KANリスペクト003●アルバム「遥かなるまわり道の向こうで」30日発売

KANさんにとってアルバムのリリースは5年ぶり。この間、フランスに移住して歌手活動を停止していたので「もしかして引退かも・・・」とハラハラしていました。彼の「小心者でおっちょこちょいだけどユーモラスな歌世界」はやはり唯一無二のものであり、もう聴けなくなるなんて信じられないと思っていました。それはまるで、自分の大切な一部分がもぎ取られてしまったかのような感覚でした。だから今回の本格復活は本当に嬉しいし、彼の周囲に「彼の音楽のファン」がたくさんいて、ちゃんと待っていて支え続けているという事実には感謝です。
一時期は「歌い続けること」の壁にぶつかり、「遥かなるまわり道」をしてしまったKANさんだけど、ちゃんとこうして帰ってきた。そんな今の彼だからこそきっと、力が抜けた「本当に豊かな歌」が歌えるのかもしれません。普通の言葉で、普通の視線で、小さなことを大切に歌う彼のセンスとユーモアが、僕は大好きです。
●KAN公式サイト14thアルバム「遥かなるまわり道の向こうで」→試聴はこちら。
1.世界でいちばん好きな人
2.キリギリス
3.彼女はきっとまた
4.小さき花のテレジア
5.エンドレス
6.おしえておくれ
7.遥かなるまわり道の向こうで
8.カレーライス
9.RED FLAG(一般道路速度超過)
10.アイ・ラブ・ユー(version:CJP)
●KAN「遥かなるまわり道の向こうで」
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キム・キョンムク「顔のないものたち」●MOVIEレビュー②

第一のパートのラスト。部屋に一人取り残された若い男は、しばしの沈黙の後、ビデオカメラをおもむろに取り出す。そして窓の外らしき場所にカメラを向け、覗き込む。
覗き込んだ「先」という設定にされているらしい部屋の中にも、どうやらゲイの男同士がいる。一人は袋を頭からすっぽりと被っている。もう一人は普段着のまま。なにが始まるというのだろう。

つまり袋の男が普段着の男に要求していたことというのは、「自分の口に向かって放尿してくれ」ということだったのだ。明かりが煌々と点されたなんの変哲もない一室で、突然繰り広げられようとしている放尿の光景・・・。普段着の男は監督自身なのだろうか・・・三脚に据えたカメラを、自分たちの行為がもっともリアルに移る場所への動かし調整しながら、自らの放尿場面を執拗に撮影しようとする。しかし、さすがにベッドの上では勝手が悪く、なかなか事が実行出来ない。
「こんな体勢だと無理だよ。」
普段着の男が言うと、袋の男はベッドの下の床に寝転がる。そして、普段着の男はベッドの上で力みながら、下にいる袋の男の口にめがけて脱糞することになるのだ。次第に興奮し、裸になる袋の男。カメラはその一部始終を至近距離から撮影し続け、ボカシが入ることもない。「えっ、マジで見ることになってしまうの・・・!?」というスリルと好奇心を喚起されながら、観客は目の前に提示される映像を「見る」しかない。

放尿シーンをうっすらと画面上に残しながら展開されるそのアニメは、とても暴力的で過激な内容。漫画でよく描かれる通称「巻きグソ」があちこちに落とされる光景だ。生きているものの上だったり、日本やアメリカの上だったり・・・。さらにはエイズ感染の広がりを髣髴とさせるイメージなどが、強烈なスピードで次から次へと展開される。密室で行われている放尿という行為が、アニメーションの挿入によって一気に「広がり」を持ち「別次元のもの」として立ち上がり、観客のイメージや思考を刺激する。そしてアニメが終わったと思いきや、ついに観客は放尿の場面を見てしまうことになるのだ・・・!
放たれたものを口に含む袋の男。興奮している。自らの身体や性器の周りに糞を塗りたくり、さらに興奮して自らの性器を弄び始める。放尿の終わった普段着の男はカメラを持ち、その姿をアップでカメラに記録する。つい先刻まで自分の身体の中にあった糞。それが今、目の前で袋を被った男の肉体に塗りたくられ、性的興奮の道具と化している。
あまりにも衒いがなくストレートにアップで映される「糞」の映像。最初はやはり嫌悪感を抱いた。「なんでこんなのアップで見せられるんだ・・・。頼むからズームのスイッチを押さないでくれ。」
しかし願いは空しくカメラは容赦なく、この世で最も「汚物」とされがちなものの姿をリアルに目の前に映像化する。

