石原都知事の同性愛者差別発言を受けて16●LOUDの大江千束さん、小川葉子さん●同性カップルとして「襟を正す」とは、近所と断絶しないでコミュニケーションを積極的に取ること #ishihara_kougi

1月14日(金)開催「石原都知事の同性愛者差別発言、なにが問題か?」の映像公開第二弾は、中野区にあるレズビアンとバイセクシュアル女性のためのコミュニティセンター「LOUD」の代表・大江千束さんと、副代表の小川葉子さんのお話です。
この日の会場には、性的マイノリティのことにそれほど詳しくない方々も大勢いらっしゃることを事前に想定しておりまして、お2人には性的マイノリティに関する基礎知識的な事柄から、わかりやすく丁寧に語っていただきました。
(文字起こし作業協力 Very Thanks!:石原都知事の同性愛者差別発言に抗議する有志の会メンバー)
●石原都知事の同性愛者差別発言、なにが問題か?02●大江さん、小川さん
■YOUTUBE「石原都知事の同性愛者差別発言、なにが問題か?」PLAYLIST
島田暁(司会)
続きまして。ここは中野区にある、なかのZERO小ホールですけれども、すぐ近く、中野駅の南口にありまして、レズビアンやバイセクシュアル女性のためのコミュ二ティスペースとして長い歴史のある「LOUD」の代表と副代表の方においでいただいてます。大江さんと小川さんです。各々自己紹介をしていただいた上で、お話いただければと思います。よろしくお願いします。

よろしくお願いします。ただいま御紹介にあずかりました、LOUDの代表をしております、大江千束(おおえ ちづか)と申します。今日はよろしくお願いいたします。LOUDの説明は副代表の小川の方にしてもらおうと思いますので、よろしくお願いいたします。
小川葉子(LOUD副代表)
皆さんこんばんは。LOUDの小川と申します。今日はよろしくお願いいたします。LOUDは1995年に創立されました。私たちが初代のメンバーでは無いんですけれども、溝口彰子さん、関口としこさん、掛札悠子さん、この3名が創立をされました。それから長い年月が経っているわけなんですけれども、私たちのスペースというのは、レズビアン女性やバイセクシュアル女性が主体的に、なにか利用できるスペースでありたいという思いから設立されました。自分らしく過ごせる場であればいい、そういう、当事者がみんなと交流できる場、そういう場がないんじゃないかという思いがいろいろとありましたので、そこからずっと今に至るまで続いております。
長い間の中には、つい約1年半前なんですけれども、引越しを重ねましたりとか、今までは中野の北口にあったところから今は南口の方に、手狭になりましたが、LOUDはまだ存在しております。皆様ぜひぜひ、なかのZEROにも近いので、なにか機会がありましたら、お立ち寄りいただければと思います。

大江千束
LOUDは1995年に創設して約15年になるんですけど、LOUDの枕詞として「レズビアンとバイセクシュアル女性のためのスペース」あるいは「センター」ということだったんですけど、その当時、バイセクシュアルということを言うだけで「画期的」と言われたんですね。今でこそ、セクシュアリティ全般ものすごく多様化していて、言葉もたくさん出てきていますよね。そういう中で、まだ、かれこれ15年前というのは、バイセクシュアルに対する理解もなかなか少なかったと言えたのかもしれません。
今からここでですね、一般的に言って性同一性障害と同性愛と、一体なにが違うのか、どういう風に説明されるのかということで、ちょっと簡単に私の方からご説明させていただきます。

それに対して同性愛は、じゃあ一体何かということなんですけど。自分以外の他者との関係性においてどういう関係性を創りたいか、どうありたいかという様に考えれば良いかなという風に、長い年月を経て私も思ったりしております。そういう事から言いますと、私自身は、自分自身は女性で生まれて、今女性という性別に指して違和感はないんですね。まぁ「女って損だなぁ」って思う事は人生多々ありましたけども、そんなに性別に対して揺らぎがない。なおかつ誰と恋愛、性愛を含めた密接な関係を結んで行きたいかと思った時に、やはり同性である女性がいいかなっていうのが、私のスタンスです。
よく聞かれることで、「なぜ同性がいいんですか」っていう風に聞かれるんですね。なぜかというと、私は色々な大学等で授業をしたりとか、話す機会があるんですけれども、学生達の質問の中に、「大江さんは、なぜ同性愛者なのでしょうか」という問いをされることがあって、非常に難しいんですけれど、一言では答えられないんですけど、まぁ私に関して言うと、やっぱり同質な物に対しての安心感があるのかなっていう風に思っております。

