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やわらかくありたいなぁ。

2023-05
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園子温「奇妙なサーカス」●MOVIEレビュー

美人が狂うのって美しい

タイトルに惹かれて見に行った。新宿歌舞伎町のド真ん中にある、ちょっとうら寂れた映画館(新宿トーア)は、この映画にぴったりの舞台設定だった。観客は全員が男性・・・。ドロドロと血なまぐさく甘美で濃厚かつエロティックで倒錯したこの映画は、なるほど男性が一人でこっそりと見に行くのにふさわしいのかもしれない。
そして僕にとっても・・・かなり好きな世界かも(笑)。通常の映画では味わえない濃厚な興奮を味わいながら、視覚的にも内容的にもグロテスクな世界にどっぷりと浸かってしまった。

★東京での上映は本日で終了。
地方での公開がはじまります。(公式サイト)

宮崎ますみ復帰作

女優・宮崎ますみにとって、この映画は久しぶりのカムバック作だという。その力の入れようは半端じゃなく、「だ・・・大丈夫?」と心配してしまうほどに壊れまくってくれているから素敵だ。これから「中年」と呼ばれる年代にさしかかろうとしている彼女だけれど、ちょっと疲れてきている感じがかえって色っぽい。「熟女」とはこうした美しさを持つ人にこそ、ふさわしい言葉だろう。

しかも彼女の演技のすごいところは、表面的な美しさをぶっ壊すことに積極的であり、自らが率先してエロスとグロテスクを追求しているところ。心から楽しんで、このハードな役を生きたというところ。それこそ本物の知性と芸術的感性を持っている人でなければ出来ない芸当だと思う。
この映画の彼女は本当に美しい。どんどん汚れて壊れて行く所が最高に美しい。本能や欲望の剥き出しになった所ではじめて見えてくる、人間の本当の美しさというものに気付かせてくれるのだ。

いしだ壱成の狂気と浮遊感

かつてアイドルとして名を馳せた、いしだ壱成の姿を久々に見た。映画の後半をかき回す重要な役どころだ。彼の中性的でふわふわしているけれど鋭いナイフを秘めているかのような独特な存在感が、とても生かされる役どころだった。
浮ついた「ブームとしての人気」から解放されて自由な立場を獲得した人が、俳優としてすばらしい成果をあげることがある。彼にとってこの映画は、そういうものになったのだと思う。

近親相姦・憎悪の渦巻く多次元ワールド

精力絶倫の父親に愛された娘。
母親とのセックスを目撃させられ、自分と父親とのセックスも母親に見られる。すべては父親の性的興奮を満たすため。しかも、なんとその父親は小学校の校長であり、普段は偉そうに生徒達に「道徳」を諭しているという皮肉めいた設定が最高(笑)。

父親という「一人の男」をめぐる母と娘の愛憎。
やがて娘は自分と母親を同一視しはじめ・・・母も同じく倒錯しはじめる。皆がだんだんと狂って行く様子が、独特の映像・美術・音楽センスで彩られ、ギリギリの所で「品」を保ちながらエンターテインメントとしても成立しているからすごい。
時空間の移動が自由であり、次の展開が全く読めないのでどんどん引き込まれる。そしてなにより映像として感覚的に楽しませる術に長けている。しかも内容は哲学的。何拍子もそろった贅沢な映画だ。
地上波テレビのゴールデンタイムではまず間違いなく放送できないだろうし、そんなことをしたら表面的な偽善ばかりを繕いたがる「PTAのご婦人方」から抗議が殺到することは必至(笑)。
しかし人間なんてものは一皮剥けばグロテスクな肉が露呈し真っ赤な血が流れるのが本性。そうしたダークな部分と向き合うには、かなり「心臓の強さ」が要求されるし、精神的な鍛錬が必要なのだ。むしろこうした映画が広く受け入れられることこそが本物の「文化的成熟」。そんなことも考えてしまったりなんかして。

Scan0004.jpgグロテスク=男性的なエロスなのか!?

僕が園子温監督の映画を見たのはこれがはじめてなのだが、その映画的センスには本当に驚いた。感覚的には江戸川乱歩の倒錯世界に通じていると思う。
そういえば乱歩ファンにも圧倒的に男性が多い。乱歩の特集上映が開催されると客席のほぼ大多数は男性が占め、ある意味異様な雰囲気で満たされるのが常。男性的な感覚とはけっこう、グロテスクなものを求めるものなのかもしれない。では女性的な感覚の持ち主がこうした世界を見た時に何を感じるのか。ちょっと気になるところではある。

この監督の代表作には映画 『自殺サークル』があるという。・・・これまたスゴそうだが、エネルギーを蓄えた上で、覚悟を決めた上で、いつか見てみようと思う。・・・ただ、かなりハマリそうだから気をつけないと(笑)。

DVD発売中

●関連記事・・・乳癌で療養中の宮崎ますみさんを応援します。
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コメント

