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フツーに生きてるGAYの日常

やわらかくありたいなぁ。

2006-07
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加藤治代「チーズとうじ虫」●MOVIEレビュー

 やわらかく、あたたかく。そして
 冷徹に見つめる「日常」の輝き


 デジタルビデオカメラで撮られた「ホーム・ムービー」的な映像から、こんなにも豊かな映画が登場するようになったことが本当に嬉しい。しかも、どこにでもありふれた「日常生活」を、気負わずに優しく映し続けることによって、こんなにも奇跡的な「深み」を持った作品が誕生したのだ。
 昨年の山形国際ドキュメンタリー映画祭では小川伸介賞と国際映画批評家連盟賞をダブル受賞。ナント三大陸映画祭ドキュメンタリー部門では最高賞を受賞するなど、国際的にも高く評価されたこの映画。「小さなこと」を真摯に、あたりまえの視線で見つめた作品が、多くの人々の心に染み入る普遍的な価値を持ったというその事実。
 まだまだ世界は捨てたもんじゃない。
 映画はまだまだ進化と深化の途上にあるのだ。

 娘のカメラを受け入れる母

 母親がガンを告知された。
 東京暮らしを中断し、群馬県の実家に帰り母と祖母との「女三人」での生活をはじめた加藤さん。やがて「母の姿を少しでも映像に残しておきたい」という思いでカメラを購入し、なんとなく撮影をはじめた。

 突然ぶしつけに日常をビデオで撮りはじめた娘に対し、最初は戸惑う母。ビクビクしながらも、あくまでも「撮れる時に」撮影を繰り返す娘。娘のそんな気持ちがやがて通じて行く中で、母は娘のカメラを優しく受け入れる。そして娘も撮影しながら母と対話を楽しめるようになる。そんな関係の変化が画面の隅々から滲み出ているところが面白い。そしてなにより、すべての瞬間に「撮りたくて撮った」という加藤さんの衝動が詰まっているから映像が澄んでいる。すなわち、この映画の全ては純粋な瞬間の集積なのだ。

 「ドラマティック」の反転

 病状が進み入退院を繰り返す母。娘は病室にもカメラを持って入るが、母が苦しんでいる姿は描かれない。そんな瞬間には、家族としては「撮影どころではない」からだ。従来の映画界的常識からしたらそれは「大事な場面を撮り逃した臆病者っ!」と糾弾されかねない行為なのだが、この映画はあくまでも常識的な「生活者」としての感覚の中で撮影されている。映画に命を賭けるのではなく、生活と共に映画がある。

 この映画で描かれるのはあくまでも、病院食を食べながらの「ほのぼのとした」母娘の会話だったり、いわゆるドラマティックとは程遠い「なんでもない時間」の積み重ねだ。しかし本当の意味では、そうした瞬間こそが実はドラマティックだったりすることに、この映画は気付かせてくれる。

 ガンが進行するにつれ、薬の副作用で母の髪が抜け始めても二人は冗談を言って笑い合いながら、一つ一つの現実を受け止めて行く。直接的には写されない分、カメラが廻されなかった時間の壮絶さが、かえって観客の脳裏に浮かび上がる。

 一緒に料理をしながら
 一緒に食事をしながら
 一緒にテレビを見ながら
 一緒にふざけあい、笑いあいながら
 一緒の時を過ごして、その瞬間が永遠に続くようにと願いながらも同時に「終わり」を受け入れて行く日常。その一つ一つは、二度と訪れることのない一回限りの生の瞬間。

 生の永遠を願っていてもやっぱり母の「死」は訪れた。しかし、残された娘と祖母は、これからも生きていかなければならない。

 でも、人は逞しい。過去の出来事を「思い出」という養分に変えて食べながら、「新たなる瞬間」を刻一刻と味わいながら生きて行く。娘が撮り溜めた完成途上のビデオ映像が、祖母の日常を彩ることの華やぎと残酷。

 この映画を見てからというもの僕は、場面の一つ一つを不意に思い出すだけで何度でも鳥肌が立つような感覚を味わっている。そして、心があたたかくなっている。思い出されるのはささやかな「なんでもない」瞬間ばかりだというのに。

 この映画、実はものすごく力を持った映画なのかもしれない。人を「生」に繋ぎとめる魅力を放つ、本当の意味での「強い」映画なのかもしれない。

 芸術の始原の姿は、この映画の中にある。

「チーズとうじ虫」
監督:加藤治代→公式サイト
●8月4日までポレポレ東中野でモーニング&レイト公開中(10:30~/21:10~)
●大阪・ 第七藝術劇場/ 広島・横川シネマ/金沢・シネモンド等で順次公開予定

●監督インタビュー掲載Webサイト
intro
MOVIE WALKER
週刊がん もっといい日
●作品紹介サイト
movie net
日刊スポーツ6月5日

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