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フツーに生きてるGAYの日常

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ブロークバック・マウンテンで見る世界010●アカデミー賞翌朝の新聞報道




 日本時間では3/6(月)午後1時台に発表された第78回アカデミー賞。

 翌日7日付の新聞各紙は、「クラッシュ」が最優秀作品賞、「ブロークバック・マウンテン」が監督賞という結果を、どのような表現で報道したのでしょうか。両映画に関わる部分を記事から抜粋し、メディア分析的な観点から見てみることにします。

☆記事中の「~」は、中略を意味します。

●朝日新聞・文化欄
アカデミー賞 社会派の力作競い合う 娯楽・メジャー作品は苦戦

 ~作品賞を含め脚本・編集賞をとった「クラッシュ」(ポール・ハギス監督)は、様々な人種・階層の人たちが織りなす36時間の群像劇。最初はバラバラだった登場人物たちが一つの交通事故で次第に結びつく構成が見事だった。製作費7億6千万円、撮影期間35日は、ハリウッド水準では小規模だ。
 若いカウボーイの同性愛を正面から取り上げた「ブロークバック・マウンテン」は前哨戦のゴールデン・グローブ賞を制するなど前評判は高かったが、監督賞、脚色、オリジナル音楽の3部門。同性愛をメインテーマにした映画が作品賞を受賞したことはなく、アジア系の映画人が監督賞をとったこともない。二つの壁に挑んだリー監督だったが、結果は一つを超えるにとどまった。
 リー監督は「2人の登場人物は社会が否定するゲイの人たちのことだけでなく愛そのものの偉大さを訴えた」と語った後、「台湾、香港、中国の方々、ありがとうございます」と受賞のあいさつを締めくくった。
 アカデミー賞に詳しい評論家の川本三郎さんは「今年は社会性の強い力作がそろったうえ、大半がメジャー作品でなかったのが面白かった。個人的には『ブロークバック・マウンテン』と思っていたが、やはり同性愛が保守派の会員に敬遠されたのだろう。それでも監督賞はアン・リーに与えて、バランスをとった。アジア出身監督の快挙に拍手を送りたい」と話す。~(斉藤勝寿記者)

☆記事中でコメントが紹介されている川本三郎さんは、僕の大好きな映画評論家です。文章に評論家っぽい「気取り」とか「偉そ~なエリート臭」がなく、すごく面白いんです。
 中央公論新社から 「アカデミー賞~オスカーをめぐるエピソード~」 という本が出ています。最近読んでみたら、オスカーを巡る歴代の悲喜劇がわかりやすく書かれていて、すごく面白かったです。おそらく、数々の「アカデミー賞」絡みの記事の「ネタ元」として、多くのマスコミ関係者に愛用されているのではないかと思われます。

●毎日新聞・社会面
アカデミー作品賞に「クラッシュ」

 ~ロサンゼルスを舞台に人種差別に焦点をあてた「クラッシュ」(ポール・ハギス監督)が、最優秀作品賞、脚本賞、編集賞の3部門を制した。監督賞は、カウボーイ同士の恋愛をテーマにした「ブロークバック・マウンテン」のアン・リー監督。リー監督は台湾出身。アジア系での監督賞受賞は初めてだ。同作品は脚色賞、作曲賞も獲得している。~(國枝すみれ記者)

☆この記事の特色は「同性愛」という言葉を使わず「カウボーイ同士の恋愛」と表現しているところ。記者の意図はわかりませんが、同性愛が自然なものだという認識が浸透したならば、かえってこの方が自然な表現であるように思います。

