「yes」創刊の波紋017●「vol.3」広告出稿企業一覧

さて今回は、「yes vol.3」に広告を出稿した企業とレーベルを列挙してみます。これらの企業のおかげで880円でこの雑誌を購入出来ることに感謝。決して安くはない広告宣伝費を、LGBTマーケット向けに出稿する英断を果たしたこれら企業の姿勢の先駆性は、素敵です!
▽裏表紙・・・いちばん広告料が高いページ
●BMG JAPAN →ニック・ラシェイ「ワッツ・レフト・オブ・ミー」
▽表紙裏~目次見開きまで&裏表紙裏・・・次に広告料が高いページ
●TOWER RECORDS/MTV/THE BODY SHOP (企業イメージ広告)
→BE SEXY.BE SAFE
●Victor Entertainment.Inc →Rasmus Faber「So Far」
→Rasmus Faberのページ
●映画「トランスアメリカ」 (TRANSAMERICA) (7月下旬~公開)
→ シネスイッチ銀座 他
●舞台版シザーハンズ (8/16~)
→セガサミーグループPRESENTS
●TOSHIBA EMI→ペット・ショップ・ボーイズ「ファンダメンタル」
→Pet Shop Boysのページ
▽記事中広告
●BoConcept (インテリア家具ショップ)
●ageHa →(GAY MIX PARTY「TRIBAL JOURNEY」 6/24開催)
●intoxicate→ ペドロ・マルティネス「重力の虹」
●TOWER RECORDS SUMMER SALE(6/20~7/2)
●GAY GAMES CHICAGO 2006(参加受付は7/1まで)
●Montreal 2006
→FC2 同性愛Blog Ranking
スポンサーサイト
「yes」創刊の波紋015●「社会派」路線も継続希望

さて、今回の「vol.3」の中身を読んでみて。
創刊号の頃の1ページ1ページから溢れまくっていた「初々しさ、たどたどしさ」はさすがに減り、雑誌としてのカラーが確立してきたのかな、という印象です。特に今回は今までよりも全体的に読みやすく、すべてのページを小一時間で読み通すことが出来ました。巻頭の松田聖子さんのグラビアから巻末の編集後記までの流れが「読者に心地よく」構成されているため、飽きずに熱中して読めるのです。
その反面、今回の内容は「カルチャー・ライフスタイル情報」寄りに絞られてしまい、ジャーナリズム的な側面が減少してしまったような気がします。これまでは創刊号での「アメリカのLGBTマーケットの紹介」や、vol.2での「シビル・パートナーシップ法のレポート」等、読み応えのある重量感のある特集が掲載されていて、視点も鋭く、この雑誌の特色の一つでもあったように思います。たしかに、それらの特集は読者として読み込むのには時間が必要でしたし、最初にパラパラとめくってみた時には読み飛ばしたりもしてました(笑)。なぜなら一見して「すぐには読めないだろうなぁ~」と思わされるほど、大量の文字でページが埋め尽くされていたからです。
しかし、そうした「ジャーナリスト的な視点」から書かれた記事こそ、最終的には一番、心に残るものでした。何度も手に取り、読み返す内容でした。記事で紹介された海外のLGBTたちの暮らし振りと日本の現状との差に愕然としながらも、「自分達のこれからについて」思いを馳せることが出来ましたし、大いに奮起させられる内容でした。
今回も「マイアミ・サウスビーチ」についての特集や「海外のLGBT映画祭」についての記事がそういう役割を果しているとは思いますが、印象としては今までよりも鋭さが欠けて「カルチャーガイド」の域に留まり、内容としての重量感は少なかったのかな、と思います。雑誌全体としてのビジュアル・イメージやグラビアの美しさ、レイアウトのデザインは洗練されていて素晴らしいのですが、3ヶ月に一度しか発行されない季刊誌ということもありますし、もう少し「読み応え」の部分にも、こだわり続けてほしいと思うのが、一読者としてのわがままな要望です。
記者が海外取材をすることも積極的に行なっているようなので、今後はリアルタイムでアクチュアルな問題に取り組むことも果敢に行なって欲しいです。たとえば先日モスクワでLGBTパレードが不許可になりネオナチに攻撃された「ロシアのLGBTカルチャーの現状」とか、兵役制度がある韓国の同性愛者たちは、どんな矛盾を抱えているのかなど。シビアな社会問題と向き合っている活動家達だけではなく、それとは無関係に普通に暮らしているLGBTたちの日常をも絡めて重層的に取材をすると、けっこう面白いのではないかと思います。特にロシアは今、「来年のモスクワ・プライドは実現できるのか?」と多くの国のLGBTたちが注目する存在になっていますから、面白いかもしれません。
今回の表紙に登場した松田聖子さんや、グラビアに登場したRIP SLYMEのように、新曲の発売やブランドの宣伝のために「yes」に登場することを希望するアーティストも増えて来ているようです。それは凄いことだとは思いますが、逆にそのことによる紙面上の制約も、今後発生してくるのだと思います。また、そうした「宣伝媒体」として活用されるだけでは、LGBTマガジンである特色も次第に薄まってきてしまうことでしょう。
各方面とのバランスを取ることは本当に大変だろうと推測されますし、スポンサー企業を確保することも、まだまだ日本の現状では厳しいものがあるのだろうとは思います。しかし「yes」には、消費を喚起するだけではなくLGBT的な感性ならではの鋭さとか、日本のLGBTの状況への問題提起をする側面も失ってほしくはありません。タイアップ企画により生まれた利潤をぜひ、「ジャーナリスティックな」記事の充実の方にも、振り向け続けてほしいなぁと思いました。
いつまでも保存しておきたくなるような、そして何度も読み返したくなるような雑誌。・・・そんな「yes」で、今後もあり続けて欲しいです。
今後も期待してます!→FC2 同性愛Blog Ranking
●「yes」オフィシャル・サイト
ジャック・ベッケル「モンパルナスの灯」●MOVIEレビュー

