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2019-11
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ヴィム・ヴェンダース「ランド・オブ・プレンティ」●MOVIEレビュー①

「9・11」というトラウマを抱えて

「ベルリン・天使の詩」「パリ、テキサス」「さすらい」など、ヴィム・ヴェンダース監督のフィルモグラフィーには、ため息が出るほどの名作が多い。社会や同時代と正面から向き合い、常に誠実で刺激的な問題作を発表してきた数少ない「映画作家」の一人だろう。そんな彼がついに「9・11」と向き合った作品を発表した。

現在公開中の「ランド・オブ・プレンティ」は、なんと偶然生まれた作品だという。
2月に日本公開される次回作「アメリカ、家族のいる風景」の撮影が延期になり、空いた期間で突然思い付いて16日間で撮影してしまったらしい。なにかにとり付かれるかのように出来上がったこの映画は、そのエネルギーと切実な思いが詰まった、まさに「今、本当に必要な映画」となった。

世界はまだ「9・11」を克服できていない。その後起こった様々な出来事にも、どう対処していいのかわからない。そんなどうしようもない現代の苦悩に対して、映画作家として何が発言できるのか。ヴィム・ヴェンダースらしい誠実な問いかけが、この作品にはちゃんと詰まっている。
●公開情報:
現在シネカノン有楽町で1/13(金)までモーニング公開中(連日10:45~)
1/21~27、目黒シネマで一週間限定公開(12:30~ / 17:15~ )

マイケル・ムーアへの静かな批判

「9・11」以後、事件を題材に様々な映画が作られては来た。中でも特に有名なのがマイケル・ムーア監督の「華氏911」だろう。アメリカ大統領選を前に公開され、カンヌ映画祭のパルムドールを受賞し、世界中にセンセーショナルな話題を振りまいた。
しかし映画としては何という幼稚な表現だっただろう。ブッシュ大統領を完全に「悪魔」視し、告発することしかしない。ドキュメンタリーの手法を借りてはいるが、作者の政治的な主張に満ちた「戦闘的プロパガンダ映画」としか言えない代物だった。

僕は、あの映画は逆にブッシュ支持者を刺激して、その意思を強固なものにしてしまったのではないかとさえ思う。確かに描かれている内容や告発されるべき大統領の姿は「知っておくべき戦慄すべき事実」ではあるが、あそこまであからさまに戦闘姿勢を前面に押し出してしまうと、描かれた事実が感情的に誇大化されたものなのではないかと思われてしまうからだ。
さらに言えば、戦闘的な表現というものは観客にカタルシスを与えてしまう危険を内包している。感覚的に「やっぱりそうか」と思わせるだけで、観客の思考を「終わらせてしまう」のだ。
「華氏911」を観た後、まるでエンターテインメント娯楽大作を見た後と同じような、妙な爽快さを感じて背筋が寒くなってしまったのは、僕だけではないだろう。

戦いの姿勢は、新たな戦いしか呼び起こさない

あれは「プロパガンダ映画」そのものだ。「プロパガンダ映画」とは、映画と同じ政治的主張を受け入れる人たちの意見を補強することには長けているが、反対意見を持っている人々の心には決して響かない。それどころか反発心を増長させ、意志を強固にさせてしまうだけなのである。
「戦い」の姿勢をとり続ける限り、そこからは新たな「戦い」しか生まれない。
「戦い」というのは、思考を単純化させなければ出来ない行為である。
そもそも「賛成」「反対」という態度表明自体、思考の単純化の産物であるのだから。そのことに無自覚な者に、芸術表現をする資格はない。自らの思考を固めてしまうことへの畏れがない者に、映画を作る資格はない。

映画というものは油断をすると簡単に「戦い」の論理に巻き込まれてしまう危険な装置だ。マイケル・ムーアはあまりにも無邪気に映画を「道具」にしてしまった。

映画はもっと大人であるべきだ。
ヴィム・ヴェンダースはこの映画で、そう言っているように思う。
複雑な物事から逃げずに、先行きの見えない不安を受け入れながら生きること。自らの不安によって他者を必要以上に悪魔視し、「敵」を勝手に作り出してしまう愚かな精神構造から解放されること。そんな当たり前の状態に、世界を戻さなければならない。

この「ささやかな物語」は、静かな語り口だからこそ、ゆっくり心に染み渡って来る。
世界が子どもになろうとしている今だからこそ、映画は大人であるべきだ。FC2 同性愛Blog Ranking
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コメント

