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フツーに生きてるGAYの日常

やわらかくありたいなぁ。

2023-05
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薔薇族は生きている068●香山リカさん×本間真夫さんトーク ~内藤ルネさんについて



 10月28日(水)20時から、原宿のマヌエラカフェで開催されたトークショー「香山リカ×本間真夫さんトークショー」に行ってきました。観客は35人ほどで満員になる大きさのスペース。ギャラリー兼喫茶もできる店で「内藤ルネお言葉展」が開催されているのに合わせたトークショーです。

 本間真夫さんと言えば、『薔薇族』の初期から中期を引っ張った伝説の編集者=藤田竜氏のこと。この貴重な機会、見逃してはなるまいと情報を知り次第すぐ申し込み、楽しみにして出かけました。

 ゲイ雑誌の編集の人とか、おネエタレントの方とか、伊藤文学さんのトークなどでよく見かける方とか、観客席のオーラが「濃い」感じの中、本間さんが登場。

 杖をついているけれども背筋はピーンと伸び、笑顔がよく似合う柔らかい表情と語り口で、内藤ルネさんについての思い出話を語ってくださいました。本間さんのサービス精神旺盛な話しぶりに、客席からはしょっちゅう笑い声が上がっていました。僕はいちばん前の席に座ったのですが、手を伸ばせばすぐに触れてしまう距離に2人が居るという現実に、ちょっとクラクラしながらもトークを聴きました。

 本間さんと内藤ルネさんは、本間さんが18歳の時に出会って以来、52年間も一緒に過ごしてきた、要するに(今の言葉で言うならば)「同性パートナー」であり、事実上の運命共同体だったのです。90年代リブ以降のゲイ言論では「薔薇族世代」の人たちの生き方や、存在のあり方の評価を軽視する風潮もあったようですが、そろそろそういう偏ったフィルターのかかった歴史解釈からは解放されるべきではないかと思います。人間の営みとは、ある時代を境に「スパッと」区切れたり分類出来たりできるような単純なものではないはずです。

 2人が長く一緒に過ごして来られた秘訣として本間さんが挙げていた理由で印象的だったのは、「色んな事に関する感覚が一緒だった」ということです。そして、「出会うべくして出会った」という風にもおっしゃっていました。照れずに真顔でそれが言えるって、凄いことだよなぁと思います。

 ただ、どちらかというと本間さんはセンスとしてはオーソドックスなものに惹かれるけども、ルネさんは「変わったモノ」の方に走る傾向があり、「そういう違いはあったけれども」と注釈を付けていましたが、もっと深いところでは「似ていた」ようです。たぶん、一緒に居ることが心地よかったんじゃないかと感じられました。そうでなければ52年間も、同じ人との生活が続くわけがありません。

 昔気質の人らしく、基本的にはストレートな物言いはあまりしませんでしたし、わざと毒を吐きながらのトークではありましたが、言葉や表情の端々から、ルネさんとの関係はこの人にとって「人生そのもの」だったんだろうなぁということが伝わってきました。

 セクシュアルな関係は別にしても、一緒に居ることが「意識されないくらいに当たり前のこと」だと感じられるような関係だったんだろうなあと。かつて『薔薇族』の編集者の時代は、かなり怖い人だったという伝説がある本間さんですが、現在はやさしい瞳で柔らかな口調で、ルネさんのことを語っているんです。その表情から読み取れる「積み重ねてきた人生の深み」は、半端じゃないほど多義的で複雑な色合いを見せていました。

 ゲイ絡みの話はなかなか出て来なかったのですが、香山リカさんがふと、ルネさんが夜中に「伯爵の絵」を描くことを好んでいたという方面に話を振った時、「それはつまり少年を裸にしてどうこうするという絵なんですけどもね」と本間さんが応じたことで、広がって行きました。

 なんでも、2002年に「内藤ルネ再ブーム」を巻き起こした弥生美術館での展示では、かつて薔薇族の表紙絵を描いていたことや、数々の「男の絵」を描いていたことなどには一切触れず、「かわいい少女絵のパイオニア」という方向性で徹底していたそうなのですが。それを見に来た記者が書いた新聞評で「潔くない」と指摘されたことで考えを改めたそうで、同じ美術館で2回目に展覧会が開かれた時には、「ゲイ雑誌の表紙絵を手掛けた画家」としての側面にもスポットを当てた展示が行われたのだそうです。

 現在においても「少女絵」の分野での「内藤ルネ」という名前は一人歩きを続けており、各地の百貨店から展覧会の引き合いがものすごく、若い女性を中心にブームが続いているようですが、ともするとそこで「かわいい」ルネさんに触れている人たちは、ルネさんのもう一つの顔を知らないのかもしれません。

 ファンシー雑貨として消費される方面ばかりが注目されているのでは、作家としてのルネさんの大事な側面が置き去りにされてしまいます。そういう歴史は、意識的に「気付いた者たち」が語り続けないと、消えて行ってしまうものなのかもしれないと感じました。

 ともかく、これまで書物の中や、昔の『薔薇族』誌面での「藤田竜」という架空の存在としてしか知らなかった本間さんの実像が、こうして見られたことは心躍る体験でした。僕はルネさんにはかろうじて、亡くなる半年くらい前に上野の松坂屋で開催されていた「内藤ルネ展」を見に行った時に著書にサインを描いてもらった際に喋ることが出来たんですね。「人」って、やっぱり直接会ってみないとわからない雰囲気とか、存在の独自性とか、発しているオーラとかがありますよね。今日、「肌」で感じたこの感覚は、大切に記憶しておこうと思います。

 本間さんは伊豆・修善寺での生活は既に切り上げ、現在は東京に住んでいるそうです。

『内藤ルネ自伝 すべてを失くして―転落のあとに』



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