たかがテレビ014●「ゲイバー科」って、なんぞや?

何気なくテレビ欄を眺めていたら「ゲイバー科」の文字がっ!
今夜(3/28)日本テレビで、コミックスを原作としたスペシャルドラマ「都立水商」が22:00から放送されます。
●日本テレビ「DRAMA COMPLEX」公式サイト
今回のサブタイトルがまたすごい。
「春休みスペシャル企画・都立水商/日本初水商売のプロ養成高校!ホステス科ゲイバー科他…現役おミズが教える抱腹絶倒学園コメディ!!落ちこぼれ学生の奇跡 」
確かに、こんな感じで「ホステス科ゲイバー科」って書かれると目を引くし好奇心が刺激されます。僕も見事にひっかかりましたし(笑)。
今夜も裏番組では強敵・細木数子サマが女子高生とジャッキー・チェンを「ぶった斬る」そうですから、それに負けないインパクトが必要だったのでしょう。「春休みスペシャル」と銘打つということは、小・中・高生あたりを視聴者ターゲットとして設定しているのでしょうが、ここではどんなゲイたちが出てくるのでしょ~か。そこらへんに興味津々です。(だいたい想像つくけど。)

他にドラマ化の原作本
「水商売を学ぶ学園モノ」っていう設定に惹かれます。
「学園モノ」に付きものの「説教臭さ」とか、おせっかいな「啓蒙の押し付け」が大っ嫌いな僕としては、そういう従来のパターンを批評しているのかもしれないコンセプトに惹かれます。
ゲイ的には・・・ちょっと心配(笑)。こういう漫画をドラマにする時はキャラクターをカリカチュアするのが必要条件だけど、「ゲイバー科」に通うゲイたちや講師もきっと、「おネエ」全開の異常にハイテンションな人たちが、視聴者の期待通りに「おかまキャラ」で笑わせ役として出てくるんでしょうからね~。これ以上「カバちゃん」タイプのゲイ・イメージが増殖するのはウンザリなんですが・・・。
とりあえず2006年の日本において、全国ネットのテレビ番組でゲイがどう描写されるのかを、
意地悪くチェックしとこうと思いま~す。→FC2 同性愛Blog Ranking
王の男ブームを追う004●同性愛を描きながら「異端視」されない理由

韓国メディア
かたや「ブロークバック・マウンテン」は「同性愛描写」が問題視され、中国やUAEなどのように上映禁止を決める国もあればアメリカ国内でも上映中止運動が起き、アカデミー作品賞を逃した理由に挙げられたりしているのに、なぜ韓国で「王の男」は国民的な爆発的ヒットを記録しているのでしょう。
このことに関して、昨日の記事を見てくださった方から、とても興味深いサイトを紹介していただきました。
韓国のゲイ小説家ハン・ジュンヨルさんの「王の男」に関するレビューです。
これは2006年1月に韓国の「戦う新聞」として有名な「ハンギョレ21」に掲載されたものを日本語訳したものです。韓国のゲイとして「王の男」ブームへの戸惑いが率直に綴られており、映画の内容を推測する上でも面白い文章です。ぜひ読んでみてください。
→ハンギョレ21 594号「過度に美しいゲイロマンス」
<彼のレビューを要約します。
映画「王の男」のネタばれ的な要素も含みますので、ご注意ください。↓>
映画「王の男」は韓国映画の興行成績を塗り替え、多くのメディアがその要因を分析しているにも関わらず「同性愛」に言及するメディアがほとんどないのは異常だ。なぜ「王の男」は、従来の同性愛描写映画に貼られがちだった「Queer(風変わりな)映画」というレッテルを、観客や批評家から貼られずに済んでいるのか。
①「過度に美しいため」ではないか。
・・・主人公コンギルの「しとやか」な描写など、映画の中の男たちの愛が美しく見えるように描かれている。
②「少しでもホモフォビアたちの神経に触る性的表現をすべて排除したから」ではないか。
・・・恋人たちは「熱い視線だけ」を交換する。セックス描写を避けたのは利口な演出だ。ホモフォビアは「同性愛」というとすぐに「肛門性交」を連想して身震いするから。
③男たちの愛を「互いに対する終わりのない配慮と犠牲」として描いているからではないか。
・・・ホモフォビアたちが彼らの愛を「汚い」と悪口を言う根拠が一つもない。
↓
過度に美しい同性愛という理由で, どちらかといえばこの映画は大多数の観客からは同性愛映画とは見なされないようだ。 彼らが知っている同性愛とは、このように美しくはありえないのだ。 あたかも、この映画を同性愛映画だとされた瞬間, 映画の価値が一瞬にして下落でもするかの様に。
同性愛から同性を離れて愛だけを描写したこの映画は、誰かの話のように一編のよく作られた‘ボーイロマンス’なのかもしれない。
↓
エロチックなセックス描写がなく、慇懃な目くばせだけでもあらゆる事を表現できるゲイロマンスも存在するのだ。同性愛者も、異性愛者と同じように映画を通して夢を見る権利がある。このような「美しい愛」を夢みるQueerたちのためのロマンス映画がたくさん登場することを願う。

