「yes」創刊の波紋016●速水もこみち「太陽の季節」の隣に・・・

「yes」がっ・・・!
2006年6月18日
都内某所にて。
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「yes」創刊の波紋015●「社会派」路線も継続希望

さて、今回の「vol.3」の中身を読んでみて。
創刊号の頃の1ページ1ページから溢れまくっていた「初々しさ、たどたどしさ」はさすがに減り、雑誌としてのカラーが確立してきたのかな、という印象です。特に今回は今までよりも全体的に読みやすく、すべてのページを小一時間で読み通すことが出来ました。巻頭の松田聖子さんのグラビアから巻末の編集後記までの流れが「読者に心地よく」構成されているため、飽きずに熱中して読めるのです。
その反面、今回の内容は「カルチャー・ライフスタイル情報」寄りに絞られてしまい、ジャーナリズム的な側面が減少してしまったような気がします。これまでは創刊号での「アメリカのLGBTマーケットの紹介」や、vol.2での「シビル・パートナーシップ法のレポート」等、読み応えのある重量感のある特集が掲載されていて、視点も鋭く、この雑誌の特色の一つでもあったように思います。たしかに、それらの特集は読者として読み込むのには時間が必要でしたし、最初にパラパラとめくってみた時には読み飛ばしたりもしてました(笑)。なぜなら一見して「すぐには読めないだろうなぁ~」と思わされるほど、大量の文字でページが埋め尽くされていたからです。
しかし、そうした「ジャーナリスト的な視点」から書かれた記事こそ、最終的には一番、心に残るものでした。何度も手に取り、読み返す内容でした。記事で紹介された海外のLGBTたちの暮らし振りと日本の現状との差に愕然としながらも、「自分達のこれからについて」思いを馳せることが出来ましたし、大いに奮起させられる内容でした。
今回も「マイアミ・サウスビーチ」についての特集や「海外のLGBT映画祭」についての記事がそういう役割を果しているとは思いますが、印象としては今までよりも鋭さが欠けて「カルチャーガイド」の域に留まり、内容としての重量感は少なかったのかな、と思います。雑誌全体としてのビジュアル・イメージやグラビアの美しさ、レイアウトのデザインは洗練されていて素晴らしいのですが、3ヶ月に一度しか発行されない季刊誌ということもありますし、もう少し「読み応え」の部分にも、こだわり続けてほしいと思うのが、一読者としてのわがままな要望です。
記者が海外取材をすることも積極的に行なっているようなので、今後はリアルタイムでアクチュアルな問題に取り組むことも果敢に行なって欲しいです。たとえば先日モスクワでLGBTパレードが不許可になりネオナチに攻撃された「ロシアのLGBTカルチャーの現状」とか、兵役制度がある韓国の同性愛者たちは、どんな矛盾を抱えているのかなど。シビアな社会問題と向き合っている活動家達だけではなく、それとは無関係に普通に暮らしているLGBTたちの日常をも絡めて重層的に取材をすると、けっこう面白いのではないかと思います。特にロシアは今、「来年のモスクワ・プライドは実現できるのか?」と多くの国のLGBTたちが注目する存在になっていますから、面白いかもしれません。
今回の表紙に登場した松田聖子さんや、グラビアに登場したRIP SLYMEのように、新曲の発売やブランドの宣伝のために「yes」に登場することを希望するアーティストも増えて来ているようです。それは凄いことだとは思いますが、逆にそのことによる紙面上の制約も、今後発生してくるのだと思います。また、そうした「宣伝媒体」として活用されるだけでは、LGBTマガジンである特色も次第に薄まってきてしまうことでしょう。
各方面とのバランスを取ることは本当に大変だろうと推測されますし、スポンサー企業を確保することも、まだまだ日本の現状では厳しいものがあるのだろうとは思います。しかし「yes」には、消費を喚起するだけではなくLGBT的な感性ならではの鋭さとか、日本のLGBTの状況への問題提起をする側面も失ってほしくはありません。タイアップ企画により生まれた利潤をぜひ、「ジャーナリスティックな」記事の充実の方にも、振り向け続けてほしいなぁと思いました。
いつまでも保存しておきたくなるような、そして何度も読み返したくなるような雑誌。・・・そんな「yes」で、今後もあり続けて欲しいです。
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