この記事へのコメント

こんなドロドロしたの、大好きですね~(笑)
宮崎ますみさんが映画で復帰というニュースが出たとき、
「この映画観たい」と思いましたもん。
私と年が同じなんですよね。
出産もされてるママさんですし。
『ビーバップハイスクール』に不良役で出てて、
その頃から、宮崎さんのかっこよさがとても好きでした。
何をもって、この役を演ろうと思ったのか、
興味がありますね~。
またまたうちの田舎じゃ、映画館で観るのは
期待できないかも。。。(泣)

●kajukajuさん

昼メロなんて目じゃないくらいのドロドロ振りですから、もし今後見るときには
体調のいい時にしてくださいね~。
実は僕も、これを見た後はとても疲れてその後の予定に支障を来しました(笑)。
宮崎ますみさんはきっと、好奇心が旺盛で実験精神に溢れた人なんだと思います。
彼女がこの映画で魅せてくれた人間の愚かさとか残酷さとか、醜さとか・・・
でも、だからこそ見えてくる妙な色気、美しさはスゴイと思います。
女優だったら、こういう作品に出たいのは当然でしょう。
(「清純派」で売っている人には無理でしょうが。)

ドロドロが好きなので、是非、見たいのですが、一人では席の回りが気になってしまうのです。(歓迎しないおじさんがやって来る事にです。)人間は表面だけの顔と、隠された顔があるので、何が清純なのかは解りません。落ちて行くだけ、落ちて行く姿は、きっと感動ものだと思いますが、余り若いと、その感動の意味が解らないでしょうね!
女性は、理屈ではなくて、体験から学ぶ人が多いと思うのです。一山越えて、谷越えると、やっと見えてくる物が宮崎さんにも在るのだと思うのです。
熟女というのは、そういう意味も含んでいますね。

近親相姦、来ましたねー。これ日本で見ておけばよかったなあ。自殺サークル、出た時に観ました。結構内容覚えてます。観てよかったけども、この新しいやつのほうが私好きそう。でも一般的には自殺サークル、受け入れられないと思う。社会のことを考えたりするのにはグロくてもこの映画はみがいがあったきがする。

●seaさん

宮崎ますみさんも、いろんな経験を積んだことで
これからどんな活躍を見せてくれるのか楽しみですね。

●flowfreeさん。

お~、「自殺サークル」見たのですか。
出てる役者さんも面白そうだし、とても興味があります。
だいぶヒットして評価された作品ではあるようですね。

奥の深いテーマね

 ちゃーっす。

 宮崎さん、目鼻立ちがはっきりした「正統派」(基準は微妙やけど)美女。
 メヂカラ美女。
 モロ・タイプっす(^^)
 そこにいるだけでオーラが出る女優さん。
 そんな方が奥の深い作品に出演。
 アクティブでラディカルですな・・・。
 オヤジ役の俳優さんにも注目。
 現実の人間ってドロドロしてますしね・・・。みんな。

●大統領

宮崎さんのメヂカラはすごい!
そして僕は、メヂカラのある女性が大好き!(笑)。
しかも宮崎さんは声も色っぽくてステキ。
基本的に現実感を感じさせないルックスの彼女だからこそ
血みどろで凄惨な場面でも何故か「美しく」成立してしまうものすごさ。
しかも娘にセックスを見られてもl恍惚としていられる母親を演じられる人なんて
滅多にいません(笑)。
それに対してオヤジ役の俳優さんは、かなり現実感たっぷりの
好色オヤジ剥き出しの人でした。
ああ・・・この映画、映画館の暗闇に潜んでまた見たい~。

TBさせてもらいます。

少し時期はずれですがTBさせてもらいますね。
宮崎ますみは初めて見たんですが、すごい存在感でした。ここまで体張るとは。
小学生の格好してるのが一番エロいと思います(笑

●murkhaさん。

あ、そういえば小学生の格好してランドセルしょって登校する場面ありましたね。
教室に座って小学生に完全になりきって。・・・かなりエロかった(笑)。
この映画、表面的には徹底的にクレイジーですが
人間の内面描写としてはすごく誠実なものだったように思います。

ありがとう

叩かれまくりのこの映画も、あなたのような人がいるから、作る甲斐がある。

●園子温さん。

本人・・・だと信じて(笑)。

この映画が叩かれまくりだなんて知りませんでしたが
それは気にしなくていいと思います。
日本を席捲している「テレビ」の影響による軽薄さだとか、
表面だけを美しく繕う「無菌空間化」がますます進んでいる時代にあって
この映画が描いた世界観は、時代に逆行しているからです。

一皮剥けば肉が見え、血が流れるのが人間の本質。
それは太古の昔から変わらない。これから先も変わりようがない。
今の社会を病んだものにしている一番の元凶は、
そうした人間の本質をますます社会の表面から覆い隠して
「無菌空間化」しているからだと思います。
芸術はこういう時代にこそ存在意義がある。
僕はこの映画を見たことで衝撃を受けたし、記憶に強烈に焼きついてます。
それはきっと、この映画が強烈な毒を放っていたからだと思います。

「叩かれる」ということはむしろ、芸術としては健全なものを作ったのだということ。
今後も時代に抗って、本物の芸術作品を生み出し続けてください。
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