ハン・ジュンヨルさんは「王の男」の大ヒットと国民映画的な地位の獲得は、「同性愛コード」を戦略的に「隠した」からだと捉えているようです。これは、今までの同性愛映画史から言っても珍しいことではありません。
ドキュメンタリー映画「セルロイド・クローゼット」
時には設定を改変させられたり、企画そのものが中止になることもあったようです。
なぜならハリウッドにおいては60年代まで「同性愛」をスクリーンに映し出すことが自主規制機関のチェックにより禁止されていたからです。

「真夜中のカーボーイ」
(→「真夜中のカーボーイ」を最近見直し、そのことを確信しました。この映画に隠された「同性愛コード」分析を近々、掲載します。)
現在の韓国は「男性のみが徴兵される」兵役制度が依然敷かれており、「男が男らしくあること」を国として奨励している社会です。
(→ 「ウォンビン兵役報道に思う」参照)
そのような社会では男同士が愛し合うことは「非生産的」なことだと見做され、軽蔑や嘲りの対象になりがちです。
しかし「王の男」は、近代以前ではありますが旅芸人と宮廷の王が「愛しあう」姿を歴史劇として堂々と描き出しています。それにも関わらず「同性愛コード」はさほど問題にされず、大統領までもが「この映画を見た」ことを大々的に喧伝し、ブームに便乗しているのです。

製作者たちがどこまで意識的に行なったのかはわかりませんが、「王の男」が結果的に大ヒットして「国民映画」の地位を確立した秘訣はやはり、「同性愛コード」が忌避感を持たれない程度に、万人に受け入れられやすく「美しさ」で薄められたからでしょう。
また、コンギルという「美しい男」に惹かれた王は、物語の最後には結局「女」の元へと戻るという筋書きも、少なからず影響しているのかもしれません。いや、かなり影響しているのでしょう。
しかし、やはりこの映画がヒットしたのは、現在の韓国社会の人々の意識下で予測もつかない「何か」が動き始めていることを意味しているように感じられます。実際に「同性愛コードの分析」などもメディアによって始められているようです。今後ますますそうした機会は増えることでしょう。
男性同士の性行為場面を、物語上の必然として堂々と描いた同性愛映画「ブロークバック・マウンテン」や、ゲイと女性が性行為に挑む場面を含んだ日本映画「メゾン・ド・ヒミコ」も公開されていることですし、なにかと物議を醸し続けることでしょう。韓国のLGBTたちにとって今年は、更なる「社会の中での可視化」に繋げるための絶好の機会なのかも。→FC2 同性愛Blog Ranking
レズビアン映画「卍(まんじ)」渋谷で公開中

う~ん。先日日本テレビで放送された松本清張「指」にしてもそうだけど、レズビアンものの作品に必ずといっていいほど付けられるのが「禁断」の二文字っ!そして漂う耽美なエロティシズムの香りっ!黒と赤の世界っ!
ここまで定番どおりに宣伝してくれると、ある意味アッパレではありますが(笑)。
この「卍」という作品は1928年(昭和3年)に谷崎潤一郎が発表した「同性愛ものの問題作」
有名なところでは1964年に増村保造監督が若尾文子と岸田今日子のコンビで映画化

