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フツーに生きてるGAYの日常

やわらかくありたいなぁ。

2023-10
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橋口亮輔「ぐるりのこと。」●MOVIEレビュー

 蘇生体験。

 一度、まっさかさまに地の底まで落ち、人の世の闇や業を全て知り尽くし、疲れ果てたけれど、なおもあきらめず、ゆっくりと目の前にある雑草をつかみながら、一陣の光を目指して這い上がって蘇生したかのような。そんな映画体験だった。

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 とにかく細かい。登場人物の交わす会話、交錯し合う視線、ちょっとした仕草。その全てが、網の目のように関連し合って進行する。繊細すぎるほど徹底して計算し尽くされた脚本と演出。

 顔は笑っていても、心は泣いている登場人物たち。反対に、顔は泣いていても、心は笑っていたりもする。そんな矛盾した人間存在の複雑さを描きながらも、エンターテインメントとしての吸引力は失わず、娯楽作品として成立している。その絶妙なバランス感覚は驚異的だ。

●YouTubeより~「ぐるりのこと。」予告編
  

 主人公の男(リリーフランキー)のボーっとした佇まいと対照的な、妻(木村多江)の完璧主義で神経質な性格。互いに「自分には足りない部分」に惹かれ合って一緒になったけれど、ありがちなラブストーリーのセオリーどおりに2人の日常は進まない。

 完璧主義はいつか破綻する。そして妻の鬱病が、映画に大きな影を落とす。

 影?

いや。実はそうでは無いのかもしれない。この映画は鬱病を単純に「影」では終わらせない。終わらせてはなるものかと、藁をもすがる思いで日常の細部に目を凝らし、丁寧に希望の糸を紡ぎ出して行く。

 そしていつの間にか、希望は「創り出す過程そのものなんだ」と気付いて行く。

 人間とは、かくも逞しいものなのだと信じたい。そんな切実な思いがスクリーンから溢れ出していた。

 この映画を楽しめる年齢になるまで、生きてきたことが嬉しくなった。FC2 同性愛Blog Ranking
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コメント

この記事へのコメント

まだ見てませんが、見たい映画です。
私も2歳年下ではありますが、
この映画が楽しめる年齢だと言えるでしょうかねぇ。
生きてる事が嫌になる事もあるので、見ようと思います。

こんにちは、higurashizoshiと申します。
以前からよくおじゃまさせていただいてましたが、コメントは初めてです。
akabboshiさんの映画レビューはいつも読みごたえがあり的確だなあと
思っています。

「ぐるりのこと。」はとても観たいと思っていて、このレビューを読んで
ますます観たくなりました。
残念なことに私は映画館には行けないので、だいぶ先、DVDになってから
観ることになります。それまでこのレビューを心で憶えていようと思います。

主題歌ってかバックに流れてたのはAKEBOSHIさんでびっくり。
マイナーですが気になってたアーティストなんです。

●じゅぼんさん。

じゅぼんさん、いつもありがとうございます。
たまにコメントで現れてくださると「まだ見ててくれたんだ!」と
本当に嬉しくなりますよ。・・・長い付き合いになりましたね(笑)。

この映画、本当にオススメです。心をぐわ~っと抉られてものすごく痛いんだけど、そこを乗り越えるとなぜかスーッと気持ちのいい風を感じられるようになる。そんな気持ちを味わいました。

生きてることが嫌になったら・・・とりあえず、寝る!
そして、この映画のことを思い出す!

・・・ってな感じで、しばらくは乗り切れそう(笑)。

●higurashizoshiさん。

初コメントありがとうございます。主婦をなさっているのですね。

そちらのブログに「カミングアウト・レターズ」のことなども書かれていて、嬉しくなりました。RYOJIさんと砂川秀樹さんもきっと喜ぶと思います。

当ブログ、コメントのレスがいつも遅くて申し訳ありませんが、気長にお付き合いくださると嬉しいです(笑)。記事と違ってコメントのレスは、特定の個人に当てて書くわけですから大事に書きたいんです。なので、いつも週末などの時間があるときに、まとめて書かせていただいています。

この映画、橋口亮輔さんがゲイであるということからの親近感が自分に無ければ見に行かなかったかもしれないわけで、大きな損をしてしまうところでした。そういう意味でも「ゲイでよかった」と思えた映画です(笑)。

監督が公開前のメディア露出で語っていたところによると、この映画の物語は、監督自身が「うつ」になった実体験がベースになっているとのことです。監督本人にとってこの映画は、「作らずには居られなかった」ものなのだと感じました。

●JETさんって、あのJETさん?(爆)

なんかこの主題歌、頭の中でぐるぐる廻り続ける魔力があります。

観に行きました

akaboshiさん、東体以来ですねぇ(をい)。
先週木曜に観に行きましてね、リリーさんと木村多江さんにしんみり沁み渡ってきました。でもこの映画は主役や監督もさることながら、脇役の方々がいい存在感を示していたように思います。柄本明さんとか、寺田農さんとか。
「好きな人にいちばん、好きになってもらえればいい」って、言えるものではないけど、そのことばや人に救われるって素晴らしいことなんじゃないかなって思います。

ちなみに映画を観終えた後映画館を出たらエスムさんにばったりしてしまいました(爆)。

●あおきさん。

東体ぶり~(爆)。見にいったんすね~。
脇役の人たちに至るまで、本当に人物描写が繊細で驚きましたよ本当に。薄っぺらい登場の仕方をしている人が、いないんですよね。皆に「光と影」がちゃんと与えられていて。

そうそう、Rainbow Arts楽しみにしてるよ~。

こんにちわ。はじめて書き込みします。

3日前に観てきました。まだじわじわとアタマの中に浮かんでます。
橋口監督は本当に、一見淡々としてるけど、実は繊細な描写をしますよね。

自分は木村多江さんが演じた奥さんと病名的には同じ病気なんですが、
すごく心が痛いシーンがありました。
再生していく過程を描くには、映画の時間内では描ききれないところが多かったと思うんだけど、結局はキスはしないラブシーンですごく救われました。

全然違う映画だけど、「フィラデルフィア」でトムハンクスがオペラをレコードにあわせて
歌うシーンを思いだしました。

いい映画だと思います。
でも橋口さんの作品は音への(音楽やただの音も含めて)感覚が少し鈍感な気がします。
でも、好きです。




ぐるりのこと。素晴らしい映画ですね。見終わって、身の回りのもの、些細なものがとてもいとおしく感じられました。月並みだけど、「いいものはやっぱりいい!」と思いました。味のある映画だと思います。私自身、自分でも気づかなかった気持ち、感性を橋口監督が引っ張り出して下さったような気がします。生きる意味、男と女、そして人間尊厳とは・・・。普段、蓋をしてしまいがちなことを考えるきっかけになりました。ありがとうございます。

●このいけさん。

もう、観に行ってからだいぶ経っているのに未だに余韻を引きずってます。
映画の中の何気ない場面が、ふと脳裏に浮かぶことが多いです。
「音」への感覚が鈍感というご指摘ですが・・・なかなか視点が「玄人」ですね。
たしかに音響設計って大事ですよね。
僕はその点に関しては、特に気にはならなかったです。

●小梅さん。

たしかに。いろんな「感性」を新たに引っ張り出してもらったような気が、僕もしました。ものすごく細かいところまで、心の中を掃除したかのような。だからかな。観終わった後、爽快感すら感じましたっけ。
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