たかがテレビ027●TBS「ズバリ言うわよ!」での「前田健カミングアウト・ショー」詳細

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一見しただけでは、まるでハプニングのように行われた「カミングアウト」ですが、見返してみると実は用意周到に台本が練られた、いわば「カミングアウト・ショー」だったことがわかります。「バラエティー番組的な笑い」の中で、ゲイがここまで扱われるようになって来たのかと思うと、なかなか興味深い番組内容でした。その詳細を文字に起こしてみましたので、ぜひお読みください。
「数子の進路相談」
★5/16(火)TBS系「ズバリ言うわよ!」21:00~21:10放送
テロップ:今週も問題の生徒を細木が熱血指導!
<進路相談室のようなセットに座る教頭役・上田晋也(くりぃむしちゅー)と校長役・細木数子。>
上田「じゃあね、次の方をお呼びしましょうか。次の方、どうぞ~。」
<お母さん役・有田哲平(くりぃむしちゅー)とお父さん役・滝沢秀明に連れられて、女子高生の格好をした前田健が入室する。>
有田「どうもぉ、どうも~。ホントに、ねぇ。」(母親役なので女性言葉)
上田「(前田を見て)あら。これまたちょっと気持ちの悪いのが。」
前田健「よろしくおねがいしま~す。」
有田「いや~、本当にまた来ちゃいましたよ先生、今日も。」
細木「呼んでないのに。」
有田「今日は、ウチのこの子を連れてきたの。」
<テロップ:進路に悩む生徒・前田健>
前田健「よろしくおねがいします。(と言って、あややの顔真似をする。)
有田「先生ご存知ですか」
細木「知らない。」
上田「彼はね、あの~、女性タレントの物まねとかを、いっぱいやってる人なんです。」
前田健「そうなんです。健ちゃんです。」
<テロップ:前田健(土星人-霊合星人)男性でありながら女性のモノマネで人気のお笑い芸人>
有田「普段、男って言うのが信じられないかもしれません。こんな顔してるんです。」
<前田健の素顔の宣材写真を見せる有田>
上田「意外にこう、凛々しい感じの。」
有田「男っぽい顔してるんです、実は。あくまでも“ げい“でやってるんですよ」
前田健「ハイ。あ、漢字の方の“芸”ですけどね」
上田「全然上手くないですよ。」
<会場の笑い声>
上田「実際に芸能界に入った時とか、どういう方向を目指して、こう、芸能界に・・・」
前田健「そうですね、あの~、僕は、何の才能もツテもなかったものですから、取っ付きのいい『物真似』というものを一番最初にやらしていただいて、有名な方を物真似させていただければ、ちょっと、きっかけになるんじゃないかなと思ってやらせていただいたのが、あややの真似なんですけども。」
有田「(細木に)あの、松浦亜弥さんってご存知ですか?」
上田「あややですよ。」
細木「・・・顔見ればわかる。」
有田「じゃあちょっと、それ、見てもらいましょうか」
上田「顔見ればわかるんですからねぇ。」
有田「じゃあ、やらせてもらいなさい。」
前田健「よろしくおねがいしま~す。」
<立ち上がり、黒板の前へ>
有田「健ちゃんによります、あややの物真似です。どうぞ~!」<「Yeah!めっちゃホリデイ」を、アイドルチックな振りつきで物真似する前田健。約40秒間のステージ>
有田「あやや~!」(と、声援)
<ステージ終了。大歓声>
有田「うわ~、いいわねぇ~。」
細木「(大笑いしながら)有田、ヘソぐらい隠しなよ!」
<母親役の有田の女装に突っ込む細木>
有田「ア、すいません。そこでしたか。」
<笑>
上田「先生どうでしたか。今のがいわゆる、松浦亜弥ちゃんの真似なんですけど。ちょっと思い出しました?」
細木「全然わからないけど・・・」
<笑>
有田「もっとメジャーなやつ、やってあげなさいよ先生にもわかるような。」
前田健「あの、金メダルを獲りました、荒川静香さん。」
