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フツーに生きてるGAYの日常

やわらかくありたいなぁ。

2019-04
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山本嘉次郎「加藤隼戦闘隊」●MOVIEレビュー

戦意高揚映画は、2本立てで観るもんじゃない・・・。

8月になるとあちこちで戦争ものの特集が行われる。
池袋の新文芸座では「映画を通して戦争を語り継ぐ」と題して日替わりで戦争にまつわる映画の特集上映を開催中だ。
以前から見逃していた有名な「ハワイ・マレー沖海戦」が見たくて出かけたが、
とんでもない疲労感に襲われた。
ただでさえ、国民を洗脳しようという目的で作られた戦意高揚映画である。しかも各々びっちり2時間にわたって華々しく賑々しくジャンジャカジャンジャカとやかましく迫ってくるもんだから、見ているだけでもうヘトヘト。脳の吸収容量を超え、完全に思考停止してしまった。
こんな暑苦しいものを命令で見させられて「燃えたぎらされた」当時の人々の辛さを、ほんの少しだが味わった体験だった。

戦闘シーンは円谷英二の本領発揮。

黒澤明監督の「姿三四郎」で有名な藤田進が主演である「加藤隼戦闘隊」は、いよいよ戦局が厳しくなりつつあった1944年の公開。主人公の加藤建夫中佐がいかに明朗快活でたくましく素晴らしい人物であったか。実話をもとに彼の伝説を美化する映画。彼を慕い勇猛果敢に戦う兵隊たちの日々が、派手な空中戦闘シーンと交互に描かれる。

戦闘シーンは迫力十分。よくもまあ戦時中にこれだけの予算をかけて丁寧にしっかり作ったもんだと感心してしまう。アクション映画として見れば一見の価値あり。
戦後「ウルトラマンシリーズ」で名を馳せる円谷英二が特殊技術スタッフとして協力。他にも数多くの戦意高揚映画を手がけた彼は、戦後になって公職追放され、円谷特殊技術研究所を創ることになる。その後ゴジラやウルトラマンで活用される技術は、こうした現場で培ったものだったのだ。

落下傘の降下場面は映画史上の魔物。美しすぎて怖い。

戦闘場面で特に印象的なのが落下傘部隊の一斉降下。
何百人という兵隊が飛行機から、規則正し次々とく白い落下傘で降下する。青空一面に浮かぶ白い落下傘は、まるでタンポポの綿毛が飛ぶのをスローモーションで見ているかのよう。地上に降りたら敵との戦闘が待っているという厳しい現実を忘れさせてしまうほどだ。
実際の戦闘現場では、あれだけ呑気にふわふわと浮いていたら、敵の地上からの機銃掃射で打ち落とされてしまうのではなかろうか。この美しさは、はっきり言って罪である。
ナチスの命によりレニ・リーフェンシュタールが監督した「民族の祭典」に並ぶ、映画史上で特筆されるべき美的プロパガンダ場面だと言ってもいいだろう。
美しさとは人を幻惑し狂気に走らせる魔物である。このイメージは、どれだけの人々を狂気に走らせたのだろうか。

それにしても芝居がひどい。「やらされている感」ありあり。

戦闘場面の充実ぶりに反して、芝居の場面が恐ろしいくらいに冗長で下手。
軍隊調の格式ばった言葉がまったく板についていない俳優たちが無理やり喋らされているような感じで、不自然極まりない。見ていてむず痒くなってくる。
加藤中佐のあたたかい人柄を表現するべく冗談を言って笑いあう場面が多く出てくるのだが、全然面白いとは思えない。シナリオにそう書かれているから指示通りに
「はっはっは」と笑っているふりをしているようにしか見えないのだ。作り笑顔が引きつっていて痛々しい。

これは主演の藤田進にしても例外ではない。こんなに下手な役者だったっけと驚いてしまう位だ。
役者が納得できないものを無理やりやらされているものを見るほど辛いものはない。もしかして彼らは下手に演じることで、せめてもの抵抗をしたのだろうか?。その辺りはわからない。
しかもただ一面的に「清く正しく美しい」面のみをアピールするだけのシナリオだから、面白く演じられないのも無理はない。そんなことでは人間は描けないではないか。映画人としてのプライドはどこへ忘れてきてしまったのか。
ん?・・・そうか、思い出した。これは戦意高揚を目的とした映画。人間を描くということは最初から目的ではないのだ。国策を国民に刷り込みさえすれば役割を全うする種類のものなのである。

しかし、こんな低レベルな表現で本当に国民は「刷り込まれた」のだろうか・・・。
それとも「刷り込まれた」ふりをして、腹の底では嘲笑っていたのだろうか・・・。
複雑な気持ちで観ていた人も少なくはなかったんじゃないだろうか・・・そう思いたい。

