三島由紀夫とつきあってみる。002● 「卒塔婆小町」体験記①

それは大学4年の時。
大学時代をほぼ捧げたと言ってもいい演劇部を引退してから、卒業後も演劇を続けるつもりだった僕は、週末は東京に通って演劇のワークショップに参加するようになった。
そのワークショップは、前衛的で破壊的な舞台づくりで知られる演出家が主宰するものだった。
3ヶ月間稽古して、三島由紀夫の「近代能楽集」を発表公演しようという企画。10代から50代までの幅広い参加者が集い、自主稽古もたくさんやりながら一つの舞台を作り上げるという、僕にとってはとても刺激的な経験だった。
「近代能楽集」とは、三島由紀夫が演劇の戯曲として書き下ろした8つの短編集。原作は能の有名な演目であり、すべて現代語に置き換え、時代設定や人物設定も移し変えて彼なりの世界観を描出している。その一つ一つが「粒選りの名作」であると僕は思う。今でも繰り返しいろんな劇団により上演されていることからも、その質の高さは証明されている。
ワークショップでは短篇5つの中から名場面をピックアップし、オムニバス形式で混ざり合いながら進行するという不思議な演出が施されることになった。
僕に割り振られた役は「卒塔婆小町」の詩人の役。この物語は主に老婆と詩人の二人の掛け合いで進行する。
老婆には、当時28歳の女性が割り振られた。
「よろしくおねがいします~。」と挨拶をし合った。目がくりくりとした、柔らかい雰囲気の可愛い人だった。
まずは台詞を憶えるために、二人で自主稽古を重ねた。公民館を借りるには東京では有料の場所が多いので、駒沢公園とか皇居前広場とか、ベンチのある野外の拓けた場所が僕らの稽古場だった。
ベンチに座っている老婆に、若い詩人が話しかけるところから物語はスタートする。だからベンチが必要だったのだ。それ以外に舞台設定はなにも必要ない。
それから三ヶ月。
真昼間から、ちょっと貴族的でお上品な言葉遣いを交わし合う怪しい二人組が、都内のあちこちの公園に出没するようになったのである(笑)。
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コメント
この記事へのコメント
総勢何人でこの舞台をなさったのですか?
その人数分街の至る所で練習ですか(笑)素敵です。
↑の内容を読んだだけでも「三島由紀夫」という人が他の方とは一風変わった方だと思えます。
その人数分街の至る所で練習ですか(笑)素敵です。
↑の内容を読んだだけでも「三島由紀夫」という人が他の方とは一風変わった方だと思えます。
さっき、「春の雪」を買うかどうか考えたのだけれど、買って読むと、映画は見たくないし、(映像は良くても、妻夫木君が可愛すぎて、軽い仕上がりではないかと思ってしまうのです)映画を見たら、その世界だけに満足した方が良さそうで、本は読みたくないと思ったので、どちらにしても
買うのはやめました。
私はずうっと、三島由紀夫と言う名前は本名だとばかり思って、疑う事も在りませんでした。三島由紀夫と本名との間の空間は何を意味していたのでしょうか?
プライベートな事も知りたいと思っています。
akaboshiさん、そこの所よろしくお願いします。
買うのはやめました。
私はずうっと、三島由紀夫と言う名前は本名だとばかり思って、疑う事も在りませんでした。三島由紀夫と本名との間の空間は何を意味していたのでしょうか?
プライベートな事も知りたいと思っています。
akaboshiさん、そこの所よろしくお願いします。
●jyubonさん。
たしか・・・15,6人だったと思います。
5つのグループにわかれて、みんなあちこちでやってました。
全員で集まってデパートの屋上で稽古したこともあるし・・・
本気でアヤシイ人たちでした。
「~ですわ。」とか「君は、ふしぎだ!」とか、
ちょっと日常ではありえない言葉遣いの連続なのでかなり笑えます。
たしか・・・15,6人だったと思います。
5つのグループにわかれて、みんなあちこちでやってました。
全員で集まってデパートの屋上で稽古したこともあるし・・・
本気でアヤシイ人たちでした。
「~ですわ。」とか「君は、ふしぎだ!」とか、
ちょっと日常ではありえない言葉遣いの連続なのでかなり笑えます。
●seaさん。
映画と小説というのは、まったく別の表現手段なので
たとえ読んだとしても支障がないのではないかと僕は思います。
普通の原作本と違って、ちょっと難解なところがあるのが三島作品ですから
解釈の仕方もいろいろあるので、映画もその一つの解釈なんだと捉えれば。
本名と「三島由紀夫」との関係についても、今後書きますね。
今、読んでいる本でそのことについて、とても面白い説が展開されていました。
・・・この人は、本当にいろんな意味で謎が多く話題が尽きない人だと思います。
映画と小説というのは、まったく別の表現手段なので
たとえ読んだとしても支障がないのではないかと僕は思います。
普通の原作本と違って、ちょっと難解なところがあるのが三島作品ですから
解釈の仕方もいろいろあるので、映画もその一つの解釈なんだと捉えれば。
本名と「三島由紀夫」との関係についても、今後書きますね。
今、読んでいる本でそのことについて、とても面白い説が展開されていました。
・・・この人は、本当にいろんな意味で謎が多く話題が尽きない人だと思います。
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