●毎日新聞・コラム「ひと」
アジア人で初めてのアカデミー賞監督賞 アン・リーさん 
心が動くものを撮る 自分の文化を大切に

 ~米国で同性愛をテーマにした映画を作ることは冒険だった。俳優を見つけるのにも苦労し結局、映画化までに8年以上かかった。04年11月、全米11州で同性結婚を禁じる州法が成立。反同性愛キャンペーンは今も保守派を中心に続いている。
 「思いを映画にする必要を感じたのはしばらく前だが、最近になって社会が追いついてきた。我々の心の叫びを受け止めてくれたことがうれしい。観客は愛、理解、尊重、といった複雑で成熟したものを求めている。」
 台湾から渡米して約30年。米国社会の描き方も熟知している。「グリーン・デスティニー」と「ハルク」を監督して疲れ果て、引退も考えたが、「ブロークバック・マウンテン」では原点に戻って楽しめたという。
 ~「心が動くものを撮る。正直に、勇気を持って、自分の文化を大切にしながら、ベストを尽くす。私はそうやって道を開いた」(國枝すみれ記者)

☆監督の写真入り記事。映画化までに8年かかったのに諦めなかったアン・リー監督の執念を紹介しています。ハリウッド映画界で出世し、大作映画を手掛けることでいろんな「しがらみ」に疲れはじめた監督が「本当に作りたくて作った映画」なのだということを伝えるインタビュー記事です。
 特に「観客は愛、理解、尊重、といった複雑で成熟したものを求めている。」という言葉からは、アン・リー監督の「観客を信頼した姿勢」を感じます。

●読売新聞・社会面
アカデミー賞 クラッシュ3冠 作品・脚本・編集

 ~ロサンゼルスを舞台に様々な人種や階層の衝突を描いた群像劇「クラッシュ」(ポール・ハギス監督)が作品、脚本、編集の3部門で受賞した。
 本命視されていた「ブロークバック・マウンテン」をはじめ、作品賞は強敵ぞろいだったため、プロデューサーのキャシー・シュルマンさんは授賞式で「私たちは他の作品と比べて劣っていたもので・・・」と思わずスピーチ。
また、受賞後のインタビューでハギス監督らは「受賞した瞬間は信じられなかった。(結果は)衝撃だよ。今も受賞したことを理解しようと努力している」と話した。
 一方、台湾出身のアン・リー監督による「ブロークバック・マウンテン」も監督、脚色、作曲の3部門で受賞。アジアの監督として初めて監督賞のオスカー像を手にした。記者会見では、「アジアの映画人にアドバイスを」という質問に、「ルーツである文化を誇りにして、正直に勇気を持って進んでほしい。それ以上の道はない」と答えた。~(原田康久記者)

☆たしかに授賞式の中継を見ていても、「クラッシュ」関係者の青天の霹靂に遭ったかのように驚いた表情が印象的でした。その「サプライズぶり」を捉えた記事です。

●日本経済新聞・社会面
米アカデミー賞作品賞に「クラッシュ」 監督賞にアジア初のリー氏

 ~作品賞に米国の複雑化する人種問題を取り上げた「クラッシュ」が選ばれた。「クラッシュ」は主要賞の一つ、脚本賞も受賞した。
 作品賞を含む最多の8部門でノミネートされた「ブロークバック・マウンテン」は、台湾出身のアン・リー監督がアジア系で初めて監督賞を受賞した。カウボーイ同士の同性愛を描いた同作品は作品賞の本命とされたが、米世論を二分するテーマだったため投票権を持つ映画芸術科学アカデミーの会員から十分な支持を得られなかったとみられる。~(猪瀬聖記者)

●産経新聞・社会面
作品賞に「クラッシュ」 アカデミー賞「ハウル」は無念

 ~メーンの作品賞にはロサンゼルスを舞台に人種差別問題に切り込んだ「クラッシュ」(ポール・ハギス監督)が選ばれた。当初、最多8部門で候補にあがり、ゲイのカウボーイの悲恋を描いた「ブロークバック・マウンテン」は作品賞を逃したが、アン・リー監督(51)が初の監督賞を獲得した。~(岡田敏一記者)

☆この岡田敏一記者は、先日この記事で紹介したFuji Sankei Business iにも鋭い分析記事を寄稿している人です。早速、3/7の同紙にもなかなか鋭い批評記事が掲載されていたのですが大事なトピックであるため、日を改めて紹介しようと思います。

