たかがテレビ049●「ハートをつなごう」ゲイ/レズビアン第二夜●「顔を出さない」というのも表現
第一夜の感想をアップした直後に今夜の放送を見たのですが・・・今日は「映像的な面白さ」という点では物足りなさを感じました。30分の中にトピックを多く詰め込みすぎで説明が多くなってしまったことも原因でしょうし、今回VTR出演をしたゲイ/レズビアンは「顔出し」をしていなかったことも原因でしょう。「画」になりにくかったのだと思います。
ただ、「顔を出す」ことが素晴らしいことであって、「顔を出せない人」のことを暗に責めるような風潮が当事者コミュニティーの中にあることには、僕は疑問を感じます。なぜなら「顔を出さない」というのも、一つの表現のあり方ではないかと思うからです。どうして顔を出せないのか。躊躇するのか。その精神の葛藤を想像してもらうことに、ゲイ/レズビアンが日々ぶつかっている問題の「核」があると思うからです。スタジオに出演して顔を出せている人の多くも、かつては「顔を出せなかった人」だったりもするわけです。皆が皆、顔を出していたらその「背後」にあるものが想像されなくなってしまいますからね。
今回は「カミングアウト・レターズ」
の中の一節も紹介され、「カミングアウト」という行為にまつわる複雑な側面もトークで少しだけ触れられたわけですが、「紹介されただけ」という印象であり、考察したり、その気持ちを「感じたり」するところまでは踏み込んではいないように思いました。今後も番組では「ゲイ/レズビアン」を取り上げ続けるようですから、ぜひこれから更に個別の問題に突っ込んで具体的なエピソードとともに「カミングアウトにまつわる問題」を、映像表現としても工夫しながら追求して行って欲しいと思いました。
★今回の放送の感想を、NHKが受け付けています。
あと、今回の二夜の番組では、「コミュニティー」の存在があまり見えてこなかったのではないかと感じました。多くのレズビアン/ゲイが「自分へのカミングアウト」をする過程において、学校や職場とは別の「当事者コミュニティーとの出会い」が大きな役割を果たしてます。朝原君のVTRで「ピアフレンズ」の紹介はありましたが、そういった「昼間」の出会いの場だけではなく、クラブイベントやバーなどの「夜」の出会いの場も大切な役割を果たしています。また、スポーツや文化活動などのサークルや、雑誌、ネットなどなど様々な種類のものが、当事者にとっては「大切な心の拠り所」として精神的なつながりをもたらしています。そこらへんの個別性を探ってみると面白いかも。・・・つまり、まだまだネタはいっぱいありますよ~ってことで(笑)
また、同性愛者が同性愛者だと認識される最も映像的にわかりやすい「画」は「同性パートナーと並んでいる姿」なのですが、今回の放送では(イラスト以外には)まったく出てきませんでしたね。そのへんが物足りなかったです(笑)。
なんにせよ、「具体的でリアルなエピソードを映像として表現できるかどうか」というところに、この番組の真価は問われるのではないかと思います。(そういった面で、朝原君の取材VTRは本当に良かった!)。 「ゲイ/レズビアン」を映像で描くということにまつわる様々な問題。特にテレビというマスメディアで「市井に生きる人」を描く際に、これからぶつかるであろう様々な問題が予想されますが、ぜひめげずに連続して取り上げ続けてくださいね!NHKさん!→FC2 同性愛Blog Ranking
ただ、「顔を出す」ことが素晴らしいことであって、「顔を出せない人」のことを暗に責めるような風潮が当事者コミュニティーの中にあることには、僕は疑問を感じます。なぜなら「顔を出さない」というのも、一つの表現のあり方ではないかと思うからです。どうして顔を出せないのか。躊躇するのか。その精神の葛藤を想像してもらうことに、ゲイ/レズビアンが日々ぶつかっている問題の「核」があると思うからです。スタジオに出演して顔を出せている人の多くも、かつては「顔を出せなかった人」だったりもするわけです。皆が皆、顔を出していたらその「背後」にあるものが想像されなくなってしまいますからね。

★今回の放送の感想を、NHKが受け付けています。
あと、今回の二夜の番組では、「コミュニティー」の存在があまり見えてこなかったのではないかと感じました。多くのレズビアン/ゲイが「自分へのカミングアウト」をする過程において、学校や職場とは別の「当事者コミュニティーとの出会い」が大きな役割を果たしてます。朝原君のVTRで「ピアフレンズ」の紹介はありましたが、そういった「昼間」の出会いの場だけではなく、クラブイベントやバーなどの「夜」の出会いの場も大切な役割を果たしています。また、スポーツや文化活動などのサークルや、雑誌、ネットなどなど様々な種類のものが、当事者にとっては「大切な心の拠り所」として精神的なつながりをもたらしています。そこらへんの個別性を探ってみると面白いかも。・・・つまり、まだまだネタはいっぱいありますよ~ってことで(笑)
