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フツーに生きてるGAYの日常

やわらかくありたいなぁ。

2006-08
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LGBT可視化に向けて015●STN学習会② イギリスのLGBT教育事情

72%のレズビアン、ゲイ、バイセクシュアルの成人が、子供のときにホモフォビアによる嫌がらせのために何度も登校拒否をした。

●そのうち50%が自殺や自傷を考え、実際に40%が一度は自傷行為をしている。 

 STNの勉強会で、尾辻かな子さんが説明した 「ホモフォビアによるいじめに対する学校での取り組み」というイギリスでの会議の報告書に書かれていた調査結果です。ちょっとびっくりしてしまう数値かもしれませんが、もし僕も調査で同じことを聞かれたら50%のうちに入ると答えるでしょうから、この数字の意味する深刻さは、自分の体験として納得できます。

 この報告がなされた会議は7月4日にロンドンで行われました。イギリスのStonewallという団体が行っている「Education for All」というキャンペーンの一環であり、きちんとしたサイトも立ち上げられ、IBMがスポンサーとして関わっているなど、とても大きなしっかりとした運動となっていることがわかります。そのことだけでも、とても羨ましく感じられます。
(→「Tackling Homophobic Bullying in our schools conference」基礎資料のPDFはこちら。)

 ハイセンスな教材DVDを配布

 尾辻さんはさらに、この活動の一環として制作されたイギリスのDVD「SPELL IT OUT」を紹介してくれました。これは学校教育の現場でホモフォビアをなくすための教材DVDで、なんとイギリスの学校には無料で配布されているそうです。すごいですね~。

 映像を見たのですが、「教材」といっても決して堅苦しくはなく、おしゃれなドラマのような感覚で見ることができます。生徒がゲイやレズビアンであることをカミングアウトした時の対処法を、ドラマ仕立てで描いているのですが、映像のセンスも柔らかくてユーモアがあり、思わず笑ってしまうような場面も満載で、楽しみながら見ることが出来ます。

 印象的だったのは「教職員の中にもLGBTはいる。しかしカミングアウトできない。だから生徒もカミングアウトできない」という言葉。要するに学校現場で起きている悪循環を端的に指摘しているのです。

 生徒にカミングアウトされた時の対処法

 たしかに教師って「清く正しく美しくあらねばならない」という社会からのプレッシャーを受けやすい職業ですから、LGBTのことを「不潔で不正で醜い」存在だと見做す空気が支配していたり、無意識にそう思い込んでいる人が多い社会では、かなりカミングアウトし辛い立場なのかもしれません。

 また、教師が当事者でなく、こうした問題に無知な場合はなおさら、生徒が先生を頼って意を決してカミングアウトしてきてもトンチンカンな対応をしてしまって、生徒を余計に苦しめてしまいがちなのだそうです。だからこそ、まずは教師本人が持っている偏見や意識のあり方を疑ってみることから始めるべきだという風に、映像は語りかけます。

 そのために学校現場ではどのようなトレーニングをするべきか。授業の中にLGBTに関する教育を盛り込んだり、友達がカミングアウトした場合にどう接するべきなのかを話し合う授業を設けたりする光景が紹介されます。そしてまずなによりも、生徒がカミングアウトしてきても教師が慌てずに対応出来るよう、LGBTに関する最低限の知識を蓄えておくことの必要性が語られます。しかし、答えがあると思ってはいけないそうです。安易なマニュアルに頼ろうとせずに「まずは生徒の話をきちんと聴き、個人対個人としてちゃんと向き合うこと」の大切さを説くのです。

 マニュアルDVDのようでありながら最終的には「マニュアルに頼るべきではない」ことを語る姿勢が素晴らしいではありませんか。そして最後のメッセージも印象的でした。

「ホモフォビアを問題化すると、学校はどんな人にとっても、より安全な場所になります。」

・・・つまり、自分とは異質な他者への想像力を皆が持ち、「違い」を攻撃するのではなく「認め合うこと」は、どんな人にとっても過ごしやすい環境になるということなのです。

 まずは教師が基礎知識を。

 制度面で大きな差のある日本の現状とイギリスを比較することは酷かもしれませんが、こうした映像の日本版はぜひ作られるべきだし、イギリスの学校と同じように全ての学校現場に配布されてもいいのではないかと思いました。そしてもちろん、授業のカリキュラムに「性的マイノリティー」に関する項目が含まれるようになるべきです。

 生徒に教えるためにはまず教師本人が「学び、咀嚼する」必要があります。つまりカリキュラムに含まれるということは、教師自体も学ぶということにつながります。すると教師自身のカミングアウトも、より行いやすくなるのではないでしょうか。

 それに、教師に基礎知識がなければ実際にLGBTの子供を目の当たりにしても対応のしようがないでしょう。(本当はすでに、いくらでも目の当たりにしているんですけどね。)今の日本のように相変わらず「タブー視」して、いることがわかっているのに語ることさえ憚られる風潮のままで放置していては、苦しむ子供がこれ以上増えて行くことを止めることは出来ません。

 冒頭で紹介した調査結果のとおり、LGBT権利運動先進国のイギリスでさえLGBTの約半数が「登校拒否をし、自殺を考えたことがある」という調査結果が出ています。学校現場での「LGBTいじめ」の問題は、依然として世界共通の問題です。

 「おかま~ぁ」「レズ~ぅ」「女みたいだな、気持ちわり~」「お前、男か?」・・・こういう言葉って言われ方とシチュエーションによっては本当に傷つきますからね。しかも親に対しても相談できなかったり、友達にも打ち明けられないままで自らの性の特殊性と直面するときの孤独は、自己否定の感情を簡単に喚起します。そんな時に、せめて先生が正しい知識を持っていたり、学校の授業で少しでも触れられていたら、どんなに救われることでしょう。

 思春期ってけっこう繊細ですから、教育問題って実は「命に関わる問題」でもあるのではないかと思います。

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☆文中の「LGBT」とはレズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダーの略称です。
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逃避からの生還

騒ぐことが嫌いだった
後がさびしくなるから

盛り上がることが嫌いだった
後の空しさが辛くなるから

そうやっていつの間にか
独りが好きになっていたけど

怠慢と傲慢と無知がもたらす
つまらぬ意地と強がりは
真に楽しめなかった大きな空しさに
気付く末路をもたらすだろう

あの日の祭りの喧騒が
教えてくれた大事なこと


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