●東京新聞・芸能面
“本命”苦戦 賞が分散 アカデミー賞総評
作品賞「クラッシュ」・米社会の矛盾問う
監督賞リー監督・愛のありよう、光る演出

 今年は作品賞候補5本とも娯楽大作というより社会派ぞろいだった。作品賞の「クラッシュ」は、ロサンゼルスを舞台にした群像劇。暴力の連鎖や人間関係の複雑さをリアルに描いたのが地味だが評価された。一方「ブロークバック・マウンテン」は、根強く残る同性愛への偏見が、保守的といわれるアカデミー会員に避けられたといえようか。
 ただ、監督賞のアン・リー監督は台湾出身だが、ハリウッドで実績もあり、あの大自然をバックに、愛のありようを嫌みなく描いた演出が良かった。「社会が否定するゲイというより、愛がいかに素晴らしいかを訴えた」という監督のメッセージが印象的だった。~(大谷弘路記者)

☆カラーの写真入りで、かなり大きなスペースを使っての特集記事。「愛のありようを嫌味なく描いた」という表現は秀逸です。

●サンケイスポーツ・芸能面
アカデミー賞授賞式 34億円女優オスカー獲った

 ◆映画評論家・水野晴郎氏「~作品賞に関しては、『ブロークバック・マウンテン』が有力だと思っていましたけど、現代的な問題を描いた『クラッシュ』に比べて、ローカル色が強かったのかもしれないね。男性の同性愛を描いた物語に、拒否感があったのかもしれない。全体的には社会的な問題を扱った作品が表立っていて、例年に比べてちょっと作品的な派手さに欠けたかな」

☆めずらしく主演女優賞のリース・ウィザースプーンさんを大々的に報道。スポーツ紙は総じて「自社に関係の深い配給会社」の映画を大きく取り上げる傾向にあるみたいで、本来ならばメインであるべき作品賞と監督賞についての記述が異様に小さかったです。
 それにしてもこのコメント。映画「シベリア超特急」シリーズで独自の美学を追求中の水野さんにしては、当たり障りがなくてつまんないなぁ~(笑)。

●夕刊フジ・芸能面
予想外の結果だったアカデミー賞
本命「ブロークバック~」アジア監督初栄誉でバランス

 5日(現地時間)発表された米アカデミー賞は、主要部門で賞が見事に割れる予想外の結果に終わった。本命視された「ブロークバック・マウンテン」がアン・リーの監督賞の他、脚色賞、作曲賞の3部門に留まったのが驚き。カウボーイ同士の禁断の愛が敬遠されたと映るが、アジア人監督に初の栄誉を与えることで一種バランスを取ったともいえる。
 事故をめぐる群像劇で、人種差別問題を絡めた濃厚な人間ドラマ「クラッシュ」は作品賞、脚本賞、編集賞の3冠で質の高さを証明。既に公開中だが、このハッピー・サプライズで、客足がどこまで伸びるか。~(折田千鶴子記者)

☆出た~禁断の愛!(←いまどき真面目にこんな表現するんですね~。笑)

総じて・・・

 翌日の新聞報道というのは「速報性」と「事実の伝達」が最優先されるため、あまり突っ込んだ内容にはなりません。その中で毎日新聞がコラム「ひと」でアン・リー氏のインタビュー掲載を事前に予定していたことからもわかるとおり、おそらく各紙とも「ブローク・バック~」の作品賞受賞に合わせた記事が予定されていたことが窺えます。そして作品賞を逃した理由としてとりあえずは「同性愛への根強い偏見」を理由に挙げる記事が大勢を占めていました。
 賞の結果について検証する記事はその後、続々と出てきています。当ブログの目的は速報性ではなく、その「報道の検証」にあるため、少しずつ取り上げて行こうと思います。


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メゾン・ド・ヒミコで未知との遭遇016●オダギリジョーさんと犬童一心監督が韓国へ