また、同性愛者が同性愛者だと認識される最も映像的にわかりやすい「画」は「同性パートナーと並んでいる姿」なのですが、今回の放送では(イラスト以外には)まったく出てきませんでしたね。そのへんが物足りなかったです(笑)。
なんにせよ、「具体的でリアルなエピソードを映像として表現できるかどうか」というところに、この番組の真価は問われるのではないかと思います。(そういった面で、朝原君の取材VTRは本当に良かった!)。 「ゲイ/レズビアン」を映像で描くということにまつわる様々な問題。特にテレビというマスメディアで「市井に生きる人」を描く際に、これからぶつかるであろう様々な問題が予想されますが、ぜひめげずに連続して取り上げ続けてくださいね!NHKさん!→FC2 同性愛Blog Ranking
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たかがテレビ048●「ハートをつなごう」ゲイ/レズビアン第一夜●マジョリティー/マイノリティーが入れ替った夜
4月28日(月)20時にNHK教育テレビで放送された「ハートをつなごう」御覧になりましたか?。教育テレビなので、もっと堅苦しい番組なのかと覚悟をして見たのですが、スタジオが映った冒頭からリラックスした「世間話」のような明るいトーンで、パネリストたちの「同性愛者としての日常感覚」が自然体で語られていることが、まずは嬉しくなりました。
テレビにゲイやレズビアンを公言している人が映し出され、自らの内面を語ること自体は、昨今ではそれほど珍しいことではありません。昨年からの「おネェタレント」の大ブームや、尾辻かな子さんの選挙におけるテレビ出演、そして東京MXテレビ「5時に夢中!」でのマツコ・デラックスさんや黒船特派員チャールズの活躍など、僕が日常で目にするだけでもかなり頻繁に、ゲイやレズビアンが開放的に自らのことをテレビで表現しています。
90年代初頭にマスメディアを中心に起こった、いわゆる「90年代ゲイブーム」の頃のテレビ映像を見返した時に感じるような「当事者たちの決死の覚悟」のようなものは、テレビ出演する際に今では必要なくなってきているということなのでしょう。脈々と続いてきた当事者たちによる活動の積み重ねが、今のような時代をもたらしているのだということに、感謝せねばと思います。
ところで今回の放送は、20歳のゲイ、朝原恭章君のインタビューや日常の様子を紹介するVTRを中心に構成されていたのですが、僕の印象に残ったのは取材者側の朝原君に対する「関心度」とか「興味の度合い」の高さが、そのまま如実に映像に定着されていたということです。構成上、彼一人に焦点を絞ったことが功を奏したのでしょうか。朝原君が学生時代の辛かった経験や、希望を見い出して行くに至るまでの精神の軌跡を語る際、彼の言い淀みや無言の瞬間などの「間」までを、カットせずに丹念に画面に映し出していたのです。結果的に、視聴者に彼の内面をより深く想像させることが出来たのではないでしょうか。時々挿入されていたイラストも効果的でした。
刺激重視、スピード重視のゴールデンタイムのテレビ界において、このような地味で静かな「映画的な編集」が可能なのは、やはりNHK教育テレビという「商業主義」からは一歩はなれた場所から番組を作れる環境だからなのでしょう。ゆったりと丁寧なリズムの中で、一人の若者を「人間として描き出したい」という番組制作者たちの「静かな熱」のようなものが伝わってくる、映像的な魅力に溢れた取材VTRでした。こういう映像こそが、理屈を超えたところで人々のステレオタイプを氷解させ得るのだと思います。テレビとは本来、このような映像で溢れているべきなのではないかと思うのですがね。
スタジオトークでは尾辻かな子さんがいつになく自然体でリラックスした関西弁を披露していましたし(笑)、石川大我さんは定番の光GENJIトークを披露。学生時代はゲイであることがバレないようにと、「好きだということにしてある女性タレント」の情報をこまめにチェックし、カンペンケースまで持っていたとか。イトー・ターリさんは60歳のレズビアンとしての「時代感覚の違い」を的確に発言。40歳になるまでレズビアンとしての自己を受け入れられなかったという彼女のエピソードは、ゲイ/レズビアンをとりまく社会の風当たりの変遷を伝えていました。そして、砂川秀樹さんは研究者らしく理論で説明するのですが、わかりやすく噛み砕いていたので伝わりやすかったのではないかと思います。
