フツーに生きてるGAYの日常

やわらかくありたいなぁ。

2017-11
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大木裕之「木(ム)623MIX」●MOVIEレビュー

大木裕之さんの映画を見たのは2回目だ。

レンタルビデオ屋の「ゲイ」コーナーにあった「ターチ・トリップ」という作品が最初。
台詞のないプライベート・フィルムのような世界。なぜこれがゲイ・ムービーなのかと最初はわからなかったが、不思議なことに見ているうちに納得した。
特にあからさまなゲイ描写があるわけではないのに、わかってしまう独特の感覚。ものすごく轢きつけられる魔力を持った映画だった。

この監督はゲイである。
しかしあからさまにゲイであることを作品の中で主張しているわけではない。

日常的でなんでもないありふれた光景を意味世界からは解放し、イメージの集積として構成したフィルム。それはまるで僕らが日常、なにかを思い出すときに脳裏に思い浮かべるモヤモヤした記憶の中の未整理の映像のようだ。
最初は他人の脳内を覗いているような違和感でいっぱいなのだが、いつの間にか心地よくなってボーッとしてくる。やがてその世界の住人になり、感覚がイメージと戯れはじめる。
だまされたと思って、特にゲイの人は一度お試しあれ。なぜかものすごく共鳴できると思う。
ゲイであるという感覚で生きている者ならば共有しているだろう世界の見方を、この監督はつかんでいる・・・というより、自然とにじみ出てくるものなのだろう。

個人の感知する世界を徹底して純化してみると、他人と共鳴出来るものが生まれ来る。そういうものなのかもしれない。

日常のイメージは、こんなにも美しく儚く悲しく面白い。

さて「木(ム)」について。
この23分の短編は常に、2つ以上の別々の映像がオーバーラップし続け、音も混ざり合う。それらは時に関連し合うようでもあって、反発し合うようでもある。
監督の父親が亡くなった時に撮影はスタート。その日、その時に撮りたいものを撮る。
どうやら監督はこの撮影期間中はどこで何をしに行くのでも常にカメラを持ち歩いていたらしく、撮影可能ならば片っ端から撮影していたようだ。出会った人との会話やゲイとしての性生活、街中でなにげなく注目した少年など、普段は無意識に視線を走らせているそれらを事細かに、視線の移動と同じようなカメラワークで無造作に撮影。その編集にあたっては、それらの断片が意味とは無関係に出会い、共鳴し合い、反発しあうのを楽しんでいるかのよう。
しかしそれらには動かしがたい共通点がある。
すべての映像・音声は、大木裕之という個人が出会い、感知したこの世界の断片。その豊かさを映像に定着させることに「とり憑かれた」ある男の存在というものが強烈に浮かび上がってくる。

軽さの中に、深く広く豊かな哲学。

50年前にジョナス・メカスがフィルムで行っていたこうした映画の創り方は、フィルムからデジタル・ビデオの時代になり、誰にでも手軽に出来るようになった。かつては特権的な人々による特権的な表現媒体であった映像作りが、いまや誰でもちょっとした出費で手軽に日常的に出来るようになっている。
そこで映画を創るか、創らないか。この環境を享受するか、しないか。
映画という媒体を活用して自己の哲学を追及する興味があるかどうか。
単なるホーム・ムービーと「映画」との違いは、いまや「哲学を持っているかいないか」「それを探求するかしないか」の違いでしかなくなった。
大木裕之さんは紛れもなく、哲学探究に興味を持ち、映像でそれを実践し続けている。そしてそのエネルギーの根源は、ゲイとしての自分を自覚した上での世界との軋轢を見つめ、探求したいという衝動から来ているのだろう。
同じくゲイである僕にとっては、彼の構成した映像は痛いくらいに共鳴できる部分が多く、面白い。見ていて本能的な感覚が底のほうから快楽を得ているのを感じる。彼が感知し感銘を受け、感応を得ている事柄が、かなり自分と似ているからだ。
もちろん違いもたくさんある。だからこそ、そこに彼という個人を発見する。同時に、差異を感じる僕自身というものも発見する。

スタイルはとてつもなく軽いようでいて、そこに含まれている哲学はとてつもなく深い。
そしてとてつもなく豊かだ。
これほど豊かで自由な表現が、映像でできるのだ。
まだまだ映像の可能性の鉱脈は、発掘され尽くしてはいない。


「木(ム)623MIX」
監督・大木裕之
2003-05/23分/制作:イクラプロ
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☆記事中の画像は、映画とは直接関係はありません。
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コメント

この記事へのコメント

大木と一緒に映画をつくってるんだけど、やっぱりなにか違うよね~、彼。
オカシイところもいっちゃってるところもいっぱいあるんだけど、どこかですべてがつながっている、ちょっと天才的な人です。
次の映画でも一緒に作りますか?

見てみたいです。今度帰国したときに探してみようかな。
えーっ!ちょっと待って下さい。この記事の冒頭に「 レンタルビデオ屋の「ゲイ」コーナー」?!今はフツーのビデオ屋でもそんなコーナーがあるのですか?いやはや、しばらく離れている間に東京も変わったものです。

●玉野さん。
次回作、一緒にやられているんですね。楽しみです。
僕は・・・現在、自分の企画でいっぱいいっぱいなので(笑)
あくまでも観客として、
大木さんの映画を観ようと思います。
●nicoさん。
さすがにまだ、フツーの所にはゲイコーナーはありません(笑)。
新宿のTSUTAYAにのみ、そういうコーナーがあります。
さすが新宿。

なーんだ、そうか。
ああ、なんかホッとしたような、ガッカリしたような。

●nicoさん。
最初はそのコーナーのそばに近寄るのも恥ずかしくてドキドキしましたが
何度か借りるうちに慣れ、今では堂々としたものです(笑)。

何気にご無沙汰です
あなたが好きです大好きですを見てショック受けて、
昔映画館でやってた大木裕之特集にいき、まとめてみたのですが、
乗り物酔いみたいになってしまいました。
ターチトリップって高島礼子と元男闘呼組の人が出てるん
でしたっけ。見たことないんですよね。みなきゃいかんですね。

●grooveさん
お久しぶりです。
「ターチ・トリップ」は、誰が出ていたかということはどうでもいい位に
映画全体の個性がとても強い作品でした。
ビデオじゃなくてぜひフィルムで見てみたいのですが
なかなかチャンスがありません。

へl~、自分の企画があるんですねー!
なにか作品を作っているんですか?
がんばってくださいね~!
発表するときはブログで宣伝してね、みにいけたらいきたいです!

●玉野さん。
だいぶまだ先のことになりそうですが、それまでこのブログが続いていたら。
・・・ああ、でも匿名でやってるからなぁ(笑)。個人的に教えようと思います。
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