セクマイ系★紙媒体掲載チェック058●被災地で「おかまバーの名物ママの消息」を探すエピソードあり●講談社MOOK「g2」掲載『ルポ大津波と日本人』(佐野眞一)

人間洞察と状況描写に優れた読み応えのあるルポであり、惹き込まれながら読み進んでいたら、被災地で暮らすセクシュアル・マイノリティに関する描写が出てきたのでご紹介します。
佐野さんがこのルポを書く目的は、被災地に住む友人・知人の消息を探すことにあったわけですが、そのエピソードの一つとして「おかまバーの名物ママの消息探し」が描かれているのです。
●『g2 ( ジーツー ) vol. 7 』 (講談社MOOK)
10年ほど前に新宿ゴールデン街にあった『ルル』という「おかまバー」をやっていた「キン子」と自称する名物ママが、東北地方の太平洋側に田舎があり、「うちの実家はホタテ貝の養殖をやっているの」と、ホタテ貝をお土産にもらった記憶が蘇った佐野さん。
「ホタテ貝の養殖をやっていたのなら津波に巻き込まれた公算が高い」とは思いつつも、消息を探ろうと決意します。しかし、よく考えてみると「キン子」という通称名しか知らないことに気付くのです。本名を知らなければ緊急時の消息を探ることなど、到底難しいという問題にぶつかります。
そこで、当時の店の常連客ネットワークを辿り、なんとか「本名らしきもの」を突き止めたものの、現地に問い合わせても「該当人物はいない」と言われるばかり。やはり本名ではなかったのかと更に別の知人に探ってみたら、ようやく新たに「別の名前」が浮かび上がります。ただ、それも正しいのかどうかはわからない。
不確定要素ばかりで情報が無いけれど、とにかくルポを書くために気仙沼に向かってみる佐野さん。果たして「キン子」とは再会できるのか?というのが、このルポを読み進む上で、いくつかある物語の一つの重要な軸になっています。
●『g2 ( ジーツー ) vol. 7 』 (講談社MOOK)
なるほどセクシュアル・マイノリティって、その人間関係の中で「通称名」を使っている人が多いわけで、平時には不便は生じないし関係が疎遠と感じることもないけれども、緊急時等に消息を探りにくく、連絡を取りにくくなってしまうのだということを、あまり意識していませんよね。そのことに気付かされました。
ルポの後半では、なんとか「キン子」と再会して会話する場面が出て来るわけですが、それがいかに奇跡的なことであり偶然の産物だったかということも、詳細に書かれています。
5月5日のレインボー・アクション主催イベント『被災とセクシュアル・マイノリティ』、そしてJAPANレインボー・エイドといった活動において、災害時のセクシュアル・マイノリティがどのような状況に置かれやすいかを考え、想定と知識共有をしておく際に、示唆的なルポの一つではないかと思いました。→FC2 同性愛 Blog Ranking

→コンペティション部門公開審査会映像
映画『しみじみと歩いてる』
★5月に東京で自主上映会を開催します。
5月3日(祝)13:20/15:20(2回上映入替制/1200円)
会場:なかのZERO視聴覚ホール
監督:島田暁/2010年制作 77分■制作:akaboshi企画
2006年10月から、大阪の御堂筋を性的マイノリティとその友人たちが歩く『関西レインボーパレード』に通いながら出会ったレズビアン、ゲイ、MtFトランスジェンダー、FtMトランスジェンダーそれぞれの日常生活、それぞれの違い、家族へのカミングアウト、仕事場や人間関係における葛藤、苦しみ、そして喜びを描いたドキュメンタリー。ゲイである監督の視点からまとめました。
★第6回青森インターナショナルLGBTフィルムフェスティバルでの上映も決まりました。(7月3日です。)
★『しみじみと歩いてる』を、あなたの街で上映してみませんか?上映についてのお問い合わせは、akaboshi07@gmail.comまで。
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