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フツーに生きてるGAYの日常

やわらかくありたいなぁ。

2008-07
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橋口亮輔「ぐるりのこと。」●MOVIEレビュー

 蘇生体験。

 一度、まっさかさまに地の底まで落ち、人の世の闇や業を全て知り尽くし、疲れ果てたけれど、なおもあきらめず、ゆっくりと目の前にある雑草をつかみながら、一陣の光を目指して這い上がって蘇生したかのような。そんな映画体験だった。

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 とにかく細かい。登場人物の交わす会話、交錯し合う視線、ちょっとした仕草。その全てが、網の目のように関連し合って進行する。繊細すぎるほど徹底して計算し尽くされた脚本と演出。

 顔は笑っていても、心は泣いている登場人物たち。反対に、顔は泣いていても、心は笑っていたりもする。そんな矛盾した人間存在の複雑さを描きながらも、エンターテインメントとしての吸引力は失わず、娯楽作品として成立している。その絶妙なバランス感覚は驚異的だ。

●YouTubeより~「ぐるりのこと。」予告編
  

 主人公の男(リリーフランキー)のボーっとした佇まいと対照的な、妻(木村多江)の完璧主義で神経質な性格。互いに「自分には足りない部分」に惹かれ合って一緒になったけれど、ありがちなラブストーリーのセオリーどおりに2人の日常は進まない。

 完璧主義はいつか破綻する。そして妻の鬱病が、映画に大きな影を落とす。

 影?

いや。実はそうでは無いのかもしれない。この映画は鬱病を単純に「影」では終わらせない。終わらせてはなるものかと、藁をもすがる思いで日常の細部に目を凝らし、丁寧に希望の糸を紡ぎ出して行く。

 そしていつの間にか、希望は「創り出す過程そのものなんだ」と気付いて行く。

 人間とは、かくも逞しいものなのだと信じたい。そんな切実な思いがスクリーンから溢れ出していた。

 この映画を楽しめる年齢になるまで、生きてきたことが嬉しくなった。FC2 同性愛Blog Ranking
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