「伝説」だった南定四郎さんに会えるイベント、伏見憲明さんの「エフメゾ」で開催

このブログではパフナイト『知ってたつもり!?「ゲイ」「ビアン」』等でお馴染み水月モニカさんが、自筆のマンガを持って立っているのは伝説のスペース「hands on hands」跡地の前。これまた伝説の人物、南定四郎さんが90年代に新宿1丁目に開設した、レズビアンやゲイなど性的少数者のためのコミュニティ・スペースです。今回は、そんな南さんに関する映像とイベントのご案内。
まずは、昨年の11月に発売された「Bマガジン02」に収録されている「竜超の文化特捜学院」の中に、「日本初のゲイパレード開催を宣言した場所はこんなところ! 」という映像がありますので、そちらをご覧ください。

日本のLGBTコミュニティの歩みが、そろそろ「個人の記憶史」として語られ、ちゃんと記録されるべき時に来ているのではないかと、この映像を制作しながら感じました。一人一人、記憶は違うはずです。でもそれが面白い。「当時をどのように思い出し、語るのか」によって、その間のその人の人生が浮かび上がるのです。
水月モニカさんの語りからは、そんな面白さを感じることができました。手前味噌で恐縮ですが、近年自分が作った映像の中で、この映像がいちばん好きです。
さて。この映像でも重要な人物として触れられている南定四郎さんと言えば先日、4月29日に開催された尾辻かな子事務所のクロージングイベント終了後、ゲイバー「メゾフォルテ」で偶然、お会いすることが出来ました。伏見憲明さんが水曜日に開催している「エフメゾ」のトークゲストとして決まっていたらしいのですが、予定より1週間早く訪れてしまっていたとのこと。近年はコミュニティ活動の場から完全に遠ざかれていたということで「伝説の人」だった南さんですが、その人が目の前に居るという事実が信じられないまま、この機に乗じてたくさんお話を伺ってしまいました。
パレードの創設者というだけではなく、ゲイ雑誌『ADON』の編集者であり、『薔薇族』『さぶ』などと並んで70年代~80年代におけるゲイ雑誌界の大きな一角を担われただけではなく、ILGA日本の創設や、エイズ関連の活動の立ち上げ段階に関わったり、レズビアン&ゲイ映画祭の創設、アカーの府中青年の家裁判などなど、日本の様々な「コミュニティ活動」において重要な役割を果たし、まさに「パイオニア」としての役割を果たされた方。77歳とは思えない元気な語り口で、その頃のエピソードが繰り出されます。記憶も詳細まで鮮明であり、南さんの脳内映像が手に取るように感じられる、すごい体験でした。
そして。いよいよ5月6日(水)17時から。「エフメゾ」にて、南さんと伏見憲明さんの「正式な」トークイベントが開催されます。(→情報はこちら。 )これは本っ当~に滅多にない機会。
歴史の教訓から学ばない者に、真の未来は切り拓けないと、よく言いますね。歴史的な視座が欠けていることが原因で、同じことを「ゼロ」から繰り返したり。先人たちが既に達成していることを知らないがあまりに、過剰に飢餓感や不足感を抱え込んでしまったり。そういうことがよくあります。
そうした愚を繰り返さないためにも。そして、これからのことを具体的に展望するためにも。学ぶことがたくさんあるし、掘り起こして残しておかなければならないこともたくさんあります。「遠いもの」と勝手に思い込んでいた歴史がまさに、「今」と結ばれ合う奇跡の瞬間に、再び立ち会いに出かけようと思います!→FC2 同性愛 Blog Ranking
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尾辻かな子さんWe're OK!118●新たな出会いと繋がりをつくり、事務所クロージングイベント終了。

クロージングイベントにも関わらず悲壮感とは全く無縁。むしろ笑顔あふれる楽しい時間でした。4月29日に開催された、新宿2丁目の「尾辻かな子事務所クロージングイベント」には、入れ替わり立ち替わり70名ほどが訪れ、久々の再開に湧いたり、あの空間との「別れ」を実感したりしました。

