映画「ペパーミント・キャンディー」新文芸坐で26日上映

この映画は、日本と韓国が共同で文化事業に取り組んだ最初の映画だったらしいです。1999年にNHKと韓国のイースト・フィルム・プロダクションが共同製作。当時としては画期的なことでした。
2000年1月1日にソウルの少数の映画館で封切られるや口コミで評判が広がり、一気に上映館が広がったそうです。何度でもこの映画を見ようという「リピート運動」まで展開され、カンヌ国際映画祭、モントリオール世界映画祭などの映画祭でも高く評価されました。
物語は40歳の男が人生に絶望し、自殺をしようとするところからはじまります。そして彼の人生を少しずつ遡りながら、結果的に韓国の現代史の闇が浮かび上がる構造になっています。映像表現としても美しく、物語としての娯楽性にも秀でた稀有な映画です。
監督のイ・チャンドン氏の言葉を紹介します。
「ウォンビン兵役報道に思う」でも触れましたが、映画の主人公ヨンホは光州事件の時、たまたま軍隊に徴兵されていたために同世代の若者たちを「弾圧する側」に立たされトラウマを負います。その後は刑事となって労働組合員を拷問する立場になり、やがては実業界で成功を修めるのですが・・・彼の人生からは大切なものがどんどん欠けて行くのです。あの映画では個人だけを描いたというよりも、韓国社会の20年間も描いたと言えます。映画のスタート地点は、1979年で(主人公の)ヨンホは20才です。韓国という国も青年時代でした。(中略)あの時代は貧しかったけれども希望があった。20才のヨンホがカメラマンになりたいという希望を抱いていたようにね。それから自己への裏切り、自己否定の時代、夢や理想を忘却していく時代になったのです。
光州事件が起きた1980年5月、私は25才でしたが、当時の大学生は民主化運動の真っ只中で、光州のことは噂で伝わってきていました。全斗煥 の新軍部がその後の政権を握って、私は絶望しました。ああいった政権が生まれて支持されるという社会システム、人に対する不信感。純粋な自分には理解することができないほどの絶望感でした。そして、この絶望感が、のちの私の人生を支配することになるだろうと思いました。
(光州事件に関しては)報道規制がなされたため詳細は報道されませんでした。事件の真相は詳しく知らされていません。今回の撮影でも光州の場面が一番苦労しましたね。国防省の許可がとれなくて物理的な面で苦労しました。(中略)現在の韓国は民主化の時代と言っても、やはり光州のことは軍の恥部なので、協力を得ることはできませんでした。

2002年に彼は再びイ・チャンドン監督作品「オアシス」に出演。26日の文芸坐ではこの二作が二本立てで上映されます。興味のある方はぜひ。
●上映時間
「ペパーミント・キャンディー」
・・・12:45/5:45
「オアシス」
・・・10:20/3:20/8:15(終映10:30)
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☆関連記事・・・イ・チャンドン「ペパーミント・キャンディー」●MOVIEレビュー
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コメント
この記事へのコメント
こんばんは、akaboshiさん。久しぶりでした。
ご年の休暇はどう過ごしましたか?中国ではすぐ春節がきますよ。
ところで、こんな映画は中国の映画館でぜひ公映ではできません。残念。
ご年の休暇はどう過ごしましたか?中国ではすぐ春節がきますよ。
ところで、こんな映画は中国の映画館でぜひ公映ではできません。残念。
韓国もの
映画は素直にいいものが多いのに、
ドラマはとんでもないのが多いですよね。
何故だろう?(あれはそれなりに楽しめるけど)
日本だとこういう映画って作られにくいですよね。
まあ、あたしが観てないだけかもしれないけど。
ドラマはとんでもないのが多いですよね。
何故だろう?(あれはそれなりに楽しめるけど)
日本だとこういう映画って作られにくいですよね。
まあ、あたしが観てないだけかもしれないけど。
文芸座
懐かしい名前ですね「文芸座」若い頃よく行ったものでした。「新文芸座」は前の文芸座のところにあるのでしょうか?
