パフナイト115★テレビに“虹”はどこまで映る?NHK「ハートをつなごう」ディレクターと話そう17●TVに暗い問題は乗らないの?

会場からの率直で鋭い意見がまだまだ続きます。今回はお2人から。
19●TVに暗い問題は乗らないの?
「明るいイメージを植え付けたいのかな?と感じた」と発言した人の気持ち、とてもよくわかります。そして、それを言われたNHKの制作者側が何故、その理由に「ピン」と来ていないのか。原因を推察してみます。
映像を見る人って必ずしも「意味」や「言葉」だけで受け取るわけではないということは、これまでにも何度も書いてきました。さらに具体的に言うと、映像の色彩設計やコントラスト・明度、音楽や効果音に何を使っているか。そうしたものが総合的に作用して、視聴者の感覚に働きかけてくるものだと思うんです。
僕個人の印象としては、「ハートをつなごう」の色彩設計は、撮影の時点から既に「綺麗に明るめにファンタジックに」組み立てられているように感じます。撮り方が上手すぎるし美しすぎるんですよ。
「美しい」には様々な意味があるわけですが、この場合は「まるでファッション雑誌のグラビア・ページを見ているかのような気がする」という意味での美しさ。その結果、美しいもの(光)だけではなく、その裏に潜む醜いもの(影)も同時に映し撮れるはずである「映像本来が持つ多義性」とか「リアルさ」が、損なわれてしまっているのではないかと感じます。
また、音の面でも意図的な操作が随所に感じられます。VTRを編集する際に頻繁に「カッコ良さ気で明るい曲調の洋楽のBGM」を使用し、ユーモラスで明るくさわやかな印象を視聴者に喚起させています。また、スタジオ・トーク場面が始まる際にはSEで鳥のさえずりを入れた上で、ファンタジックでカラフルなセットが映し出されるなど、随所に「やわらかく明るめで優しいイメージ」を、視聴者に知らず知らずのうちに喚起させる仕掛けが施されています。
さらに気になる点が。スタジオで議論が行われている場面で、何故かカメラは静止せずにパン(移動)し続け、ここでも映像的にスタイリッシュであることが追及されています。発言内容に関係なくそれが行われていることも原因してか、時として、話されている内容を視聴者が咀嚼するための「隙間」が殺されている場面も見受けられます。つまり視聴者としては議論に集中できず、意識が拡散されてしまうのです。
おそらく、NHK教育テレビに持たれがちな「堅苦しさ」や「真面目くささ」といったイメージを番組から払拭したいがために編み出された表現スタイルなのでしょうが、「軽く」「明るく」観てもらいたいという番組制作者側の意図が、全体的に過剰に透けて見え過ぎているのではないかと感じます。
そうしたこと全てが相乗的に作用して、結果的には、現実をリアルに立体的に描き出す際には不可欠であるはずの「影」の部分が視聴者の印象に残りにくくなり、「光」の印象が強烈に残って「一面的」だと感じ、そこに押し付けがましさを感じて反発すら覚える人が多くなる一因になっているような気がします。
しかし『ハートをつなごう』制作者側にとって、そうした番組のスタイルは既に「当たり前のこと」となっており、疑ってみる対象にすらなっていないから気付かないのかもしれません。「そんなのはスタイルの問題だ」と侮るなかれ。スタイルにこそ思想性が込められていたり、受け手の深層意識に深く働きかける要素が潜んでいたりもするわけですから。
映像作りのための「美学」や番組の「スタイル」に引っ張られ、本当に描き出したいことが覆い隠されてしまったり、なにを取材しても結果的には一面的な印象しかもたらしにくくなってしまっているのだとしたら、すごくもったいないことですね。これは『ハートをつなごう』を初めて見たときから、ずっと僕が感じ続けている「ムズ痒さ」の原因にも通じています。→FC2 同性愛 Blog Ranking
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