有田「ア、これ先生わかるでしょ?イナバウアーの、ね。」
<うなずく細木>
上田「それで行くの?」
前田健「はい。荒川静香さんの、スパイラル。」
<クラシック音楽の中、片足で滑る荒川静香のポーズと顔真似。笑い>
上田「あの・・・あややからも、荒川静香さんからも、絶対怒られる」
<笑>
<再び相談室再会>
有田「まあね、こういう大変なことをやってるんですけど、悩みがあるんですよ~。」
上田「なんでしょう?」
前田健「あの~、こういった芸風というかキャラを、このまま突き通してよろしいものかどうかと言うお伺いを立てに、参りました。」
上田「なるほど。」
前田健「この先はお芝居にも興味がありまして、男の格好でお芝居もやって行きたいなと。思っておるわけなんです。」
上田「なるほどね。それだったら早めに、その、女キャラのイメージはね。」
前田健「そうなんです。払拭はしたいんですけどもね。」
有田「やっぱ人気があるんですよ。その物真似の方が。」
上田「じゃあ本当に、変えるべきか、変えないべきかを先生に伺えばいいっていうことですね。」
前田健「ハイ。」
上田「わかりました。じゃあ先生、札を挙げていただきたい。」
前田健「おねがいします。」
<緊張した面持ちの前田健。効果音と共に細木、「変えない」の札を挙げる>
<テロップ:細木のジャッジ「女キャラに徹しなさい!!」>
上田「おお!変えなくてもいい!」
前田健「ありがとうございます。」
細木「芸に徹した方がいいよ。」
前田健「そうですか。」
細木「あのね、踊りとか仕草は女ですよ。」
上田「はいはいはい」
前田健「ありがとうございます。」
細木「そうして、ちゃんとした、ある程度の芸も持ってるんだから、それを生かした方がいいわよ。」
前田健「はい。」
上田「なるほど。」
有田「だけどね、西田敏行さんみたいな俳優さんをやりたいっていう気持ちもあるんですよ。」
細木「だから、これを生かしつつ、ある時ポンと、そういう役もこなしたら凄いと思うじゃない。」
上田「あぁ。基本はじゃあ、この女性キャラでテレビとかでは、やってた方が・・・」
細木「あのね、なぜ言うかっていうとね。根がオカマだから。」
前田健「(うなずく)」
細木「ゲイだから。」
上田「根がゲイ。」
<会場から女性の噴き出し笑い>
上田「それ・・・本当にゲイなの?」
有田「ちょっと、どうなのよ健ちゃん、そんなの聞いてないわよ。」(←母親役なので女性口調)
細木「(指差しながら)ゲイ、ゲイ、ゲイ」
前田健「・・・お母さんとお父さんにははっきり言ってないんですけどぉ・・・根っからのゲイです。」
<細木以外のタレントたち、手を叩いて笑う。細木のみ微動だにせず、頷きながら次の発言内容を考えている様子。>
有田「根っからのゲイなのあなた!」
上田「これ、芸風じゃなくて本当にゲイなの?」
前田健「カタカナの方の」
上田「カタカナの方のね。」
有田「先生分かりました?それ。」
細木「わかるわかる。なかなかここまで出来ない、男が。」
上田「あぁ。」
細木「前田君っていうの?・・・前田さんはね、不潔感がないのよ。うん。それで仕草もね、女になってるからいいの。だからゲイを売り物にやったらいいんじゃないの?」
前田健「はい。わかりました。」
上田「どうでしょう。今後はもう、スパーッと、そっちの方で行ったほうが、すっきりするんじゃないですか?」
前田健「そっちのカリスマになって行こうかなって、思いました、今。」
有田「ゲイっていうのは、いつ頃からゲイなの?」
前田健「そうですねぇ。お母さんには言ってなかったけど中1ぐらいから。」
<笑>
有田「中1からだったの、あなた。じゃあ、はじめて会ったときにはそうだったのね、すでに。」
前田健「もちろんそうです。」
有田「ああ、そうなんだぁ。知らなかった・・・。」
細木「初体験どういう人?」
前田健「はぁ!?」
