フツーに生きてるGAYの日常

やわらかくありたいなぁ。

2008-10
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ロン・ハワード「シンデレラマン」●MOVIEレビュー

ハリウッド映画への食わず嫌いを反省

あまり良くないことだが、僕はつい「ハリウッドの大資本が作った映画」というだけで食わず嫌いをしてしまう傾向がある。しかしこの映画には驚かされた。すごく良かったからだ。(1/13まで上映中)(☆公式サイト)

嬉しい点としては、映像表現やBGMが適度に抑制されていること。
だから暑苦しくて押し付けがましい、あの「ザ・ハリウッド」的なクドい体臭が大嫌いな僕でも、わりと取っ付きやすいので嫌悪感を持たずに済んだ。
そしてなにより主人公がいわゆる派手派手しい「アメリカン・ドリーム」の体現者としてのヒーローではなく、ヒーローではあるのだけれど「ささやかに生きること」を選択した男であるのがいい。

きっと主演のラッセル・クロウの演技力がとても素晴らしいのだと思う。生活感があって泥臭いのだけれど凛とした、人物としての確固たる「芯」を持つ主人公を丁寧に演じきっている。
実は・・・恥ずかしながら僕は、今までこの俳優のことを知らなかった(←ホントに。全然見てないし興味がないから情報としても自分の中に入って来ないんです。極端な性格なので。笑)。そのことを素直に反省し、せめてこの人の出演作位は見直してみてもいいのかもしれないと思った。

直言派、「ラッセル・クロウ」という個性

監督のロン・ハワードは、主演のラッセル・クロウのことをインタビューでこう語っている。
(パンフレットより)
「ラッセルは魅力的な意味で矛盾を抱えた男だ。彼は頭に浮かんだことは何でも素直に口にする。そのせいでときにはイヤな思いをさせられることもある。だが、その一方で彼は、いい仕事をするために、それこそ献身的に努力する。あくまで観客に喜んでもらうため、ストーリーをきちんと語るためだ。」
当のラッセル本人も自分のそうした面を認めている。
「僕はキャラクターを構築していく過程をとても楽しんでいるんだよ。ただし、そのキャラクターや映画は、僕自身が信じられるものに限られる。ただの仕事だとは割り切ったりしないんだ。そういう風だから、ハリウッドの人たちからは厄介なヤツと思われているようだけどね(笑)。でも、だからこそ僕は朝の4時に起きて、1日14時間働くことが出来る。自分の信念がないと、そんなことは出来ないと思うよ。映画は自分のボディとソウルを捧げなきゃ出来ない仕事だと僕は考えているからね。この業界で働いている人たちで、大した映画じゃないと思っているのに、朝の4時に起きなきゃいけない人たちを哀れに思うよ。彼らがなぜ、そんなことが出来るのか、僕にはわからない。」
・・・ズバズバ言ってますね〜(笑)。
こういう、自分の意見をはっきり言う「直言タイプの人」というのは、表現者として魂がある何よりの証拠であり、それは演技にも如実に反映される。ただし八方美人ではないから、周囲の人にとっては厄介な「トラブル・メーカー」なのかもしれないが(笑)。いいなぁ、こういう人。

大恐慌時代、「食うために」ボクシングで稼いだ男の物語

1929年10月24日の「ブラック・サーズデー」いわゆる金融大恐慌は、想像に勝る悲惨な状況をアメリカの市井の人々にもたらした。当時はなんと4人に1人が失業者となり貧しい生活を強いられたという。映画ではそんな時代の状況を丁寧にしっかりと描き出していて、重要な見所になっている。

物語としての冒頭では、主人公がボクサーとして順調に成長する姿が描かれる。しかし怪我を負ったことから試合に出られなくなり、稼げなくなってしまう。妻子を抱え、生活に困った彼は、生きるために大恐慌の荒波の中、港湾労働者として日銭を稼ぐようになる。しかしなかなか思うように稼げないので、貧しさは募るばかり。
冬なのに自宅の電気が止められて子どもたちが病気になる。妻とも喧嘩する。精神的にも追い詰められ、ついに彼は「男」としてのプライドを捨てて、かつての仲間に物乞いをしに出かける。政府からの生活援助も甘んじて受ける。映画はそんな彼の「格好悪いけれども生きることに必死な姿」を真摯に描き出す。背に腹は代えられなくなった時の人間の強さを真っ直ぐに見つめる。

街には、彼のように目をギラギラさせて仕事を求める男たちが溢れかえっている。資本主義経済の破綻により、これほどまで急激に当時のアメリカの一般市民は追い詰められたのだ。その生活感覚の一端が垣間見られるだけでも価値ある映像体験である。
そして、この貧しさからの脱却願望が、第二次大戦やその後へと繋がるアメリカ市民の精神的背景にもなっている。