当日は開始時刻の16時の時点で事務所には47人が来場。シークレットゲストの伏見憲明さんが、30分間にわたってスピーチ「先人たちの思いに寄せて」を行ってくださいました。新宿2丁目という「場」で聴くことにより、歴史の縦のつながりが波となってゴーッと音を立てながら、「今」に向かって押し寄せてくるような感じがしました。来場した方々にはスペシャルな体験だったのではないでしょうか。→伏見憲明公式サイトにてテキスト・音声を公開中。
16時半からは、ハーヴィー・ミルクを暗殺した人として知られるダン・ホワイトを主人公にしたアメリカのテレビドラマ『EXECUTION OF JUSTICE』(破滅の銃弾 ハーヴェイ・ミルク殺人事件)をスクリーン上映。彼があの行動に至るまでに、どんな日常を過ごし、どんな問題にぶつかったのか。当時の風俗も含めて丁寧に描き出した見応えのあるドラマ。歴史を様々な角度から「立体的に検証する」ことにより、世界というものの複雑さや奥深さ、面白さが感じられるような作品でした。

造形作家であるタックさんが画かれた、「尾辻かな子事務所」のある新宿2丁目の風景画だったのです。このサプライズに不意を突かれた尾辻さん、こっそり涙を流していました。暮れゆくオレンジ色の空のもと、「尾辻かな子事務所」の看板が煌々と照っているカラフルな風景。いや、あれはもしかしたら「明けゆく空」なのかもしれない。心のこもった最高のプレゼントを、人知れずこっそり渡すタックさんって、なんて粋な人なんだろうと思いました。
さまざまな話題で盛り上がったり、「カミングアウトという言葉についての論議」がくり広げられたりと、今後さらに詰めて考えてみたいと思わされる話題も提出されたトークが終わり、最後には、会場を訪れた有志が記入した「寄せ書き」を、事務所スタッフとして重要な任を担い、この日も司会を担当した後藤純一さんが代表する形で尾辻さんにプレゼント。終了後も人々はなかなか事務所を去ろうとせず、あちこちでワイワイと語り合う光景が続きました。
すべて終了し、片付けもひと段落して。主催メンバーは近所のゲイバー「メゾフォルテ」に行きました。ここは、パネリストとしても参加して下さった福島光生さんの経営する店なのですが、水曜日は伏見憲明さんが担当する「エフメゾ」が行われています。そこに、な、なんと!。あの伝説の人、南定四郎さんがいらっしゃったのです!なんでも、伏見さんが企画したイベントの日程を一週間違えていらしていたのだとか。近年は新宿2丁目や、いわゆる「ゲイ・コミュニティー」とは距離を置かれていた南さんですが、なんとこの日12年ぶりに訪れたとのこと。それがちょうど、尾辻事務所のクロージングイベントの日であり、日本の、いわゆる「ゲイリブ」を担ってきた歴代の人たちが多く揃っているタイミングだったということに、「運命のいたずら」のようなものを感じました。
日本で初めてレズビアン&ゲイパレードを開催することを提案し、実行したのは南さん。その他、現在に繋がる様々な活動の歴史をたどると、多岐にわたる分野で「はじまりは南さんだった」という事実に付きあたります。77歳というのが信じられないほど背筋がピーンと伸び、お酒もたくさん嗜まれ、大きな声で「かつてのいろんなエピソード」を、たくさんたくさん聴かせてくれました。「いやぁ~。まさか今、活動している君たちにこうして出会える日が来るとは、夢にも思わなかったよ・・・」と、何度も口にしていました。
尾辻かな子事務所のクロージングは、こうして人々に「新たな出会いと繋がり」をたくさんもたらして、無事、終了したのでした。→FC2 同性愛 Blog Ranking