 1月26日から韓国の単館系で公開されている映画「メゾン・ド・ヒミコ」(Mezon Do Himiko)ですが、観客動員は好調で既に7万人を突破。現在7つの映画館で上映されているようです。 (→朝鮮日報3/7)
 また、これを受けて本日から監督の犬童一心さんと主演のオダギリジョーさんがPRのため韓国を訪問。11日には韓国ファンとの出会いの場を計画、オダギリジョーさんは12日午後、延世大学新千年ホールで約1千人のファンとトークショーを予定しているそうです。
(→Innolife.net)
 当ブログにも最近、「オダギリジョー」検索で韓国の方が訪問してくださったりと、韓国でのオダギリさんの人気は本当にスゴいみたいです。(日本でもスゴイですが。)
 今回の訪問が、さらなるヒットと公開のロングランに繋がりますように~(祈念っ!)

●日本でも二番館系で依然公開中。
東京地区→三軒茶屋中央劇場・・・古くて独特な雰囲気のある映画館です。
 3/18(土)~11:15/15:30/19:40~21:51(終)・併映「誰がために」
大阪地区→ 千里セルシーシアター
 3.14(火)~3.17(金) 14:50~17:09(終)
 3.18(土)~ 10:00/17:30/20:00~22:19(終)
四国地区→シネマ ルナティック湊町
 3/11(土)~3/17(金) 10:25~12:40(終)

●さまざまな映像特典の付いたDVDも発売中

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ブロークバック・マウンテンで見る世界009●ロイター誤報で感じた「危険」

 「早とちり」には深層意識が表れる

 先日の記事の「追記」部分でも触れましたが、アン・リー監督がアカデミー監督賞を受賞した時のスピーチを報じた中国メディアについて、国際通信社ロイターが「早とちり」な報道をしたことがわかりました。
 監督が「台湾、中国、香港のすべての人々に感謝する」と述べた部分と「ゲイのカウボーイ2人に感謝したい」と述べた部分を、 中国の「どのメディアも」報じなかったと明記 されていたのですが、実際には報じていたメディアもあったのです。

 ロイターといえば大手マスコミの多くが記事を買いますから、朝日新聞やYAHOO!NEWSなど、日本の多くのニュースサイトがそのままの形で報道。しかし、これを見て間違いに気付いた方がロイターに直接抗議をした結果、 記事が修正され再送信される という事態になりました。

 当ブログでも朝日新聞の記事を引用していましたが、ロイターに抗議をした方が間違いを知らせてくださったお陰で、この事に気付くことができました。その方にリンクを許可していただきましたので、紹介します。
 「ぐり日記」というブログを書いている「ぐりさん」という方で、3/7付 「今日も物申します」 という記事でロイターの誤りを指摘。その後、ロイターによる返答が3/9付 「踊る阿呆にみる阿呆」で紹介されています。(注:ロイターへの抗議は、ぐりさん以外にも多くの人々から寄せられた可能性があります。)

 中国国内のメディア状況は、我々が中国の人々の生活を知る上で大切な要素です。今回の誤報は、例えば日本のことをよく知らない海外の人達から「日本人はNHKからしか情報を得ていない」と思い込まれたようなものであり、大きな誤解が生じてしまいます。

 通信社やマスメディアが配信する記事といえども、もとは個人が記したもの。その後、複数人のチェックを通過して配信されるのでしょうが、この「早とちり」がそのまま報道されてしまった背景には、記事を書いた人やロイター通信関係者による中国社会への「無知」と「思い込み」を感じます。相手のことをよく知らないまま「思い込み」で判断するところから差別や偏見が生まれるということを、影響力のあるメディアの関係者にはもっと自覚して欲しいと思いました。

 そして、それは我々個人レベルでも言える事。
 メディアを通して断片的にしか知りえない他国の情報。そのわずかな情報を過度に信頼し、過大解釈して「知った気になってしまう」ことの危うさ。そのことに気付かせてくれる出来事でした。




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