糞といっても、この世の中に当たり前に存在している物質であり、生々流転の一段階に過ぎない。人が口に入れた食べ物が、体内で消化された結果できるただの物体じゃないか。僕はなぜ、これを「汚物」として嫌悪し、「見つめる」ことすら拒否してしまうのだろう。
袋の男は「汚物」にまみれながらも興奮し、ついに射精する。カメラは、射精された男の白い液体までをも丁寧にアップで映し出す。その頃にはすでに観客は「汚物」を見慣れている。もう、なにが起こっても受け入れられるような感覚世界を漂っている。自らの判断する「清濁」の基準がグラグラと揺さぶられるような大地震が僕の内面世界で続いていた。その揺れは激しく、あちこちに傷をつけながら破壊を続け、いろんなものを粉砕してくれた。
第三のパートは、もう一度「第一のパート」のホテルの一室に戻る。ビデオカメラを覗き込んでいる男のが映し出される。つまり、今見た光景は、このビデオの男も見ていたものであるかのように思わされるカットつなぎである。

「この映画の最初のパートは、監視カメラにより撮影された映像である。」
・・・「えっ!?、まさか・・・」と驚かされるが、租借する暇もなく次の衝撃が。
ビデオカメラを覗き込んでいた男がファインダーから目を外すと、そこにいるのは他でもない「監督自身=キム・キョンムク」なのだ。第一のパートで中年男に身体を売っていた男娼の男とは、まったくの別人。つまり、全てが実写映像であるかのような捉えどころのなさとリアリティーを作品の柱にしておきながら、最後の最後に「作者が顔を出す」ことできっちりと映画全体を「フィクション化」して、この作品は終わるのだ。
キム・キョンムク・・・。どこまで人を翻弄すれば気が済むのか。
どこまで人として、ゲイとして、映画としての新たな領域を開拓しようとしているのか。
彼がこの作品に込めた社会風刺は、映画風刺、芸術風刺でもある。
つまり、自分も含めた「全てのもの」に対して、ナイフを突きつけてしまっているのだ。
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(FACELESS THINGS)
2005/video/65min
監督・製作・脚本・編集・録音
:キム・キョンムク
(KIM Kyong-Mook)
音楽:イ・ミンヒ
出演:キム・ジンフ キム・ジョンチョル
配給:キム・キョンムク
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LGBT可視化に向けて017●STN学習会④ 逆にアイデンティティ・クライシス

ILGA報告とDVD紹介のあと尾辻かな子さんは、今年の6月のアメリカ視察の話を、写真を紹介しながら話してくれましたよ。6月25日にはサンフランシスコでプライド・パレードを見に行き、パレードやイベント会場の盛況ぶりを見て、思わずこんなことを思ったそうです。
「あまりにもLGBTがたくさんいすぎて、私は今まで何に悩んで来たのかと、逆にアイデンティティ・クライシスになるくらいでした。」
うわ~。それってどんな感覚なんだろう・・・そういえば日本ではまだ「万単位」のイベントは実現できてませんから、海外に行かないとそのような光景は見ることが出来ないんですよね。僕もそんなクライシスを経験したいなぁと夢見てしまいました。もちろん国内で。
ちなみに、この時に見た写真と同じものは尾辻さんのブログに掲載されているので、リンクを貼らせていただきます。
あちらのパレードには多くの錚々たる企業がスポンサーとして名を連ね、企業広告のフロートもたくさん参加しているそうです。LGBTマーケットが有望市場として認知されて注目されている証ですね。沿道で見物する人の数も半端ではなかったようで、パレードを見るために尾辻さんは思わず、ゴミ箱の上に乗って、これらの写真を撮影したらしいですよ(笑)。●Happy Pride! サンフランシスコ・プライド・パレード
●プライド・パレード詳細 その1
●プライド・パレード その2
●プライド・パレード その3
●プライド・パレード その4