不自然に作り上げられたファンタジーの世界。

主人公を演じる藤田進は常に男っぽく背筋を伸ばし、たくましさをアピールするように力んだ体の姿勢を崩さない。他の登場人物も総じてピシッとした体勢を維持して画面に登場する。
あんな状態で日常を過ごしていたら、無駄な体力を使いまくって疲れるだろうに・・・と同情したくなる。かなり浮世離れした光景だ。頭がおかしい人たちのようにも思えてくる。
本当に当時の男たちは日常からああだったのか?
・・・待てよ。また思い出した。これは政府が予算を援助して作らせた戦意高揚映画。
「男たるものこうであらねばならない」というモデル・ケースとしての表現であり、こういう国民を作り上げたいという政府のファンタジーを映像化したものなのだ。なるほど現実離れしていて当然である。

軍隊も徹底的に美しく表現。

軍隊では上官は下士官を「貴様」呼ばわりし、下士官は上官の命令には絶対服従。そうした生活を当たり前のように、まるで教科書のように美しく実践する登場人物たち。刃向かう者は一人も出てこない。なんと優秀で従順で素直な人たちなんだろう。
たまたまこの映画の主人公である加藤中佐は好人物だから美しい光景として成り立っているのだが、中には陰険な人や腹黒い人も上官になっていたことであろう。現実の軍隊ではもっと人間関係がドロドロしていて陰湿な世界であっただろうことは容易に想像がつく。
逆の見方をすると、こうしたファンタジーを必死で作り上げて鼓舞しなければ国民が動かないと思っていたこと自体、当時の大日本帝国政府の焦りと欺瞞を物語っているとは言えないだろうか。
1944年といえば戦局はすでに泥沼化。そろそろ本土空襲もはじまろうかという時にこんなものを真面目に作って、殉死した人物を英雄に祀り上げて賛美してしまえるそのセンス。
かなり病的なものだと言わざるを得ない。

「素直」ということのおそろしさ。

こういう軍隊ものを見ていて思い知らされるのが、
「素直」「従順」というものを美徳とする考え方の恐ろしさだ。軍隊というものは人間から「自主性・主体性」を奪い、機械の部品や歯車の一部であるかのように「素直に」働けるように改造するところ。当時の人々は健康な男子であるというだけで命令によって徴兵されたのだから、その時点ですでに個人の意思は無視される。入隊後も「天子さま(天皇)のご命令」である上官の命令には絶対服従。
だけど皆、あたりまえに「自我」を持った一人の人間であったはずである。どんなに辛かっただろうか。

いくら当時の皇民化教育が徹底していたからといって、そう簡単に自我を消し去れるほど、人間というものは脆いものなのだろうか。一面的に教育のせいにする言説もあるが、そう単純なことではなかったはずだ。少なくとも日本は「大正デモクラシー」を経験し、日露戦争の頃には堂々と反戦詩が流行したりもした。そうコロッと人は変われるものなのだろうか。

やっぱりわからない、この時代の「狂気」の実態。

どれだけこの時代の人々の書き記した書物や話を聞いても、これほど皆が病に冒されていた状況の実態が僕にはなかなか想像がつかないし共感も出来ない。
この時代の人々は、理不尽なことを無理やり自分に納得させるために虚勢を張っていたのではないかとしか思えないのだ。
虚勢も、張り続ければ本当のことになる。そうした個人の小さな思い込みや妥協の集積が積もり積もって、結果として集団としての盲目状態を作り出したのではないか?。
だから責任が見えにくいのである。いや、本当は皆に責任があったのではないだろうか。

これは現代の視点から見た考え方である。
あたりまえだ。僕は紛れもなく現代に生きる現代の人間だから。
当時の状況を体験していないから、「そうだったんですか・・・」と思うことは出来ても、共感など出来るはずがないのだ。出来たらそれは嘘である。
だからこそ逆に知りたいと思うし、考え続けて行きたい。
どうしてあんなことがかつて、この同じ土地の上で起こってしまったのかということを。
ちゃんと見つめなければ、簡単に繰り返されてしまうように思うから。

僕は今、こうしたことを自由に考えてブログに書ける時代に生きている。
ありがたいことだ。たっぷり享受して活用しようと思う。
そして、これは決して当たり前のことではなく、意識して守らなければ簡単に消え行く、儚いものであることを肝に銘じ続けようと思う。

簡単に「素直」になってはいけない。「当たり前」を常に疑い続けること。
そうでなければいつの間にか、貴重な才能がこうした映画に浪費される時代がまたやってきてしまう。
今のままでは案外簡単に、それはやってきてしまうだろうから。


「加藤隼戦闘隊」
製作=東宝 
1944.03.09公開 111分 白黒
製作・・・村治夫
監督・・・山本嘉次郎
脚本・・・山崎謙太 山本嘉次郎
撮影・・・三村明
音楽・・・鈴木静一
美術・・・松山宗
録音・・・樋口智久
照明・・・西川鶴三
特殊技術・・・・・円谷英二
出演・・・藤田進 黒川弥太郎 沼崎勲 中村彰
高田稔 大河内伝次郎 河野秋武 灰田勝彦
志村喬 ほか

DVD発売中

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