1959年に亡くなったフランスの俳優ジェラ-ル・フィリップ。最近、彼の映画祭が頻繁に開催されている。先日、池袋の新文芸坐で行われていた映画祭に、はじめて出かけてみたのだが驚いた。超満員なのである。しかも客席のほとんどを中・高年の方々が埋めている。女性が圧倒的に多いのだが男性もけっこういる。ジェラ-ル・フィリップとともに1950年代の映画全盛期を体験した世代なのだろうか。絶世の美男子であり、理知的な名俳優だった彼にスクリーンで会うべく、今でもワクワクしながら出かける人たちがこれほどたくさんいる。そのことにまず感動した。
余白の豊かさ
映画は画家モディリアーニの生涯を描いたものなのだが、どうしても以前見たミック・デイヴィス監督の「モディリアーニ~真実の愛~」と比較しながら見てしまう。「モディリアーニ」の方は最近の映画なので予算をふんだんにかけ、ロケ・セットも豪華に組みエキストラも大量に動員しながら、めくるめく映像技術を駆使して彼の人生絵巻を派手に具現化していた。
それに比べ「モンパルナスの灯」は地味である。ドラマティックな展開は最小限に抑えられ、過度なBGMを抑制し、主演のジェラ-ル・フィリップの演技に観客の視線が集中できるように作られている。きっと余計な小細工などは必要ないのだ、一人の名優さえいれば。

この映画はモノクロであり、セットも美術も最小限。物語としてもモディリアーニが晩年、貧しさの中で芸術家であり続けようと格闘した姿を丁寧に繊細な芝居で見せている。演出には程よい抑制が効いていて、余白や「間」がたくさんあるから観客は自由に想像の翼を羽ばたかせることができる。
めくるめく映像技術の発達とリアリティー表現の追求が名画を生み出すとは限らない。むしろ表現技術の追求ばかりに目が眩み、映画の表現を「貧困」なものにしてしまっている場合もある。「モンパルナスの灯」は素朴な映像技術で簡素に作られているので余白がたくさんある。しかし余白が観客に提供してくれる精神性の豊かさについて気付かせてくれる映画でもある。
死ぬのを待たれていた画家
数々のモディリアーニ伝説の中でも「モンパルナスの灯」で監督が浮かび上がらせたのは、当時の美術界の「闇」の部分である。モディリアーニは生前、ほとんど評価されなかった。しかし実は彼の才能に目を付けていた画商がいたのである。
リノ・ヴァンチュラが演じた画商モレルは、モディリアーニが評価されそうになるとわざと悪評を振りまき、つぶして廻る。しかし内心では彼の才能を評価していて、画家本人が死んだら安値で買い取り、高く売り出すことを企んでいたのだ。無表情でじわじわと、モディリアーニを邪魔し続ける彼の存在感。その策略家ぶりは身震いするほどリアリティーがある。

●ジャック・ベッケル「モンパルナスの灯」
●ジューン・ローズ「モディリアーニ―夢を守りつづけたボヘミアン」
●ジェラール・フィリップDVDセレクション 1
●ジェラール・フィリップ DVDセレクションII
関連記事
●ミック・デイヴィス「モディリアーニ~真実の愛~」●MOVIEレビュー
→FC2 同性愛Blog Ranking