島田暁
今、「性同一性障害」という言葉はかなりの認知度が高いですけれども、「性的指向」とか「セクシュアリティ」が異性に向かない人達の事が、「性的指向」が同性に向くという事の意味っていうのが伝わっていないから石原都知事の発言等に出て来ているという気がするんですけども。
大江千束
はい。
島田暁
その石原都知事は「男のペア、女のペアあるけど、どこかやっぱり足りない感じがする」っていう風に発言していますが、今おっしゃった様な捉え方で、自らのライフスタイルを構築されている大江さんとしましては、この発言を聞かれてどういう感じがしましたか?
大江千束
はい。えーと、あの別に隠してるわけじゃないんですけれども、隣の小川さんと私は同性同士のパートナーシップ、いわゆるレズビアンカップルとして17年くらい、パートナーシップを営んでおります。一緒に暮らして16年くらいになるかと思います。それで私達は普段ですね、集合住宅に住んでいるんですけれども、こう言っては何ですけれども、すごく「襟を正して」生活していると思うんですね。そうですね、小川さん?

(笑)
島田暁
「襟を正す」?
大江千束
ゴミの出し方とかね?
小川葉子
そうですね。
島田暁
あの、「襟を正す」とはどういった事なのですか?
大江千束
はい。「女同士で、なんか仲良く暮らしているみたいだけど、一体何だ」っていう周りの目が常にあるわけですね。何も知らない人からすると、「姉妹でも親戚でもない女同士がただルームシェアをしている」という見方でしかないわけですね。私達の中では家族としてのパートナーシップを営んでいるという意識があっても、周りから見たらそういった目なんですけれども。それでもやはり「何年も何年もずっと一緒に住んでいて時折楽しそうだし、何なのかしら」というような好奇の目に晒された時に、やっぱり集合住宅ですから、ゴミをきちんと正しく出すとか、挨拶をきちんとするとか、そういうように、断絶しないで、コミュニケーションを積極的に取って、とにかく変な事を言われないようにしようというような心がけはしているよ、という事なので、「足りない」とか言われちゃうと、とっても憤慨です。

小川さんはいかがですか?
小川葉子
そうですね。私達は確かに集合住宅に一緒に住んでおりまして、年配の女性等もいらっしゃるんですけれども、「あなた達いいわね、二人で楽しそうにやってて。それが一番いいのよね。私なんか旦那が亡くなっちゃって、独りなんだけど、女同士のカップルって良いわね。」ってそんな風に言って下さる方がいて、そのおばあちゃまに、「実は私達レズビアンカップルなんです」って言っても、たぶんおわかりにならないんではないかと思うのですね(笑)。
なのでまぁ「楽しくやってます~」くらいなんですけど、もしご質問あれば、そういう事もお話しできるんですけれども、ご質問がなかったんでそのままなんですけれども。そんな感じで私達も楽しくやってるんですけど、でも確かに石原都知事のそういう発言を聞きますと、きちっと生きている、市井の私達の事を「足りない」と言われるのはどういう事か。普通に社会人として生活し、税金を納め、社会に貢献している人間の一人であるとは思うのですが、それを「足りない」と言われてしまうのは、あまりにもちょっと憤慨というか、悲しいと言うか、何とも言えない気持ちになりました。
島田暁
はい。それでその「足りない」という言葉をじゃあ組み替えて、自分達が使う言葉として使った場合、何が足りないという風に言い返したくなりますか?
大江千束
はい。足りないという部分、これは今日のトピックであると思うんですけれども、色々な考え方があると思うんですよね。私の「何が足りないのかなぁ」という考え方の一つとして、あえて申し上げますけど。やはり日本において圧倒的に同性カップルの、同性間の関係性を保護するような制度や法律が足りないかな、と私はまず、ひしと思いました。

