。

 この映画はモノクロであり、セットも美術も最小限。物語としてもモディリアーニが晩年、貧しさの中で芸術家であり続けようと格闘した姿を丁寧に繊細な芝居で見せている。演出には程よい抑制が効いていて、余白や「間」がたくさんあるから観客は自由に想像の翼を羽ばたかせることができる。

 めくるめく映像技術の発達とリアリティー表現の追求が名画を生み出すとは限らない。むしろ表現技術の追求ばかりに目が眩み、映画の表現を「貧困」なものにしてしまっている場合もある。「モンパルナスの灯」は素朴な映像技術で簡素に作られているので余白がたくさんある。しかし余白が観客に提供してくれる精神性の豊かさについて気付かせてくれる映画でもある。

 死ぬのを待たれていた画家

 数々のモディリアーニ伝説の中でも「モンパルナスの灯」で監督が浮かび上がらせたのは、当時の美術界の「闇」の部分である。モディリアーニは生前、ほとんど評価されなかった。しかし実は彼の才能に目を付けていた画商がいたのである。

 リノ・ヴァンチュラが演じた画商モレルは、モディリアーニが評価されそうになるとわざと悪評を振りまき、つぶして廻る。しかし内心では彼の才能を評価していて、画家本人が死んだら安値で買い取り、高く売り出すことを企んでいたのだ。無表情でじわじわと、モディリアーニを邪魔し続ける彼の存在感。その策略家ぶりは身震いするほどリアリティーがある。

 画商の企み通り、モディリアーニは貧しさの中で死ぬ。そして企みどおり、画商が巨万の富を得ることが暗示されて映画は終わる。真っ直ぐすぎる人間はこうして小賢しい人間の犠牲になる。そうしたこの世の真理の一面を衝いているからこそ「モディリアーニ伝説」は今でも人々の心を打ち続けている。


ジャック・ベッケル「モンパルナスの灯」

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コメント

この記事へのコメント

衝撃。

こんにちは。先日長文コメントさせていただいた者です。あまりに私的な決心を送りつけるという不躾をしたため、心苦しく思っておりました。
今日は普通にブログ読者としてコメントいたします!
ジェラール・フィリップが好きで、なかでもこの『モンパルナスの灯』は、思い入れが深いです。理由はこれまた敬愛するアヌークが出ていること、忘れられない人がこの映画のジェラールになんとなく似ていること…。

そんなわけでakaboshiさんのブログに登場していて『あっ!』と叫びそうになりましたよ~。私は彼の放つ、退廃と耽美、官能に参っています。モディをあんなふうに演じられるの
は、ジェラールの本質とリンクしていたのだと思います。ちなみに、モディの死後、奥さんは
彼の子を宿したまま自殺をしてしまいます。ゆえに、その画商のエピソード、ほんと憎いです。このアヌークも美しすぎです。
ぜひ機会があったら『肉体の悪魔』も観てみてください。

モンパルナスの灯

モンパルナスの灯も肉体の悪魔もNHKの教育で時々やってる字幕映画で
見た記憶があります。
モンパルナスの灯は本当に衝撃的でした。モノクロの迫力はすごいなと思いました。
36才でジェラールが亡くなったのは知りませんでした。
ヨーロッパの映画って本当に味がありますよね。観た後にずしりとくるものが、
大きくて元気な時しか見られませんけど(笑)

●Anoukさん。

その節は非公開コメントにありがとうございました。
長文過ぎて驚きましたが、気持ちをストレートに書いてくださって嬉しかったですよ~。
ぜひその路線を突き進んでくださいね。

『モンパルナスの灯』は、病に侵されているジェラール・フィリップが生々しくて
本当にモディリアーニにぴったりでした。
彼はそのために病気になったのではないかと思えるほどです。
あれほどリアリティーのある姿をフィルムに定着できたのだから、
たとえ翌年に亡くなってしまおうが、
役者としては本望だったのかもしれない、なんて思いました。

実は同時上映で『肉体の悪魔』もやっていたので、続けて観ましたよ。
こちらは打って変わって24歳の若々しいジェラール・フィリップ。
少年っぽくて生き生きしてて・・・同じ人とは思えませんでした(笑)。
でも、その頃からすでに退廃的なオーラを発してはいましたけどもね。

●みにさん。

モノクロ映画って、それだけで現実とは違う「フィクション」としての様式が確立されるから
必要以上に、映像でリアリティーを追求しなくていいんですよね。
だからその分、映画の「中身」としてのリアリティーの追求に情熱が注がれている。
映画が「娯楽の王様」だった時代の産物ですね。

お月様

私も彼、好きなんです。淀川長治さんが「エッフェル塔にかかった三日月みたい」と形容していましたが、その表現も好きなんです。
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