必要以上に感情を煽り立てないボクシング場面

底辺でギリギリの生活に明け暮れていたある日のこと。主人公にボクサーとしての復帰のチャンスが訪れる。彼のことをボクサーとして愛しているトレーナーの献身的な支えにより、復帰戦に出場できることになったのだ。
しかし対戦相手は、凶暴な殺人ボクサー。反則技を繰り出し、リング上で相手を殺したこともある怖ろしい人間。しかし主人公は「生活費を稼ぐために」リングで戦うことを選ぶ。名声のためではなく、生きるためにリングに上がるのだ。

試合での死闘も描かれるのだが、ボクシング映画にありがちなセンセーショナルな騒々しさはない。必要以上に観客の感情を煽り立てないから、シンプルな「人間同士のぶつかり合い」として眺めることが出来る。なにより俳優ラッセル・クロウがとてもリアルに役を生きているから、余計な小細工は必要なかったのだろう。
この映画は、チャンピオンになった後「無名に生きる」ことを選択した実在の人物の物語だ。権威や金や名声に溺れるのではなく、自分の人生を自分の価値観で選んだ真摯な男の物語。

いい役者と、「描かれるべき物語」さえあれば、制作者たち一人一人の思いが結集し、丁寧で心のこもった映画が出来る。そんなすがすがしさを感じさせてくれる、好感の持てる「ハリウッド映画」だった。FC2 同性愛Blog Ranking

コメント

この記事へのコメント

あ、面白そう。
しかもレネーちゃん出てるんだ。見るべし。
「生きるために必死になる」人を描いた映画好きなんです。
自分の人生についても色々問題提起してくれることがあるから。

akaboshiさんには、色んなジャンルの映画をみて、レヴューを書いて頂きたいと常々思っています。今年も良い作品がたくさんやってくるので、映画の良さに負けないレヴュー期待してしまいますね!よろしく♪
ラッセル・クロウには、アボリジニの血が入っているので、何となく素朴さがあるのかな〜と思う事もあります。

● kazuccine さん、
レネー・ゼルウィガーさんのことも、この映画ではじめて知りましたが
彼女も素朴な感じのいい女優さんで、すごくよかった。

●seaさん。
ラッセル・クロウさんは、人に威圧感を与えないルックスが
いいと思います。

ラッセル・クロウは94年のオーストラリア映画「The Sum of Us」でゲイの青年役で出ていたのを見たのが初めてだったのですけど、すごく引き付ける演技をする役者だったのでその後大きくなるだろうなと思ってました。この映画も非常にいいですよ。機会があったら見て下さい。

●nicoさん

オーストラリア映画「The Sum of Us」は、日本では公開されていないのですかね?
あ〜、すごく見てみたい。
実はラッセル・クロウ、けっこうタイプだったりして(笑)。

生きる

ってこんなにもドラマなんですね。必死に生きるって、真摯に生きるって、何に対して必死に生きるのか真摯に生きるのか、っていう質問状を突きつけられたような思いです。決して綺麗事で答えられない。簡単に答えられないから、見えないけど美しい何かが吹いてるような気がした映画。

●立さん。

何に対して必死に生きるのか。

多くの人にとっては「家族」だったり「子ども」だったりするのでしょう。
「守りたいもの」のためだったりするのでしょう。
この映画は、そんな人間のピュアな精神を描いていました。

ただ、ピュアな精神の危険性にも目を向けておく必要がある。
まかり間違えば他者を攻撃する理由(大義名分)にもなりますから。
ピュアって実は危険。

この映画も、実はそういう危険性を孕んでいる。
相手を倒すことで自分の生活を成り立たせた男の姿を描いているわけですから。
倒された側にも、その後の人生はある。しかしそのことを観客には想像させず
「勧善懲悪」のパターンどおり主人公の「ピュアさ」を賞揚することで映画は終わる。
・・・やはりこれは「ハリウッド映画」ですね〜。今、振り返ってみると(笑)。

この映画で描かれたボクサーが「ヒーロー」とされた時代のアメリカ社会はたしかに
「貧しかった」けれど、「貧しさ」が克服された後、その反動でなにを行うようになったか。
「貧しさに戻りたくない」という恐怖心やハングリー精神が
その後のアメリカという国の帝国化を推進したエネルギーになったことも事実。
「あの頃のピュアさを思い出そう」とする懐古趣味って、実は無邪気で危険。

この映画が作られたり流行った背景に、そうした潜在意識があるのだとしたら・・・う〜ん(笑)。
さらに逆に言うと、わざわざこういう映画が作られたということは、
旧来のアメリカ的価値観が行き詰まってきている危機感の高まりを表しているのかも
しれませんね。
「古きよき時代を思い出そう」という主張の裏には、
今がそうではないということの「焦り」があるのだと思いますから。
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