他には樋口可南子、高瀬春奈の主演
坂上香織と真弓倫子のコンビで服部光則監督が1988年に映画化もしているそうです。レズビアンものの定番なのでしょうか。
今回の主演は秋桜子、不二子のコンビ。監督は「クルシメさん」
まだこの人の作品は見た事がないけれど、「背徳の物語をコミカルなまでにカリカチュア化し、究極の純愛映画の域にまで高めた」という宣伝文句には、「耽美もの」のファンである僕としては興味をそそられます。
こういう作品は、笑えるくらいまで徹底して虚構を構築し、観客を興奮させられるかどうかが勝負。最近観た中では出色の出来だった園子温監督「奇妙なサーカス」の時のように、嬉しい出会いになることを期待しつつ・・・。
それにしてもこの映画、レズビアンの人たちは観に行くのでしょうか。行き辛いだろうな~(笑)。こういう「耽美もの」って男性向けに作られているイメージがどうしてもありますし、客席も大半が男性の「カルト映画好き」で埋まっているような気が・・・。男性は比較的「レズビアンもの」には抵抗がないみたいで、成人映画の感覚で観る人が多いようですからね。この映画も、その層をターゲットにしている感じではあります。
渋谷のユーロ・スペースで4月7日までのレイトショー公開(9:15~)です。→FC2 同性愛Blog Ranking
王の男ブームを追う003●「低予算+時代劇+同性愛」

従来、韓国映画大ヒット作のパターンだった「高予算+トップスター+愛国心+家族愛」という常識を覆し「低予算+時代劇+同性愛」で最多動員記録を樹立した「王の男」。
→FLIX Movie Site3/12「韓国の歴代観客動員数を塗り替えたゲイ映画って?」
この現象は、日本のニュースサイトでも続々と取り上げられ始めています。そして日本での公開は、角川ヘラルド映画と韓国の配給会社が初の試みとして「共同で」配給することが決定したそうです。
→朝日新聞3/5「韓国の異色映画「王の男」謎のヒット 観客1200万人」
「同性愛コード」の広がりに貢献
この映画のヒットを通じて、実際に「同性愛」という言葉が韓国社会の中で表立って語られることにも繋がっているようです。
さる3月5日には韓国文化放送(MBC)『時事マガジン 2580』が、同性愛コードについて深層分析する番組を放送したりもしたそうですし、そのことを日本でもLGBTメディアではなく「ライブドア・ニュース」が報じていることも興味深い事実です。
→Livedoor NEWS 3/2「同性愛者が見る映画『王の男』は?」

●3/26現在「王の男」1位、「メゾン・ド・ヒミコ」4位、「ブロークバック・マウンテン」7位。
→NAVER(Yahoo!翻訳付き)
韓国映画人の「複雑」
同性愛者の役を演じた主演のイ・ジュンギさんは、すでに「国民的スター」として扱われているらしく、韓国で今、問題になっている「スクリーン・クォーター制度」についての盧武鉉(ノ・ムヒョン)大統領とのインターネット対話などに出席。ある意味では、政府の政策を若者たちにPRするのに「利用されてしまっている」面もあるようです。
→中央日報3/23「盧大統領、『王の男』のイ・ジュンギとスクリーンクオータ討論」
→Innolife 3/23「盧武鉉大統領「イ・ジュンギは実物も美男子」
Innolifeの記事によると盧武鉉大統領はイ・ジュンギに対して「映画でだけ美男子だと思ったが、実際に見たら実物も美男子だ。『王の男』は、今もお客さんが入っているのか。私が直接映画を観たが、後でビデオで出ればまた観たいと思っている」と語ったとあります。

