ユン・スー「分断の街で」●MOVIEレビュー

深刻な題材を描いているはずなのに、全体的にカラフルで明るく逞しい生命力にあふれた映像で満ちている。
事実としては「分断」を描いているのだが、映像が見事にそれを裏切り、言葉ではない映像ならではの表現で「連帯」とか「つながり」を浮かび上がらせているのだ。ドキュメンタリー映画というものが持つ「真の力」を感じることのできる、文句なしの名作だ。
●第18回東京国際レズビアン&ゲイ映画祭にて上映。
→作品紹介ページ・・・7月19日(日)にも上映あり。
先日、関西クィア映画祭の東京上映会で観ることができた「0メートルの隔たり」と同じく、イスラエルとパレスチナの境界線に生きるLGBTたちの葛藤を描いた作品。
なんと、同じ登場人物も出てきた。パレスチナ側に住むレズビアンである彼女は、『0メートルの隔たり』の時とは別の人物と付き合っているようなのだが、なんと、またしてもそのパートナーがイスラエル側のレズビアンなのだ。彼女はそういう状況に自らを追い込むことに、もしかしたら使命のようなものを感じているのかもしれない。

『0メートルの隔たり』で語っていた同じ気持ちを再び同じようにカメラに向かって語る彼女を見ていたら、生粋の活動家に独特の「したたかさ」を感じたのだが・・・それは「うがった見方」すぎるのだろうか?。
映画にはイスラエルで唯一のゲイ・バーも登場した。ゲイだけではなく様々なセクシュアル・マイノリティが集い、ドラァグ・クイーンによるショーなどのクラブイベントが開催されている。まるで映画『MILK』で描かれた、70年代アメリカのLGBTクラブカルチャー黎明期の光景を見ているかのようだ。
しかしその光景も、すでに過去形になってしまった。映画では、現地で唯一の貴重なそのゲイバーが、閉鎖される光景も映し出す。どうやら政治的な介入があってのことらしい。現地の状況は一進一退。世界中のセクシュアル・マイノリティに共通の課題である「自己受容のために交流する場所づくり」を希求する意志と行動は、イスラエルとパレスチナ情勢という大きな政治的事情を前にして、ただただ翻弄されるばかりなのだ。
抗いようのない大きな力を前にしながらも、確実に着実に「つながり」を築き上げようともがいている現地のセクシュアル・マイノリティたち。深刻な状況であればあるほど、人は真に強くなるのだということを、映像が雄弁に語っていた。→FC2 同性愛 Blog Ranking
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