地方の論理と都会の論理、鹿児島で感じた今後の課題

日曜から『しみじみと歩いてる』の最終撮影で鹿児島に行ったのですが、まずは映画の撮影とは関係ない用事で、ビアンさんカップルのお宅にお世話になりました。スーパーで買物をした後でお鍋をつつきながら、止め処なく喋る喋るこの1年半の近況を。(1年半ぶりに行ったんですね。)
おかげで24時間テレビで、はるな愛さんがゴールする場面を完全に見逃しました(笑)。見逃したことすら気付いたのは翌日だったという・・・。それだけ集中して喋りまくりながら、いろいろ考えさせられることがまたたくさん出来ました。一言で言うならば「地方の論理と都会の論理の違い」をまざまざと感じることになったということ。
近隣の人たちの多くが顔見知り。互いの生活のあり方を知り合っているような関係性の密な土地柄で、セクシュアルマイノリティとして、同性同士のパートナーとして同居して生活するということ。そして、それを周囲に開示していく際に直面する困難というのは、都会人には容易に想像が付かないほど厳しいものなんです。だって、匿名性なんてほぼ、無いに等しいんですよ。

そのことに気付いた友人のビアンさんは「これから彼女がakaboshi君と私のことを、なんて噂するのか楽しみだわぁ~」と、笑顔かつ複雑な表情で言ってました。つまり友人のビアンさんは対外的には(いわゆる)「独身女性」として周囲から見られながら生活しているわけでして、珍しく男を引き連れて買物しているということは近所の人たちの格好の「ネタ」になるわけなんです。
なんなの?この、密な関係性っ!と感じてしまうほど僕は匿名性の高い都会的感覚で日々、生きているわけですが。ビアンさんカップルから聞いた様々なエピソードからは、周囲や家族との関係性の濃密さを感じました。例えばこの土地柄で「プライドを持って堂々と、レズビアンカップルですっ!同居してますっ!て宣言しなきゃっ!」と活動家的な使命感に駆られ、突っ走ってどんどんオープンにしたとしたら、どんだけ周りから浮いてしまうことでしょう・・・実際問題、浮くと思うんですね、この土地柄の今の状況では。
人口密度が低く匿名性が希薄な土地柄で生きるということはやはりまず、自分の生活圏内にいる人たちとの関係性を最優先に維持しながら、探り探り暮らしていくことことがベストなんだと思うんです。だって、もし孤立したりしてしまって精神的に追い込まれたりしたら、それこそ本末転倒ですからね。周囲のセクシュアル・マイノリティに相談したりしたくとも、車や電車で何時間もかけなければ会えなかったりする環境。その中でわざわざ孤立する道を選ぶなんて、自殺行為に等しいことです。

その結果、地方に暮らす人たちが「都会に暮らすセクマイたちみたいに振る舞えない」ことで自分を責めたり焦燥感に駆られたり、無謀なカミングアウトの返り血を浴びて精神的ダメージを抱え込んだり、コミュニティの情報に接することで逆に(新たな)自己否定の感覚を持つことが実際に生じているのではないかと思いました。
ただでさえ世間から抑圧されがちな中で暮らしているのに、セクマイ・コミュニティの情報に触れることによって別の種類の抑圧感を持たされたら、やってらんないですよね。でも構造的に、そういうことって起こってると思います。その辺りをどうフォローできるのか。この現実って取材も表現も難しいため、なかなか「リアリティのある映像表現」として提示できないのがもどかしいわけですが、今後の課題だなぁと思いました。
こんな風に「次の課題」が具体的に見えるのって、僕みたいなことをしている者にとっては至上の喜びなので、とにかくお二人が日々、感じていることや周囲や家族との関係性の探り方からは、学ぶことがあり過ぎるくらいにありました。

意外な発言ではあったのだけれども、『しみじみと歩いてる』の後半に入れるのには、まさに「ふさわしい」と思える内容だったので、とりあえず2010年現在の僕がこれまで感じてきたこと、人と出会って考え続けてきたこと、学ばせてもらってることは過不足なく全て入ることになりそうです。同時に、まだまだ達成できていないこと=現時点での限界もクリアに見えてきたので、そういう意味でも有意義でした。
まだまだ歩みは始まったばかり。『しみじみと歩いてる』は、これから探求していきたいことに向かうための「最初の一歩」という感じなんだと思います。
その「一歩」をクリアにするために鹿児島で協力してくださった方々、本当に本当にありがとうございました!→FC2 同性愛 Blog Ranking
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コメント
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鹿児島中央駅
鹿児島中央駅前の志士群像と天文館、もう何年も見ていませんが、懐かしい。「ビアンさんのカップル」と「ビアンカ」似ていますね。作品の出来上がりを楽しみにしています。(どうしたら見られるのかな?)
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