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フツーに生きてるGAYの日常

やわらかくありたいなぁ。

2010-08
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わかりやすく物語るために「切り捨てられるもの」を拾ってみる。



 9月20日(祝)に北海道の新得で行われる『Shintoku空想の森映画祭』のセクシャルマイノリティDAYで初上映するべく現在、『しみじみと歩いてる』の追加撮影と編集に追い立てられているわけですが、先週末は大阪のMtFトランスジェンダー綾さん宅と、FtMの方、レズビアンの方のお宅にお邪魔してきました。今週末は鹿児島在住のゲイの方の追加撮影も行います。

 大阪では綾さんとレズビアンの方に、事前に粗編集版のDVDを送り付けてこれまで撮ったものを見ておいてもらい、「これまでの撮影で何が描けていて、何が足りないのか」を相談しながら追加撮影しました。

 この映画は2006年の第1回関西レインボーパレードから撮り始めまして、その後5年間、パレードを基点にして出会った人たち(主に4人)のことを取材させてもらってきたわけですが、これまでは総じて、「ハッピー」だったり楽しげに語っている感じのものは撮れていたのです。しかし、それだけでは軽い感じがするということに気がつきました。これは僕が「ゲイ当事者である」という視点から撮っていることによる長所でもあり短所でもあります。その短所の存在に自覚的になる必要があるわけです。

 パレードの場というのはあくまでも「ハレ」の場であって、日常の「ケ」の部分こそが人生の大部分の時間を占めているわけですからね。セクシュアル・マイノリティとして過ごす日常生活というのは時にシビアな現実ともぶつかるものでもあるということを、しっかりと浮かび上がらせる必要があるということで、バランスを取るためにも今回は意識的に、そういう場面を狙い撮りしたりしました。

 ただ、やはり映像というのは「目の前の現在」しか即物的には映し撮ることが出来ないものでして、取材させてもらっている人たちの「今」に至るまでの過去を浮かび上がらせたいと思っても、それを語っている「現在の時間」とか「現在の視点から解釈された過去」しか映らないんですね。

 それはそれで「そういうもの」でもあるわけですが、現在からの解釈に縛られない過去の時間が浮かび上がらせられないものか・・・。過去そのものを解き放てないものかと思った時に、写真の存在を思いつきました。

 そこで、MtFの綾さんとFtMのもう一人の出演者(←誰なのかは映画を観てのお楽しみ~。笑)に「過去写真」を引っ張り出してもらったのですが・・・トランス前、すわなち性別越境前の姿が映っているわけで、僕にとってはかなり衝撃画像でした(笑)。そして、やっぱり思いました。現在からの解釈に縛られてはいけないと。

 たとえば・・・(僕が取材している)トランスした人、すなわち綾さんが特にそうだったのですが、映画を撮りに来ている僕の期待に応えるべく、トランス前の過去を一色に「暗いもの」として語りがちだったりするんですよ。

 でも、なかなかどうして、写真に記録されている過去の瞬間には、どう見ても心から笑っているように感じられる穏やかな日常や、愛情溢れる家族との関係性が映っていたりもするわけですよ。(トランス前ではあるけれども)それなりに楽しげに友人や家族とふざけあったりする日々があった。すわなち、「暗かった過去」の一言で語れるような単純なものではないはずなんですよ、人の生涯って。

 現在から語る「トランスした私の物語」に縛られて、現在の解釈から過去を単純に一色にイメージしてしまったら、大事な何かを見落としてしまう。その危険に気付かないと、現在、目の前にいる「その人」のことも同じように、単純な解釈で決め付けて一色で描いてしまうのではないか・・・僕はそんな薄っぺらな映画は作りたくない。そう思いました。

 テレビでセクシュアルマイノリティが描かれるのを見ているとき、僕は「むずがゆく」感じることが多いのですが、それはきっと、ある「物語」を浮かび上がらせるために無理やり切り捨ててしまっているものたちが「捨てないで~」と叫んでいる声を感知していたからなのかもしれないです。

 チャンネルを変えられないためにも「わかりやすく」しかも「ドラマチックに」物語るのがテレビの特性であり、同時に限界でもあるわけですが、暗闇で集中して観てもらえる映画だからこそ描き出せる「わかりにくさの中から浮かび上がる真実」があるのだろうと思います。

 映画という表現媒体だからこそ、「ドラマチックに語るためについつい切り捨ててしまうもの」を拾い集め、光も影も立体的に描き出してみたい。今、そう思って最後の追い上げ作業をしていますが、果たして成功しますかどうか・・・。

『Shintoku空想の森映画祭』プログラム
・・・セクシュアルマイノリティDAYはレインボーマーチ札幌の翌日である9月20日(祝)開催。『一緒ネ!』『苺とチョコレート』『しみじみと歩いてる』『プリカちゃん』の上映とトークが開催されます。

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