●wikaさん。
おひさしぶりです。
お正月は・・・ほぼ仕事ばかりしていました。
実家にも帰らなかったので、まったく正月気分を味わっていませんが
もともとそういうことに興味がないので、本人としては
かえって幸せでした(笑)。
中国では、国内問題に関して描いた映画はなかなか
公開が難しい状況が続いているようですね。
たとえ世界の映画祭でグランプリを取って高く評価されたとしても
国内の公の映画館では全く上映されていない映画もあります。
(「鉄西区」など。)
世界にはまだまだそういう国がたくさんあるから、
こんな風に自由に見られる日本の状況は幸せだし、
当たり前のことだと思わないようにしなくてはと思います。
お正月は・・・ほぼ仕事ばかりしていました。
実家にも帰らなかったので、まったく正月気分を味わっていませんが
もともとそういうことに興味がないので、本人としては
かえって幸せでした(笑)。
中国では、国内問題に関して描いた映画はなかなか
公開が難しい状況が続いているようですね。
たとえ世界の映画祭でグランプリを取って高く評価されたとしても
国内の公の映画館では全く上映されていない映画もあります。
(「鉄西区」など。)
世界にはまだまだそういう国がたくさんあるから、
こんな風に自由に見られる日本の状況は幸せだし、
当たり前のことだと思わないようにしなくてはと思います。
●kazuccineさん。
やっぱり「テレビ」と「映画」では違うんだと思います。
日本でもそうですが、テレビドラマはチャンネルを替えさせないために
次々とセンセーショナルな場面を作らなくてはならない。
しかし映画はとりあえず映画館に入れば2時間近く
わりと辛抱強く観客は見てくれるから、構成上も実験がしやすい。
日本でも、若手の映画監督で頑張っている人はいるけど
最近ではやたらと「個的」な表現に閉じてしまう傾向が多いように感じます。
60年代~70年代のATG映画全盛の頃の全体的な勢いとか
社会への批評精神とか実験精神を前面に出して
「開いて行こう。そして自己も変革して行こう」という精神で作られるものは
今では少数派。
日本でもそうですが、テレビドラマはチャンネルを替えさせないために
次々とセンセーショナルな場面を作らなくてはならない。
しかし映画はとりあえず映画館に入れば2時間近く
わりと辛抱強く観客は見てくれるから、構成上も実験がしやすい。
日本でも、若手の映画監督で頑張っている人はいるけど
最近ではやたらと「個的」な表現に閉じてしまう傾向が多いように感じます。
60年代~70年代のATG映画全盛の頃の全体的な勢いとか
社会への批評精神とか実験精神を前面に出して
「開いて行こう。そして自己も変革して行こう」という精神で作られるものは
今では少数派。
●ま~さん 。
僕が「名画座通い」に熱中しはじめたのは、
ちょうど以前の文芸坐が閉館する直前の頃だったので
2回くらいしか、あの独特のおどろおどろしい雰囲気を味わえなかったので
残念です。たぶん、今も同じ場所にあるんだと思いますが
ずいぶんと綺麗に整備されて清潔感溢れる空間になっています。
でも、座席も見易いし画面も大きいし、名画座のわりには
とてもいい状態で映画が見られますよ。
プログラムも精力的で、すごく頑張っていると思います。
ちょうど以前の文芸坐が閉館する直前の頃だったので
2回くらいしか、あの独特のおどろおどろしい雰囲気を味わえなかったので
残念です。たぶん、今も同じ場所にあるんだと思いますが
ずいぶんと綺麗に整備されて清潔感溢れる空間になっています。
でも、座席も見易いし画面も大きいし、名画座のわりには
とてもいい状態で映画が見られますよ。
プログラムも精力的で、すごく頑張っていると思います。
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