この記事へのコメント

マイケル・ムーア監督の言いたい事が何であるかという事は解るのですが、心の中にいつまでも、くすぶり続ける火となる物は、生まれませんね!『興奮』はしても、感動がないのは、一つの暴力のようです。といっても、マイケル監督を嫌いではなくて、表現方法の違いだと思います。
『ベルリン・天使の詩』『パリ・テキサス』どちらも、いつまでも心に残る作品で、観終わった後、立ちたくなくなる位の感動を覚えましたが、それが
ヴェンダース監督の魅力なので、ぜひ、この作品を見てみます。

●seaさん。
アメリカ映画やアメリカのテレビドキュメンタリーで僕が大嫌いな特徴は、
観客を「興奮させよう」とする押し付けがましさです。

あたしも、あの「華氏911」には違和感を覚えた人間の一人です。
映画にしても、たとえば演劇でも絵画でも、芸術というものは
見る側の思考を刺激し、精神の旅へといざなうことが出来るものであるべきだと思うんですね。
そしてそれこそがメッセージではないだろうか、と。
大体世界中の人はブッシュ嫌いな人多いんだから、いまさらこんなもん……とも思いました。
「ランド・オブ・プレンティ」、観てみます。でも田舎だから公開してないんだよなあ~。またDVDかな…。

●kazuccineさん

「見る側の思考を刺激し、精神の旅へといざなうこと」
・・・そうですよね。
自分のアタマを使って考えたり、自分の感覚や心で感じたことでないと
本当に深い部分には伝わらないですよね。
ぜひDVDで見てみてください。(発売はまだ先かな?)

「ランド・オブ・プレンティ」、観てきました。深く考えさせられる映画でした。今も考えています。
「華氏911」は、ブッシュ云々の部分は確かにひどかったと思いますが、戦争に行って人を殺すこと、そして戦争に家族を送り出すとはどういうことなのか、を極めてリアルに見せつけたところを、私は評価しています。
ムーア監督もヴェンダース監督も、表現は全く異なりますが、アメリカという国に対して深い愛情を持っていることを、興味深く思っています。

●naoccoさん

見に行かれたのですね、役立って嬉しいです。
そうですね。両者ともにアメリカという国を愛しているのでしょうが、違いはきっと
「映画」を芸術表現として捉えているかどうかの違いなのだと思います。
芸術というものの本当の力というものを理解しているかどうか。信じているかどうか。
僕は芸術とは、戦いの道具にするべきものではないと思っています。
人の精神の奥深くに染み渡るものだからこそ、簡単に武器になりやすい。
だからこそ他者を信じて、押し付けがましいプロパガンダは避けるべきだと考えています。
ただ、どうしてもセンセーショナルでわかりやすい方が人々の関心を引くし、
ヒットしてしまうという現実があるんですけどね。
その現実は無視できない事実だと思います。

かなり前のエントリに・・・失礼します

こんばんは。お久しぶりでございます。この映画近くの映画館で上映されてました。
どっかでみたことがある・・・と思っていたらこちらのブログでしたー!そんなこと考えてたら上映見逃しちゃった。ので、DVDを借りて観てみたいと思いました。『アメリカ、家族のいる風景』も続けてみられたらいいな・・・。この場をお借りして一言・・・いつも変なコメントばかりでごめんなさい。今後もおもしろいブログ楽しみにしております!!


今、調べたら『アメリカ、・・・』の上映は終ってましたw
(DVDになってるのかしら・・・?(ノ_・。)くすんです。)

●Renさん。

やっべ~、風邪引いてるうちに「アメリカ、家族のいる風景」終わっちゃったんだ!
でも今週なら「吉祥寺バウスシアター」でやってるみたいですよ。

「ランド・オブ・プレンティ」は、「ブロークバック・マウンテン」でヒース・レジャーの奥さんを演じて
実生活でも結婚したミシェル・ウィリアムズ主演です。ぜひ観てみてください。


ホントですね。でもぜんぜん印象違いますね。
なんつーか、今もっと太っちまってる・・・。時間って残酷ですの~
ってたった二年間なのにねぇ・・・。

上映映画館情報ど~も!

●Renさん。

たしかに、この映画と「ブロークバックマウンテン」の彼女とはイメージが
相当違いますね。この頃はまるで「少女」という感じだったのですが。
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