ゲイと父親との関係~ジョージ・マイケル報道で考える

彼の半生を描いた映画「ジョージ・マイケル~素顔の告白~●MOVIEレビュー」を見た人ならば「なるほどな。」と思うところがあるでしょう。彼は母親と非常に仲が良かったため、亡くなってからはショックでしばらく精神のバランスを崩し、歌手活動を休止していたという過去があります。あの「トイレでカミングアウト」事件は、その時期に起こった事でもあるのです。
ジョージ・マイケルは、ある時期までは「マスコミ嫌い」として有名であり、あまり自分のことを語らないスターとしてカリスマ性を保持していました。しかし最近は、なんでも開けっ広げに語る直言派で毒舌家でもある素顔を、惜しげもなくマスコミの前に晒しています。映画の中ではそんな彼のキャラクターが最大の魅力になっているのですが、そんな最近の彼の言動はイギリスの芸能マスコミにとっても格好のターゲットになっているようです。
現在ではとても仲の良いエルトン・ジョンとも、一時期大喧嘩をしてメディアをにぎわしていたようです。映画の中ではエルトン・ジョンは、ジョージの音楽的才能を手放しで褒め称えています(極端すぎ。笑)。なんだかこの二人のゲイ・ミュージシャン同士の関係も人間らしくて面白いですね。
そんな数々の記事の中で、僕はこれがいちばん気になりました。
→「G・マイケル、成功したのは父親の無関心のおかげ」
そういえば映画の中で、ジョージは父親について何も語りませんでした。まるで母子家庭で育ったのかと思うほどだったのですが・・・やはり、父親とはかなり重度の「不仲」だったというわけですね。これは興味深い事実です。なぜなら、自分も含めてゲイの中には「父親と上手く関係が築けていない」人が多いだろうと思うからです。
あくまでも僕の例をあげると、僕が成長するにつれ、父とは相性が合わなくなりました。父親というものは、自らの願望を子どもに託したがるものです。父が僕に「男らしい男」であることを望んでいるのがわかったけれども、僕がその期待に応えることは自分に無理をしないと出来ませんでした。幼くて素直だった時期は従うことは出来ていたのですが、自我が芽生えるにつれて辛くなり、反抗期にありがちなことではありますが、父親とは一切口を利かない時期がありました。
父が僕のことを、不可解で不思議な生き物を見るような眼で見ていた記憶もあります。(僕も父に対して似たような感情を抱いていたのでお互い様ではあるのですが。)そのことに気付きはじめたとき、父との関係に決定的な溝が生れました。
しかしその反面、僕の心の奥底では強烈に「父性」を求めてしまうのです。好きになるのは決まって、包容力のある兄貴のような人でした。父に対して開放出来ない感情を発散することの出来る人を、僕は求める傾向にあります。
ゲイは「生まれつき」なるものか、「後天的に」なるものかという議論がありますが、人それぞれ、様々な要因が絡まり合ってゲイになるわけで、答えの出る議論ではないように思います。
ジョージ・マイケルは「子供のとき父親から励ましの言葉をかけられたことなど、ほとんどなかった」そうです。さらにこんなことも言っています。
「でも、逆境を活かす人は多いだろ。僕も父親を見返してやりたくて頑張ったんだ。無意識に彼に反発することで、世界的に成功したアーティストの1人になれたんだと思うよ」
成功と引き換えに様々な泥水を飲んで来たであろう彼の生涯。間違いなく父親との軋轢が彼の反抗心を刺激して、自己表現の原動力になったようです。しかしその反面、いまだに彼を苦しめ続ける心の空洞を作ってしまったことも事実。僕には父との軋轢という共通点があるので、彼のゲイとしての精神状態が、ある程度は理解できるのです。
よく考えてみると、子どもと上手くコミュニケーションの取れない「不器用な父親」って、たくさんいますよね。愛情表現の不器用さを「男らしさ」として許し、「美徳」だと考える風潮もこの国には根強くあります。僕はそういうのが大嫌いです。
不器用な男が称賛される社会というのは、僕のように「父性」を求めて男性を好きになる男をたくさん生み出すのではないかと思います。社会のシステムの落とし子として。
ちなみに・・・今では父との軋轢はだいぶ薄まりました。コミュニケーションはお互いの問題であり、父だけではなく僕自身にも問題があることに気づいた途端、柔らかくなれたからです。相変わらず僕はゲイであり続けているけれども(笑)。
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工藤静香「雪・月・花」②●名曲レビュー007

何かを私に与えてくれるのならば
ひとつだけ与えて
自由をください
あなたを愛してもいいという
自由だけをください
解き放して 私を早く
縛らないで 私を早く
あなたなしで生きる未来の寂しさから
自由にしてよ
なんにもわかっていない人ね
雪・月・花
移ろわないのが恋心
雪・月・花
ひたすらつのるばかり
Ah・・・
words,music:中島みゆき
arrangement:瀬尾一三
●前回に引き続き「雪・月・花」。二番の歌詞は、ますます激しさがエスカレートするのです。
●中島みゆきの詩世界は、毒を毒のままでポーンと聴き手に放り投げてくるのが特徴。偽善というオブラートで表面を清潔に包まないからこそ、聴き手の心に直接突き刺さってしまう。
狂気が生み出す「凶器」のようなものである。
●「移ろわないのが恋心」と断言し、その思い一色で最後まで攻め続けるのがこの歌の強さ。なんのためらいもなくそう思えることって、一生のうちにそうあるものではない。ついにはそんな思いを持たずに生涯を閉じる人もいるだろう。だからこそ、幸運にも狂うべき時を迎えたら、あとさきの事など考えないで思いっきり狂うべきなのだ!(注:命を落とさない程度にね。笑)
●この歌の持つ激しさが「最近の自分からは遠のいたなぁ~」と感じてしまったら気をつけよう。人として「アガッてしまった」証拠なのかもしれないから。

「雪・月・花」
収録アルバム
「Best of Ballade カレント」
「Millennium Best」
「中島みゆき SONG LIBRARY BEST SELECTION」
PV集
「female 5&6 」(DVD)
中島みゆき版「雪・月・花」収録アルバム
「おとぎばなし-Fairy Ring 」
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