<笑>
有田「先生ナイスな質問です。ありがとうございます。」
上田「応えなさい。」
前田健「ああ・・・え~っと~、年上の人でしたね。あのこれ、ホントに、本当に正直に言うと、ちょっとした変質者です。」
<笑>
前田健「これ、使えないけど」
細木「いや、使えるわよ。」
前田健「いや使えないですよ。」
細木「(真面目な顔で)使えるわよ。変質者に遭遇して、アンタは染まんないから。芯がしっかりしてるからいいんだよ。」
前田健「ああ、そうですか。」
細木「その変質者、仕事なにやってた人?」
<笑>
前田健「・・・仕事も、ちょっと分からないぐらい・・・。」
細木「どこでヤッたの?」
前田健「ええと・・・これ、本当にいいんですか?」
細木「いいのいいの。」
前田健「・・・ピンク映画館ですね。」
<笑>
細木「・・・バカ。(といって、手元の構成台本を持ち、前田の頭を叩く)」
<笑>
前田健「先生がお聞きになったからぁ~。」
細木「アンタも変質者じゃないかぁ!」
前田健「ピンク映画館ぐらい行きますよ、みんな。」
有田「そういう映画には、行ったの?」
前田健「えっ?」
有田「だって・・・だって、女性は嫌いなんでしょ?」
前田健「そうですね。」
有田「だけど行ったの?」
前田健「うん。男性が興奮しているんだな、と思って行きました。」
<笑>
細木「(真面目な顔で)これまで何人経験したの?」
<スタジオ爆笑>
前田健「え~・・・両手ぐらい・・・ですか。」
細木「10本。」
有田「(噴き出して)10本って・・・」
<笑>
有田「ポンはやめましょう。」
細木「いや、10人って言ったらいけないのよ、そういうのは。10本っていう聞き方がオシャレなんだよ。なんにもわかってないねアンタ」
有田「本数の方がいいんですか?」
細木「そうよ。」
有田「生々しいかなってちょっと・・・」
<苦笑する前田健>
有田「ということは、女優さんとかよりも、男性の俳優さんの方が好き?」
前田健「そうですね。」
有田「じゃあタッキーとか・・・好き?」
<隣にいる、父親役の滝沢秀明を見て>
前田健「悪いけど、タッキーは無いな。」
<笑。軽く怒って前田の肩を叩く滝沢>
前田健「一般的には本当に格好いい方だとは思うんですよ。」
有田「じゃあ、どんな人がタイプ?じゃあ。」
前田健「そうですね。ジャガイモみたいな人で、まあ、ここで言えば、上田さん。」
上田「おお~っ!」
滝沢「あははは。」
有田「上田さんがタイプ!」
前田健「タッキーみたいな綺麗な人は、一緒に居ても緊張しちゃって安らげないので、こういうゆるい方と・・・」
上田「なはっ!」
<笑>
細木「あのねぇ、こういうタイプのゲイは、ビジュアル系とかイケメン好きじゃないのよ。自分がいい女と思っちゃってるから。」
上田「ああ、なるほど。」
細木「だから、ブ男で、コレ(金)アリが好きなのよ。」
<噴き出す上田>
有田「ブ男が好きですか、こういう。」
細木「ブ男で、優しそうなのが好きなのよ。」
有田「じゃあ、まさに上田ですね。」
細木「うん。」
上田「まったく嬉しくないよ。」
細木「あのね、こういうタイプはものすごく尽くすのよ。至れり尽くせり」
上田「なに先生もオススメしてんですか!」
<笑>
有田「ア、そうお。じゃあさ、こんなのやっちゃっていいのかしらコレ。」
<バックから何かを取り出す>
有田「これね、上田の住所と電話番号(紙を渡す)」
前田健「あ、ホントだ、すげ~!」
上田「お前なに渡してんだよ。返せ!返せ!」
前田健「本物だ!」
有田「いいじゃないの別にそれは~。」
前田健「本物かどうか確認してください。(上田のほうに紙を向ける)」
上田「ははははは。(取り返そうとする)返せ!」
前田健「お母さん、ありがとう!なによりも嬉しい」
細木「(上田に)アンタ、経験したらやめらんないらしいよ。」
上田「はあっ?」
<笑。終業のチャイムが鳴る>
