劇団フライングステージ「ジェラシー~夢の虜」●PLAYレビュー

川島芳子についての物語だったので、昨年末にテレビ朝日で放送された「川島芳子物語」を見ておいて良かったと思った。彼女の人生のあらすじは、あのドラマのおかげで頭に入っていたので今回の演劇、すごくとっつきやすかった。
昨年の「新・こころ」に続いて、最近劇団フライングステージは「文芸もの路線」をかっちりと丁寧に上演している。とても見ごたえがあって、良質な名作映画を見たあとのような満腹感。
テレビ朝日のドラマの数倍は、川島芳子が「人間」として想像できた。そして、常に「役割」を演じ続ける道に自分を追い込んでいった彼女の孤独や哀しみ。時に「素直な心」を垣間見せた時の「ちょっとした瞬間に感じられる温かみ」のようなものがしっかりと演じられていたので、人物像が立体的に浮かび上がってきた。
なんといっても、「あの川島芳子」に親しみを感じられたというのが凄い。高飛車で近寄り難そうなキャラクター造形なのにも関わらず、逆に親しみが湧く。それはきっと綺麗な面だけでは無く、泥臭かったり醜い部分まで丁寧に描かれているからこそ。真の意味での「親しみ」というのは、綺麗事では感じられないものなのだ。
関根信一氏が演じていた「マリー」という役柄は、川島芳子と2ヶ月間だけ親密に過ごすことになる宦官である。すなわち性転換をした、現代でいうところの「MtFトランスジェンダー」。おそらく想像上の人物なのだが、まるで歴史の物語世界の中に関根氏自らが飛び込んで行って体験しているかのような錯覚に陥った。
他にも、登場人物に「ゲイ」を忍び込ませていたりと、フライングステージらしい仕掛けも仕込まれていたが、全体としてはやはり、自らの生き方を様々に「演出」しながら生きざるを得なかった川島芳子の苛立ちの中から浮かび上がる「弱さと強さ」が儚げで、そこに「色気」のようなものを感じて魅入ってしまった。惚れそうだった。
近年の関根信一氏。劇作家としても演出家としても、すごく面白くなってきていて目が離せない。描き出された世界観が繊細で、なおかつ深くて。2時間以上があっという間に過ぎ行く劇世界が創造されていた。→FC2 同性愛 Blog Ranking
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