確かに日本において同性同士のパートナーシップの法律を作る動きに対して、抵抗を感じていらっしゃる方がいるというのは、すごくよく分かる事実なんですけれども、考え方の一つとしてあえて言えば、これはやはり同性愛者の権利獲得運動のひとつの到達点でもあると思いますし、やはりこういった事で、しっかり同性パートナーシップというものが社会で認知されている、顕在化されているというような事実の元で、果たして石原慎太郎はこのような発言をしたのか。でも、言っても、あの人は何に対しても口さが無く言うので、これが出来たから言わないだろうという事にはならないかもしれませんけれども、まず「足りない」のうちの一つには、日本ではこういう法整備ができていないという事を、私自身はとても感じました。
島田暁
小川さん、いかがですか?
小川葉子
私も「足りない」という事に関しては、色々疑問にも思うんですけれども、やっぱり社会に認知されていない。それが足りない、社会の認知が足りないんだと思います。と言いますのは、LOUDにいらっしゃる当事者の方々というのは、大概が非常にクローゼットです。クローゼットというのは、おわかりかもしれませんが、一般の社会の中では、仕事場や学校の中では、自分が同性愛者であるという事、あるいはバイセクシャルであるという事を隠して生きていらっしゃる方がほとんどです。ですからLOUDなんかに来た時には、とても開放された気持ちになるとおっしゃいます。でもじゃあ何故隠さなきゃいけないのかと言ったらば、それは私達同性愛者が社会に実際はたくさんいるという事が、社会に認知されていない。その欠けている物が、足りないという事だと私は思います。
島田暁
はい、ありがとうございます。大江さん、あと何かございますか。

日本ってすごく色々な人権問題に関して、その感覚も含めていろいろ足りなくって、諸外国からもやっぱり「何とかせい!」っていう風に言われてるのですね。国連の関連機関である規約人権委員会に2008年に言われている事なのですけれども、同性パートナーに対して公営住宅への入居を認めるよう要望とかが出ているのですね。どういう事かと言うと、結婚していない異性カップルに提供されている利益が、結婚していない同性カップルにも提供されるよう保証すべきというような勧告も出ていますし。
これはどういう事かと言うと、レズビアン・ゲイ・バイセクシュアル及び性同一性障害の人達に対して、雇用であるとか、住居、それから社会保険、健康保険、教育の及ぶ場によって、規制されたその他の領域における差別がある事に懸念があるというようなお達しがされているわけですね。なので、やはり諸外国から見ても、人権感覚にまだまだなんだなと。その延長線でやっぱり、首長ともあろう人が、ああいう発言をするんだな、と尚更思いました。
島田暁
ありがとうございました。東京都が姉妹都市提携をしているベルリンとかパリの首長は性的マイノリティの当事者、同性愛者の当事者という事をカミングアウトしている人達であるにも関わらず、東京都の首長は、この様な発言を出来てしまうという現実もありますね。ありがとうございました。→FC2 同性愛 Blog Ranking
当ブログ内 大江千束さん、小川葉子さん関連映像(2009年12月)
●パフナイト★二人で生きる/生きてきた技術
<イベント概要>新宿のゲイバー「タックスノット」のマスター・大塚隆史さんは、店を訪れるカップルの「長い付き合いを応援」しながら、自身の同性パートナーとの生活体験を、『二人で生きる技術~幸せになるためのパートナーシップ』に執筆。このたびポット出版から発売されました。 12月のパフナイトはゲストに大塚隆史さんをお迎えし、 出版に至るまでの経緯や執筆時のエピソード、 同書に込めた思いをたっぷりと語っていただきます。【ゲスト】大塚隆史さん(タックスノット)、大江千束さん、小川葉子さん(共にLOUDスタッフ)【聴き手】遠藤まめた、akaboshi
●パフナイト★二人で生きる/生きてきた技術PLAYLIST

『しみじみと歩いてる』
3月に東京で上映会を開催します。
3月21日(祝)13:20/15:20
(2回上映入替制/1200円)
会場:なかのZERO視聴覚ホール
監督:島田暁/2010年制作 77分
■制作:akaboshi企画
2006年10月から、大阪の御堂筋を性的マイノリティとその友人たちが歩く『関西レインボーパレード』に通いながら出会ったレズビアン、ゲイ、MtFトランスジェンダー、FtMトランスジェンダーそれぞれの日常生活、それぞれの違い、家族へのカミングアウト、仕事場や人間関係における葛藤、苦しみ、そして喜びを描いたドキュメンタリー。ゲイである監督の視点からまとめました。
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