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フツーに生きてるGAYの日常

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2023-10
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木下恵介を辿る旅003●いったい何人ゲイが出てるんだ?と思ってしまったほど様々に曖昧な『惜春鳥』

 「日本メジャー映画初のゲイ・フィルム」と言われる木下恵介監督作品『惜春鳥』観ました。正直、「登場人物の一人がなんとなくゲイっぽい」という程度なのかと思っていたら、もう、と~んでもないっ!

 先日『陸軍』の紹介でも書きましたが、この監督はやっぱりダブルミーニングの天才。いちばん描き出したいものを表面上はボカしておきながら、実は映像や歌、物語構成など、あらん限りの演出技法を巧みに駆使して本当に描きたいことを描き出しているのです。

 『陸軍』では検閲を擦り抜けて戦時中にも関わらず平和への希求を映像にしのばせ、『惜春鳥』では1959年という『薔薇族』すら発行されてない時代に、「わかる人にはわかる」仕掛けを散りばめながら、解釈の多義性を担保しつつ、紛れもなく「同性愛」を描き出していました。

 これは世界の同性愛描写映画史の中でも、かなり早い時期(1959年)に行なわれていた奇跡的な事実として、ちゃんと位置付けられるべきでしょう。

 会津に育った5人の男たちが主人公。そのうちの一人に、片足が不自由な青年(山本豊三)が居るのですが、都会から挫折して帰ってきた青年(川津祐介)に「友情を超えた気もち」を抱いていることが、ある確信犯的な台詞で示されます。

 また、映画の冒頭の電車内で話す津川雅彦と、彼が慕う叔父の佐田啓二は、やたらスキンシップが濃厚でドキッとさせられたりもします。

 さらには、浴槽での若い男たちの半裸体の多用などは、青い浴槽と若い男の裸の色のコントラストが、洋画のゲイ映画によく出てくる「プールを全裸で泳ぐ男のイメージ映像」を連想させます。ほんと、あれはゲイならではの官能表現。この映画が撮影されたのは1959年ですから、海外で名だたるゲイ映画が創られる前のこと。そういう面でも先駆的です。

 さらに興味深いのは、この映画で「ゲイ的」な人物として描かれているのは一人だけではないということです。監督お得意の多義的で曖昧な描き方で映画は終わるため、はっきりと「ゲイ的」に描かれた若者以外にも複数名の若者が、解釈によっては「ゲイ的」なのかもしれないことに、気付く人は気付くのです!(笑)

 いったい、何人のゲイが描かれてたんだ?この映画・・・と、今、僕の頭の中は答えの決して出ない疑問でいっぱいです。そういう意味で言えばこの映画。セクシュアリティというものの捉え難さや複雑さ、アイデンティティというものの捉え難さや複雑さなど、現代的に直面している問題をも大きく包み込んで描き出しているのかもしれない・・・。

 なんて深いんだ、おそるべし木下恵介。あなたこそが「巨匠」の名にふさわしい。FC2 同性愛 Blog Ranking





NEWS!
☆『惜春鳥』は3月17日(水)に池袋の新文芸坐で、木下惠介監督『この天の虹』とともに3回上映されます。13:45~川津佑介さんのトークショーもあります。→新文芸坐スケジュール
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コメント

この記事へのコメント

偶然ここに来ました。そこで木下恵介さんと言う懐かしい名前を見つけ、書き込みしました。昔「木下恵介アワー」と言うドラマシリーズをずっとやっていて(多分TBS系だったと思います)、幼い私はどのドラマも大好きで、とても楽しみにしていました。たぶん全体に流れる品の良さに人としての憧れがあったのかもしれません。後年、巨匠だったことを知り、あんな良質なドラマをいつも見られた事はよい時代だったのかな、と思います。更新がんばって下さいね。では。
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