有田「じゃ、電話番号さっき渡したからね。ちゃんと掛けるのよ」
上田「捨ててくださいね」
前田健「ありがとうございました。」
<立ち上がり、退室する父・母・娘>
有田「(去り際に)ホッとしたわよ、今日は。」

自身の公式ホームページのエッセイ「サンキュね。~カミングアウトについて~」 でも書かれていますが「20歳くらいの頃には家族に話をして理解をもらって」いたようですし「所属している事務所の人や同じ事務所の芸人・・・それだけに留まらずよく仕事をいっしょにしたりする芸人仲間の人たち、スタッフの方々、すべての人が僕がゲイである事を知ってくれて」いたということです。
「ズバリ言うわよ!」では、まるではじめて告白するかのような設定でトークが行われたのですが、この番組のホストである「細木数子さんに花を持たせるため」に巧妙に仕組まれた「台本のあるコント」だったと言えます。録画した映像をよく見てみると、教頭役・上田晋也さんと校長役・細木数子さん共に卓上の構成台本らしきものに、しきりに目を落としていますし、母親役の有田哲平さんが最後に、相棒の上田晋也さんの電話番号が書かれた紙を前田健さんに手渡すわけですが、女装した衣裳のハンドバックから非常に素早く取り出すわけですから、その紙は事前に「仕込まれていた」ことがわかります。
この番組では「人の本質を何でも見抜く」ことになっている細木数子さん。彼女の口からまず「あなたゲイでしょ」と発言させ、それに促される形で前田健さんが「ゲイです」と応える。このことによって、細木数子さんの権威は保たれるという仕組みなわけです。
前田健さんとしても、仲の良い芸人仲間である「くりぃむしちゅー」の二人にフォローされながら、全国に向かってゲイであることの認知を広げる絶好のチャンス。番組側とゲスト側の双方にとってメリットのあるように、綿密に組み立てられた筋書きだったとも言えます。
途中の細かいやりとりにおいては「アドリブ」で赤裸々な告白もしてしまった前田健さん。その是非や使われた言葉遣いについては議論の余地がありそうですが、この番組の放送によって彼としてはこれから、スッキリとした気持ちでゲイとしての芸能活動が出来るのではないでしょうか。
一昔前までは、男性的なキャラで売っている芸能人が「ゲイである」ことが噂になるとスキャンダルに発展し、そのことが理由で自殺したのではないかと噂されている俳優もいます。前田さんの場合は「女装した物真似」で人気を博したという伏線があったわけですが、素顔は男性的なキャラであることも同時に認知されています。
かなり乱暴なやり方ではありましたが、彼にとっては一歩前進と言えるのではないでしょうか・・・と肯定的に捉えてしまう僕の感覚は、ゲイとしては甘いのか?→FC2 同性愛Blog Ranking
コメント
観ました
●桃さん。
本当は俳優業の方に、力を入れて行きたいんだろうなぁ。
細木サマになんと言われようと、
自分がそう思うのならば方向転換すればいいのに。
これからはゲイの役の需要も増えるかもしれないし。
む~なんだかなあ
文面からですので、見てみたら違ったかもしれないけど。
でもピンク映画館のくだりは、我々からしたらリアリティあるな、と思いました。
以前のカルーセル麻紀の回で、LGBTに対してあまり好意的でない発言も
したので、その罪滅ぼし的な雰囲気が感じられますね。
●Kazuccineさん。
いろんなニュアンスが抜け落ちてしまうから、印象違っちゃうでしょうね。
でも、一回見ただけではスーッと流れて見落としてしまった
この番組の「演出のされ具合」が、
パソコンのデータとして保存して自由自在に操りながら見返してみると
非常によ~く読み取れる(笑)。
いや~、便利な時代になったもんだぁ。
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