また、Capital Pride Street Festivalの会場では、ゲイやレズビアンらのカップルが子どもを引き連れている姿をたくさん見かけたそうです。こちらの記事の一番下の写真では、ゲイのパパが子どものオムツを換えている瞬間が見事に捉えられています(笑)。
そういえば映画「トランスアメリカ」の監督であるダンカン・タッカーさんも「子持ちのゲイ」らしいですよ。 北丸雄二さんの隔数日刊 | Daily Bullshit「トランスアメリカ」でインタビューが掲載されています。
それにしても、こうやってサバサバと語られると、細かいことでウジウジ悩んでるのがアホらしくなりますね~。自分の信念貫いて、好きな通りに生きている人ってやっぱり素敵です。「ゲイっていうか、ぼくはぼくに優しくしてくれる人とだったらだれとでも寝るよ(笑)。区別しないようにしてるのさ。」
「いろんな肌の色がある。セクシュアリティとかジェンダーってのも同じ数だけいろんな色があるんだってこと。」
尾辻さんは他にも、アメリカでの様々な経験を話してくれましたが、尾辻さんのブログにたくさん掲載されていますので、そちらをぜひ。写真があるから雰囲気が伝わってきますし、読み応えありますよ~。
さて次回は、会の最後に行われた質疑応答でのやりとりを紹介します。→FC2 同性愛Blog Ranking●PRIDE GUIDE 公式ガイドブック
●第2日目(13日)
●3日目(14日)
●ワシントン最終日
●テキサス。オースティンその2
●イクオリティ・プロジェクト・モントレーカウンティ
●サンフランシスコ、結婚証明書をめぐって
●トランスマーチ
●トランスマーチ2
●ダイクマーチ(DYKE MARCH)
●シアトル(6月28日)
●シアトル(6月29日)
●シアトル(6月30日)
★一枚目の画像は、尾辻かな子著「カミングアウト―自分らしさを見つける旅」
キム・キョンムク「顔のないものたち」●MOVIEレビュー①

おそるべき鋭利なナイフを持ち、隠すことなく堂々と表現者として駆使しているゲイの映像作家が韓国にいる。知性にあふれ、度胸もあり、ゲイである自分を開示することに躊躇せず、傷つくことを厭わない。世間の様々な既成概念に対して「映像」という道具で挑戦状を叩きつけ、観る者を揺さぶり翻弄し挑発している本物の芸術家。
『韓国インディペンデント映画2006』で上映された「顔のないものたち」の監督キム・キョンムクは、20代前半の無鉄砲さとそれを統制する知性を併せ持った・・・つまり若さと老成を併せ持った稀有な人物だ。これから彼は何に反旗を翻し何に挑戦し続けるのだろう。彼のような「鬼っ子」がいる韓国のゲイ・シーンは真の意味で幸運だ。
<注:このレビューの中には、性に関する直截な描写があります。>

「顔のないものたち」は、3つのパートに別れている。そのどれもが衝撃的かつ挑発的な内容なのだが、一つ目のパートは撮影方法も挑発的。「ワンカット撮影」なのだ。しかもカメラを部屋の片隅に固定し、まったく動かすことなく廻し続けてカットも区切らない。まるで監視カメラで「隠し撮り」した映像を覗き見しているかのような感覚に、観客を陥らせる撮影方法。
ありふれたホテルの一室に、小太り気味の中年男性がやってくる。煙草をくゆらし、何かを待っている様子。やがてその部屋に制服を着た若い男が入ってくる。二人は旧知の仲であるらしく親しげに会話を交わす。やがて若い男が中年男の背後から抱きつき、二人はこれから「そういう行為」をする関係なのだということがわかる。
肉体の接近から衝動的に始まるソファの上での性戯。しかし潔癖な中年男は若い男にシャワーを浴びさせる。その間、これから行う行為を思い浮かべてベッドの上で一人、自らをもてあそぶ中年男。

