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フツーに生きてるGAYの日常

やわらかくありたいなぁ。

2023-06
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松本卓也「特異なカップル」●MOVIEレビュー

 こちらの記事で書いた手前、観に行かなくちゃと自らに課すことになった映画『特異なカップル』ですが、なんと上映日の東京は雪が降ってまして(笑)、寒さに弱いのでやめようかとも思いましたけれど根性入れて観に行きました。

 下北沢の小さなギャラリーの入り口で渡されたパンフにはいきなり「全人類、フツー」って書いてあって・・・予告編をYouTubeで見て、ある程度「そういうことが言いたいんだろうなぁ」と予想はしていたのですが、ここまで最初からテーマを一言で言い切られてしまうと逆に引きますね、だって映画観る意味がないじゃん(笑)。うっわぁ~・・・帰ろっかなぁ~と思いながらも結局は見たのですが、けっこう技術的にはしっかりと作られていて、見やすい映画でした。観客は、僕が観た回は積雪のためか客足が鈍く5名ほどであり、僕以外は皆「女子」でした(笑)。

●再びリンクしてしまう(笑)『特異なカップル』映画予告
  

 映画の前半部分は、大学の帰り道に「特異な人々」が集う部屋(アパートの一室)を舞台に繰り広げられるシチュエーションコメディー仕立てなのですが、死んだ恋人を思い続けている特異な人、宇宙と交信している特異な人(宇宙人?)、その宇宙人が好きな特異な人、そして男同士でなぜか皆の目の前で半裸で抱き合って乳繰り合ってるゲイ・カップルがいるのです。会話はテンポ良く間も絶妙で、シュールな場面を強引に成立させる力技に、いつの間にか引き込まれていましたっけ。

 その部屋には、いきなりゲイの妹が訪ねてくるのですが、扉を開けるや否や「兄ちゃん、ホモなの?」と衝撃発言。なんでもそのゲイは父親にケータイ電話から「なんとなくカミングアウト」した直後であり、そのことを聞いた妹が田舎から息せき切って出てきたのです。兄が男の恋人と愛し合っている姿を妹に見せつけるものだから、妹は逆上します。そして告白するのです。「お兄ちゃんが大好き」と。つまりここにも兄に恋した「特異な人」がいたわけです。

 ・・・と、こんな感じで次から次へと、いわゆる世間から「特異」とされがちな人々が登場して「特異な行動」を取る場面が示されるわけですが、そういう人ばかりの空間にいてみると、「特異であるはずのこと」が「フツー」に思えてくる、というドラマツルギーなのですね。

 前半の場面は映画としての緊張感も保たれており、テンポも良くて楽しく見ることが出来るのですが、惜しむらくは後半部分。いきなり冗長になってしまい、ただただ「特異であることはフツーなんだ」「フツーであることは特異なんだ」という、まるでシェイクスピアの『マクベス』の魔女達が言う「綺麗は汚い、汚いは綺麗」のような理屈を説明するがために、かなり強引に仕掛けた作家の策略ばかりが鼻についてしまい、一気に面白くなくなりました。この映画は前半部分のみの短編として編集し直した方がいいのではないでしょうかね。

 でもこの映画の「良いところ」を挙げると、いわゆる「LGBT当事者」が作る「LGBTを描いた映画」がついつい醸し出してしまう「フワフワ感」とか自虐性とか閉塞感とか刹那感といった「暗さ」とか「重さ」とは全く無縁の突き抜けた明るさと勢いが画面からあふれ出していることです。それにゲイを演じる役者が二人とも、いわゆる「ステレオタイプのゲイ」を演じようとする意志が「ない」ように見えること。誇張してオネエ言葉で喋るわけでもなし。小指を立てるわけでもなし。上擦った声を出すわけでもなし。役者本人のキャラクターのまま自然に「ただ男が好きなだけ」というリアリティーを見事に醸しだしているのです。

 ただ一箇所だけ、ゲイを演じる俳優が唾を乳首に塗って欲情している場面があり、「あぁ、やっぱああいうことはやるんだねぇ」と一瞬ムカッと来たけど(笑)。でもすぐに「そんな自分って繊細すぎる。イカンイカン」という打消しの気持ちが働きました。いやんなっちゃうくらい細かいんですよねぇそういうとこ。イカンなぁ・・・。

 それにしても。ここまで能天気にあっけらかんとゲイを扱われると、僕はもう開き直って笑うしかありませんでした。もちろんいい意味でですよ。そしてなにより、兄(ゲイ)と妹の対決場面が演技的にも台詞的にも面白く、迫真力があって惹き込まれる「いい場面」になっているところが良かったです。

 ゲイのことをよく知らないけれど、興味を持っているノンケから「なに悩んでるの?ゲイだってフツーのことじゃん。もっと明るく生きようよ!」と、大雑把ながらも大声でさわやかにメッセージを送られたかのような気持ちを味わった映画でした。「当事者には、あんたらにはわからない悩みがあるんだよっ!」とか反発したくなる気力も失せ、「あ・・・あはは~・・・」と柔らかい気持ちでそれを受け止めようとしながらも、実は複雑でなかなか整理のつかない気持ちを抱えたまま、僕は上映会場を後にしました。

 帰り際、監督さんに「どちらでお知りになられたのですか?」と感想を聞きたそうな顔で話しかけられたのですが、あまりにも言語化不能なぐちゃぐちゃした気持ちを抱えていたため「ネットです。」と冷たく言って去ることしか出来なかった不甲斐ない自分を反省。結論としては、この映画、「前半部分に限っては」とっても良かったですし記憶に鮮明に残ってます。後半は観客として集中力が持続できませんでした。もっと理論や理屈を超えた「映画ならではの表現」を追及して欲しかった。個人的には、監督さんとこの映画の制作動機についてとか、どういう演出意図があったのかなどを詳しく喋ってみたいなァと思わされた映画でした。話がいろいろと擦れ違いそうだけど、それもまた面白いかも。FC2同性愛 Blog Ranking
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