それにしてもスタジオ・トークに参加した8人のうち、5人がゲイ/レズビアンを公表している人々だったということで、あの空間では「マジョリティー(多数派)」になっていたわけですね。心なしか、番組のレギュラー司会陣3人が「どういう発言をしたら当事者にとっての地雷を踏むことになってしまうのか」とかなり気を使っていたような感じも伝わってきましたが、マイノリティーとマジョリティーが世間とは入れ替わった空間の雰囲気が、ゲイである僕にとっては心地よく感じられました。あ、そうこう書いているうちに、もう第二夜がはじまる時間になってしまいました(笑)。ではこれから見ます。また楽しみ!→FC2 同性愛Blog Ranking
テレビにゲイやレズビアンを公言している人が映し出され、自らの内面を語ること自体は、昨今ではそれほど珍しいことではありません。昨年からの「おネェタレント」の大ブームや、尾辻かな子さんの選挙におけるテレビ出演、そして東京MXテレビ「5時に夢中!」でのマツコ・デラックスさんや黒船特派員チャールズの活躍など、僕が日常で目にするだけでもかなり頻繁に、ゲイやレズビアンが開放的に自らのことをテレビで表現しています。
90年代初頭にマスメディアを中心に起こった、いわゆる「90年代ゲイブーム」の頃のテレビ映像を見返した時に感じるような「当事者たちの決死の覚悟」のようなものは、テレビ出演する際に今では必要なくなってきているということなのでしょう。脈々と続いてきた当事者たちによる活動の積み重ねが、今のような時代をもたらしているのだということに、感謝せねばと思います。
ところで今回の放送は、20歳のゲイ、朝原恭章君のインタビューや日常の様子を紹介するVTRを中心に構成されていたのですが、僕の印象に残ったのは取材者側の朝原君に対する「関心度」とか「興味の度合い」の高さが、そのまま如実に映像に定着されていたということです。構成上、彼一人に焦点を絞ったことが功を奏したのでしょうか。朝原君が学生時代の辛かった経験や、希望を見い出して行くに至るまでの精神の軌跡を語る際、彼の言い淀みや無言の瞬間などの「間」までを、カットせずに丹念に画面に映し出していたのです。結果的に、視聴者に彼の内面をより深く想像させることが出来たのではないでしょうか。時々挿入されていたイラストも効果的でした。
刺激重視、スピード重視のゴールデンタイムのテレビ界において、このような地味で静かな「映画的な編集」が可能なのは、やはりNHK教育テレビという「商業主義」からは一歩はなれた場所から番組を作れる環境だからなのでしょう。ゆったりと丁寧なリズムの中で、一人の若者を「人間として描き出したい」という番組制作者たちの「静かな熱」のようなものが伝わってくる、映像的な魅力に溢れた取材VTRでした。こういう映像こそが、理屈を超えたところで人々のステレオタイプを氷解させ得るのだと思います。テレビとは本来、このような映像で溢れているべきなのではないかと思うのですがね。
スタジオトークでは尾辻かな子さんがいつになく自然体でリラックスした関西弁を披露していましたし(笑)、石川大我さんは定番の光GENJIトークを披露。学生時代はゲイであることがバレないようにと、「好きだということにしてある女性タレント」の情報をこまめにチェックし、カンペンケースまで持っていたとか。イトー・ターリさんは60歳のレズビアンとしての「時代感覚の違い」を的確に発言。40歳になるまでレズビアンとしての自己を受け入れられなかったという彼女のエピソードは、ゲイ/レズビアンをとりまく社会の風当たりの変遷を伝えていました。そして、砂川秀樹さんは研究者らしく理論で説明するのですが、わかりやすく噛み砕いていたので伝わりやすかったのではないかと思います。
それにしてもスタジオ・トークに参加した8人のうち、5人がゲイ/レズビアンを公表している人々だったということで、あの空間では「マジョリティー(多数派)」になっていたわけですね。心なしか、番組のレギュラー司会陣3人が「どういう発言をしたら当事者にとっての地雷を踏むことになってしまうのか」とかなり気を使っていたような感じも伝わってきましたが、マイノリティーとマジョリティーが世間とは入れ替わった空間の雰囲気が、ゲイである僕にとっては心地よく感じられました。あ、そうこう書いているうちに、もう第二夜がはじまる時間になってしまいました(笑)。ではこれから見ます。また楽しみ!→FC2 同性愛Blog Ranking