たかがテレビ073●ドラマとドキュメンタリーの相乗効果~WOWOW『ママは昔パパだった』 『だから私は後悔しない』

ドキュメンタリー『だから私は後悔しない~性同一性障害との闘い~』の方では、性同一性障害特例法の「子なし要件」を撤廃するために前面に立って活動したMtFトランスジェンダーの水野淳子さんが主人公として描かれていたのですが、途中、すごく印象的な場面があったのです。
テニスに熱中している息子を応援しに出かけ、観客席から声援を送った後、誰もいなくなった観客席でインタビューが行われ、まだ戸籍を変えることができなかった時代の話をしていたのですが・・・。
次男が小学校で少年野球をやっていた当時、いじめにあったようなのです。そのことを語っていた水野さんは言葉を詰まらせ涙を流し、結局、多くをカメラの前では語りませんでした。インタビュアーはそれ以上追及しませんでしたし、カメラも、泣いている彼女をそっと見つめるだけ。しばらく無言のまま、水野さんが当時を思い出しながら、静かに涙を流している姿が、そのまま映し出されていました。
視聴者として見ている感覚では、「なぜ彼女が泣いているのか」の理由を具体的に知りたいという欲求も湧くわけですが…結局、どんな風にいじめられたのか、どんな辛い目にあったのかの詳細が、番組で説明されることは無かったのです。正直、消化不良にもなったわけですが、「一体どうしてなんだろう」という引っかかりが胸に残ることにもなりました。語られなかったからこそ、逆に強く印象に残ったのです。
その答えは、ドラマによって象徴的に描かれました。
夜10時から放送されたドラマ『ママは昔パパだった』では、MtFトランスジェンダーである主人公(戸田恵子)の長男が少年野球をやっており、応援に行ったところ、周囲からの嫌がらせが起きる場面が描かれます。主人公が戸籍上は男性であることが情報として漏れ、噂が広がっており、チームメイトの母親達から「あなた、性倒錯者なんでしょ」と面と向かって言われます。好奇の視線にさらされ、野球の練習は急きょ中止されて皆は帰ってしまうのです。
つまり、ドキュメンタリーにおいて、水野さんの「無言の涙」によって暗示された過去の出来事が具体的に描かれているかのような展開。「そうか・・・これは語れないよなぁ。辛くて生々しくて、まだ言葉には出来ないんだろうなぁ・・・」と、はじめて気付くことができたのです。
そして、ドラマを観ながら何度も「水野さんは、どんな思いでこれを見ているんだろう。号泣しているんじゃなかろうか」と、現実世界の彼女の思いを想像しました。つまり、ドキュメンタリーを観たことによってドラマが絵空事ではなく、より現実味を帯びて胸に迫ってきたのです。
主題歌■松任谷由実『人魚姫の夢』
■『そしてもう一度夢見るだろう』
ドキュメンタリーの方では、涙が落ち着いた水野さんが、こんな言葉を言っていました。「私が自分のことを言われることはどうでもいいけれども、息子の人生を、私のせいで変えてしまったことが何よりも辛い」。
ドラマを観終わって、その言葉がまず思い出されました。WOWOWがこの夏、社運を賭けて取り組んでいるこのプロジェクト、第一話放送の時点では大成功なんじゃないでしょうか。ドラマは次回から有料放送になるわけですが、続きが観たくて仕方がないですもん。
★ドラマは8/29(土)午後2:40にも、無料(ノン・スクランブル)放送が行われます。→FC2 同性愛 Blog Ranking
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