いよいよという時。いきなり黒いマスクを取り出して被る中年男。
「なにそれ、おかしいよ。」と突っ込む若い男。
「いいだろ、レイプしてるみたいで。」
顔を隠して行う「犯罪性」を演出し、自分の性的幻想を一方的に追求して興奮しようとする中年男。ただ従いながら全身を捧げ、好きなように弄ばれるしかない若い男。意志は肉体に従属する。でも、あながち嫌というわけでもなさそうだ。強引に奪われながらも若者の肉体は悦んでいる。そして精神も悦びの渦中にあるようだ。すべての意識は行為に集中され、2人で奏でる協奏曲は激しく昇り詰めて行く。ベッドを飛び出し様々な体位で、興奮の絶頂を迎える。

「君のこと全て好きだよ。」
「・・・どうでもいいってことか。」
若い男がつぶやく。
彼はなかなかクールに、自己と他者の心理を分析できる人物のようだ。
「今後も会いたい」と言いながら中年男は服を着始め、行為の代償である金銭を支払う。そう、これは売春の光景だったのだ。中年男には家庭があり、中学生の息子がいるらしい。つまり若い男とほぼ同年代の息子がいるのだ。
そのことに若い男が意地悪く突っかかる。
「息子さんもゲイかもね。性的嗜好は遺伝するらしいから。」
「ばか言うな。うちの息子は普通だ。」
「普通って何?。じゃあ僕は普通じゃないの?。」
「・・・。」
「奥さんもレズビアンかもよ。」
「何を言う。妻がどれだけ私のことを愛してくれているか・・・。」
むなしくなるだけの若い男。

一人、部屋に残された若い男はベッドにうつぶせになり、死んだように凝固する。そんな彼の姿まですべて、残酷なまでに冷徹にカメラは撮影し続けているものだから、観客もただ、映画館の暗闇から凝視し続けているしかない。
どの瞬間が真実なのか/嘘なのか。
どの言葉が真実なのか/嘘なのか。
どの行動が真実なのか/嘘なのか。
どの快楽が真実なのか/嘘なのか。
ノーカット映像から零れ落ちる様々な「隙間」から真実と嘘は混ざり合い、混淆し続けながら解釈不可能な時間として提示され続ける。それにしても、なんて豊かな感覚刺激なんだろう。
ちなみに、彼ら二人の「演技」を収録するためにキム・キョンムク監督は2週間かけて、綿密なリハーサルを行ったそうだ。プロの役者ではない素人の彼らを使い、30分以上のノーカット場面を完璧な演出で実現してしまう力量は、只者ではない。
次回はいよいよ2番目のパートについて。
・・・これがまた、さらにエキサイティングかつ、ショッキングなのだ。彼の映画について一気に語れてしまうほどの精神的体力を、僕は持ち合わせていない。

「顔のないものたち」
(FACELESS THINGS)
2005/video/65min
監督・製作・脚本・編集・録音
:キム・キョンモク
(KIM Kyong-Mook)
音楽:イ・ミンヒ
出演:キム・ジンフ キム・ジョンチョル
配給:キム・キョンムク
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工藤静香リスペクト013●28日の「HEY!HEY!HEY!」に出演!

この番組への前回の出演は宇多田ヒカルさんとのボーリング対決でしたが、ついつい毒舌な姉さんの「工藤節」が炸裂してしまい、ダウンタウンの松本さんに「ドSですね。」と突っ込まれていたのが印象的。今回もぜひ持ち前の「ドSぶり」を発揮して、笑わせて欲しいです~(笑)。
他にも続々と出演予定が公開されはじめました。(→PONY CANYONサイト参照)。雑誌媒体にも掲載がかなりあるようですし、9月13日には「グータンヌーボ」にも出るらしい。うわ~楽しみだ~。歌も楽しみだけど発言も楽しみなんだよね~。なにかと「はっきりと」物を言ってくれるから、いつもハッとさせられます。工藤姉さんならではのオモシロイ発言があったら、随時このブログで紹介させていただきますのでお楽しみに。

●「雪・月・花」以来!工藤静香・中島みゆき8年ぶりのコラボ・シングル
「Clavis-鍵-」
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