たかがテレビ074●自分が演じた役への責任は?~『素直になれなくて』でゲイを演じている玉山鉄二氏の『笑っていいとも!増刊号』でのトークで感じた不快感

フジテレビで現在、木曜22時に放送中の連続ドラマ『素直になれなくて』。Twitterで知り合った若者たちがユル~い仲から次第に関係が深まっていく姿を描く若者群像劇なのですが。
登場人物の一人である編集者のリンダ役を玉山鉄二さんが演じていて、彼はゲイ(あるいはバイ)的な感性を持った人物なのか?と思わせる描写が小出しにされて、視聴者をつなぎとめるための「ネタ」の一つになっていることは以前こちらでも書きました。
玉山鉄二氏演じるリンダは上司(渡辺えり)からセクハラされて、それに応じることが出来ずに苦悩したり、瑛太演じる「ナカジ」に惹かれる気持ちに素直に向き合えず、悶々と悩みを抱えてしまったりしています。10日放送分では、ついにリンダは仕事を休むようになり、同時にナカジ(瑛太)への思いが日に日に増しつつある苦しさを女友達に相談し、「ぜんぜんおかしくないよ。人を愛する気持ちは同じ。」と言われたりする場面が放送されました。
そして・・・リンダが仕事を休んでいることを心配して訪ねてきたナカジが、疲れて「うたた寝」をしていた隙に気持ちが抑えきれなくなって、つい寝顔に頬ずりをし、ナカジに気付かれてしまいます。そのショックで混乱して家を飛び出し、音信不通になったりした挙句、トイレで剃刀で首筋を切って自殺を図り、ナカジがそれを発見したところで「続きは次週」という展開になるところまでが放送されました。(続きの放送は17日。)

玉山鉄二氏がゲスト出演した様子が録画放送されていたのですが、平日の生放送では放送されなかった「CM中の会話」として、このドラマでゲイを演じていることについての言及がありました。そこでタモリと話した様子が、「ちょっとそれはないだろ~」という感じで頭にきたのです。
まずさぁ。なんで「ゲイを演じてる」と言った突端に会場から笑いが起きるわけ?(それを促す言い方を玉山氏がしているからなんだけど)。あと、『素直になれなくて』で玉山氏が演じているリンダが、どこで「ナヨッ」とした仕草をしているわけ?。リンダはまったくもって「男性ジェンダー」を身にまとって生きているタイプとして演じられているわけで、「ナヨナヨしている」と感じさせる場面は一瞬たりとも出てきてませんよ。そこが画期的でもあり、「あれは本当にゲイなのか?」と視聴者にミステリアスに思わせる効果ももたらしているわけです。玉山 (後ろに貼ってある『素直になれなくて』のポスターを指しながら)「実はこれで、ゲイ役やってるんです」
(会場から笑い)
玉山 「あははは。」
タモリ 「それさぁ。それ、普段、癖が出ない?その…演技の。」
玉山 「ちょっと出ます。」
タモリ 「出るだろう」
(会場から「えぇ~っ!」)
玉山 (右手の甲を左頬に当てて、ナヨッとした仕草をしながら)「こうやったりとか。」
(会場、さらに大きく「えぇ~っ!!」とどよめく)
タモリ 「あっはっは」
(会場から「いやだぁ~」の声)
玉山 「うそうそ。」
タモリ 「本当にこういうゲイがいたらもったいないよね。」
玉山 「あははは。」
(会場から「もったいなぁ~い」)
玉山 「でも。実はどっちなんですかって結構聞かれますね」
タモリ 「え?本当?」
(会場「えぇ~?」と、どよめく)
玉山 「お母さんも心配して電話かけてきてくれて、『あんたどうなの?』って」
(会場、笑い)
タモリ 「あ、そう(笑)。俺のカツラと同じか。」
(会場、笑い)
なぜ僕がこのように「安易に笑いをとった」ことに腹を立てているかというと…この3日前に放送されたドラマでは、彼が演じたリンダは自殺を図っているんですよ。リンダが自殺を図った原因は様々な要因が複雑に入り組んでいるのでしょうけども、重要な要素の一つとして、思いを寄せているナカジ(瑛太)に自分の本心を知られたことによる罪悪感=自分に対するホモフォビア(同性愛嫌悪)があることは確実なのです。つまり、自殺に追い込まれた原因には、同性に思いを寄せることを「おかしなことだ」と見做す社会の風潮が確実に影響しているのです。
自分が演じた役を精神的に追い込んでしまっている原因に、自らが加担して全国放送のテレビで再生産してしまっている。タモリも玉山鉄二氏も、会場や視聴者に同性/両性愛者は「居ないもの」であるかのような振る舞いであり、ただ「笑われるべき対象」「心配されるべき対象」としてしか扱わずに放送してしまった。その結果、ジワリジワリと第2、第3のリンダが生み出されるかもしれないわけで、その事実に無自覚すぎやしないでしょうか?。
これだけではありません。生放送での玉山氏の出演場面が終わった後に再び「ゲイネタ」での会話が行われ、放送されました。生放送中での「100人に1人アンケート」が当たらなかったので、CMに入ってからも少し居残った玉山氏はもう一問、『ドラマを見て、俺がゲイだと確信を持って見てた人』という質問を会場に投げかけました。結果、100人中13人がボタンを押し、「ええ~っ!!」という驚嘆の声で会場が包まれたのでした。
この日、放送された一連の「ゲイネタ」の場面に共通して言えることは、「演じている自分はゲイではないこと」を玉山鉄二氏が必死に印象付けたかったのかなぁということ。

なにも『ブロークバック・マウンテン』のヒース・レジャーのような発言をしてほしいなどと要求しているわけではありませんが、なぜ日本でゲイを演じた俳優は、聞かれてもいないのに「自分は違うアピール」を、やたらにしたがるのだろうかと、「この人もそうだったか」と、ガッカリしました。
今後、彼が演じるどんな役を見たとしても「なんて薄っぺらな…」としか、僕には思えなくなることでしょう。思いたくなくても、思ってしまうことでしょう。→FC2 同性愛 Blog Ranking
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