トーマス・ガスタフソン「シェイクスピアと僕の夢/Were the World Mine 』●MOVIEレビュー

めくるめくようなミュージカル場面もふんだんに出てくるが、不思議と「ミュージカルっぽい不自然さ/いやらしさ」をまったく感じさせない展開と、物語の奥行きの深さに驚いた。これは名作!
ゲイの高校生が主人公。学園中のアイドルである超イケメンのラグビー選手に恋しているのだが、その憧れの彼は女性と付き合っている。つまり、ノンケなのかもしれない。片思いに悶々とする日々。→第17回東京国際レズビアン&ゲイ映画祭で19日(Sat) 18:50~上映あり。人気作なので前売り購入はお早めに!→tickets info
授業でシェイクスピアの『真夏の夜の夢』を演じることになり、「妖精パック」の役を割り当てられた主人公。妖精パックと言えば目覚めた時に最初に見た人を好きになる媚薬を用いて、登場人物たちの「恋心」を混乱させるイタズラ者だ。稽古にいそしむ中、主人公は偶然、その媚薬の製造方法を知ってしまう。そしてもちろん、憧れの彼に使って、彼の恋心を自分に向けさせるのに成功する。
そればかりではない。主人公は町中の人々を「同性愛者」にしてしまおうと、手当たり次第に媚薬を使う。町中にゲイやレズビアンが溢れ帰り、ついには市長までもがゲイになったものだから、「同性婚」があっという間に解禁になる。有頂天になる主人公。
憧れの彼も、自分にメロメロになってくれて幸せな時を過ごす。しかし主人公は、やがて空しくなるのだ。「これは媚薬のチカラであって、本当に彼が自分を好きになってくれているわけでは無いのではないか」と。さらに気付くのは、周囲の「異性愛者」の幸せな生活をも、自分の満足のために破壊してしまったのではないかと。
人は「他力本願」では満たされない。

その魔法を「異性愛者を同性愛者にする」ことに使用するという物語設定自体、監督やプロデューサーがゲイであるからこそ持つ発想だろう。しかし、夢をただの夢物語だけでは終わらせず、他力本願(この場合は媚薬の魔力)で手に入れた幸せでは、人は決して本当の意味では満たされないのだというところまで描き出したところが、単なる「ゲイ・ライツ」のプロパガンダ映画に堕落せずに済み、物語に普遍性を与えている秘密だろう。
シェイクスピアには「出来なかったこと」を実現した作品!?
ひょっとしたらシェイクスピアが『真夏の夜の夢』で本当に描きたかったのは、ここまで根底から世の中の秩序をひっくり返してみる物語だったのかもしれない。そんなことまでも深読みさせてくれる映画だった。
シェイクスピアがあそこまで世界を「外から俯瞰した視点で冷徹に分析し、批評する」ことが出来たのは、やはり彼が同性愛者(あるいは両性愛者)であることから醸成された、世間の常識を根本から疑って見つめなおす「ひねくれた感性」によるものだったんだろうなぁということを、再認識した。
この映画、劇場ロードショー公開をぜひ実現してもらいたいと切に願う。→FC2同性愛 Blog Ranking
●You Tubeより~Were the World Mine - Sneak Peek 2
関連記事『シェイクスピアと僕の夢 / Were the World Mine 』
2008 / USA / 96min / Language: English
監督:トーマス・ガスタフソン
プロデューサー:コーリー・J・クルークバーグ
★第17回東京国際レズビアン&ゲイ映画祭で2回上映
7月11日(Fri) 18:15~ @新宿バルト9
7月19日(Sat) 18:50~ @スパイラルホール
●東京国際レズビアン&ゲイ映画祭02●「シェイクスピアと僕の夢/Were the World Mine」監督・プロデューサーTALK
●東京国際レズビアン&ゲイ映画祭01●オープニングは初の「新宿バルト9」で華やかに開催
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