イ・ジュンギ氏は映画人を代表して大統領と討論したみたいですが、「王の男」の大ヒットは、スクリーンクォーター制度を縮小させたい韓国政府にとって「韓国映画は実力を持っている」ことを証明する口実を与えてしまったという面もあるため、彼が招待されて議論しても説得力は薄くなってしまうのではないでしょうか。そもそも彼が人選された時点で、そうした政府の思惑が透けて見えます。韓国の映画人たちは、この「メディアイベント」を複雑な思いで見守ったことでしょう。
ハリウッド大作映画の大量上陸に脅える映画人の思いをよそに、「王の男」の海外進出は国を挙げて奨励されるのでしょう。日本以外にも様々な国で上映されることになりそうです。
→朝鮮日報3/19『王の男』 イ・ジュニク監督、米の有力各紙とインタビュー
どのような映画なのか、実際にまだ見ることが叶わないのでなんとも言えませんが、少なくとも「同性愛コード」を広める一助にはなるということで、今後もこの映画の動向には注目し続けようと思います。
→FC2 同性愛Blog Ranking
「yes」創刊の波紋012●ヒースの反抗

アン・リー監督に反抗したエピソード
「そういやアンと映画の上で1つだけ意見が合わなかったことがあったな。最初、アンはおれたちにもっと筋肉をつけたがったんだ。」
「yes vol.2」に掲載されたヒース・レジャーのインタビュー。前回は名言を紹介しましたが今回は映画撮影時の彼の興味深い「反抗ぶり」についてのエピソードを紹介します。
撮影の当初、共演のジェイク・ギレンホールは「すでに筋肉もりもり」だったのに比べ、筋肉の付いていなかったヒース・レジャーに対して監督が「バルク・アップ」を要求したところ、彼は拒否したというのです。それは、彼なりの「役」に対するこだわりでした。
「アンが『ダメダメ、きみにはもっともっと体を大きくしてほしい』って言うわけだ。つまりおれたちにもう少し彫刻みたいな体つきになってほしかったんだと思う。そっちのほうがセクシーだって。でも、おれはそれには賛成しなかった。考えたのは、ひとつはイニスってのは牧場労働者だろ、おまけに貧乏でたいしたもん食ってないんだ。だからイニスって痩せててしかも力が強いみたいな、そんな感じにしたかった。彫刻みたいな体つきじゃダメだって思ったんだ。そんな感じにしたら、なんか、違うよね、時代が・・・。」
そして彼は監督の要望には従わず、あの寡黙で繊細でデリケートな印象のイニス像を作りあげたのです。「それに、おれ、怠けもんだからさ(笑)、で、筋肉つけなかったの」と嘘ぶいてもいますが、本人としては相当なこだわりをもって役に臨んだみたいですね。
彼のこだわりは正解だったと思います。そもそもイニスは自分を「ゲイ」だと自覚している人物ではないのですから「男に対して見せるための筋肉」を持っている必要はないのです。
(ジャックは「ゲイ」だという自覚が映画冒頭の登場場面で既にあるようですから、筋肉モリモリでも不自然ではありませんが。笑)
ごくフツーの男が、わけのわからないままにジャックに惹かれ、わけのわからないままに欲望に身を任せるというリアリティーは、生活者としての自然な肉体だからこそ醸し出せたのだと思います。この映画が表現していることの根幹に関わる部分を、彼のこだわりが、さらに増強させたわけですね。
「俳優の契約はしたけど、セレブになる契約はしてない。」
ほかにもこのインタビューでは、俳優として有名になるにつれてパパラッチが付きまとうようになり、フツーの生活が出来なくなったことの苦労も語られています。特にLAに住んでいた時には、外出時に常に尾行されていたらしく、そんな生活から逃れるために、子供が生まれるのを機に静かな場所に引っ越したらしいです。
今年のアカデミー賞では「ブロークバック・マウンテン」での名演技が評価され主演男優賞にノミネートされたヒース・レジャー。授賞式の会場では、同じく助演女優賞にノミネートされた奥さんのミシェル・ウィリアムズさんと手をつなぎながら賞の行方を見守っていた姿が印象的でした。そのアカデミー賞に関しても、彼は面白い発言をしています。(→FLIX Movie Site)
・・・ホントこの人、フツーの視点を保ち続けているところがいいですね。「それぞれが違う種目のスポーツをしているかのような世界なのに、同じ舞台で競わせようとすることは非現実的だ」
●「yes vol.2」
↑ヒース・レジャーが、LGBTマガジンならではの質問に答えたインタビュー
「HEATH LEDGER INTERVIEW この愛を100%信じて演じた」が掲載されています。
●「yes」オフィシャル・サイト
→FC2 同性愛Blog Ranking