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フツーに生きてるGAYの日常

やわらかくありたいなぁ。

2006-02
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アカデミー賞は日系3世のドキュメンタリーにも注目

 フツーの視点で原爆を語る。

 今年のアカデミー賞。
 「ブロークバック・マウンテン」や「トランスアメリカ」以外に、僕としてはこちらの作品にも注目しています。

 短編ドキュメンタリー部門にノミネートされた「ザ・マッシュルーム・クラブ」(原題「The Mashroom Club」 )という作品で、監督は日系3世のスティーブン・オカザキさん。
→公式HP

 彼は米カリフォルニア州バークリー在住の映画監督で、これまでにも1985年に「公式命令9066/日本人強制収容所」(原題「UNFINISHED BUSINESS~The Japanese American Internment Cases」が長編ドキュメンタリー賞にノミネート。
 1991年の「待ちわびる日々」(原題「DAYS OF WAITING」では、短編ドキュメンタリー賞にノミネートだけではなく受賞も果たしています。一貫して第二次世界大戦という歴史を基点に日本とアメリカの関係にこだわり続けているドキュメンタリストです。

 毎日新聞2/21夕刊「ひと」欄のインタビューによると「ザ・マッシュルーム・クラブ」を作るきっかけは、1979年に友人が英語に翻訳した漫画「はだしのゲン」を読んだことだそうです。戦後50年目の1995年に、米国ではあまり原爆のことが話題にならなかったことに問題意識を持ち、戦後60年を機に昨年、作品を完成させました。

「日本側は被害者の立場だけを強調し、米国側は放射能汚染に触れたがらない」

 ・・・そんな両国それぞれの原爆言説の偏りにかねてから疑問を持っていたというのが、彼ならではの着眼点。日系3世という立場は、日本とアメリカのどちらにも距離を感じるらしく「日米のはざま、太平洋に漂っている」ような感覚をもたらすようです。どちらにも属していないという意識は、どちらにも批判的な視点を持つことにつながります。むしろ彼のようなドキュメンタリストには必要なことであり、財産でもあるのでしょう。

日米とも、加害の歴史に触れるのは「怖い」のだ。

 長年アメリカに住んでいるだけあって、「米国人の心のつかみ方は心得ている」というのが彼の強み。「米国人は原爆の話や映像が怖いのだ。怖がらせず、被爆者の話を聞いてもらえるよう工夫した。」・・・彼の発言からは、率直で真っ直ぐな人柄が窺えます。日本がアジア各地での加害責任と向き合わずに隠蔽しがちな態度を取っているのと同じように、アメリカの人々が原爆被害から目を背けがちであることを「怖い」ということばで表現しているのが印象的です。
 そういえば、ハリウッド映画で原爆を扱ったものはまだ制作されていませんね。原爆投下を「第二次大戦を終わらせた歴史的な出来事」と見ている割には冷たい扱われ方です。やはり「怖い」し「触れたくない部分」であり、出来れば考えたくないのでしょうね。

「原爆を政治問題化せず、被爆者の話を聞こう。数年後に彼らはいないかもしれないから」

 「原爆もの」というと、日本でこれまでに作られてきた作品はどうしても、被害の悲惨さや人命の尊さを情緒的に訴えてくるものになりがちでした。
 もちろんそうした作品は「あの悲劇を忘れない」ためには必要だし意味のあることですが、日本人の既成の原爆観を補強する役割しか果たせていないようにも思います。

 「原爆投下」については様々な歴史的解釈が存在し、なかなか対話が進まないままでいる現在。そこには政治的な思惑も複雑に絡んでいます。そして、安易に一昔前の「イデオロギー対立」の時代の図式に結び付けて感情的に捉えられがちである状況は続いています。この作品がそうした現状に対して何か思考を深めるものになっているのかどうか、未見なのでわかりませんが、彼のような立場の人が作ったということで新しい柔軟な視点が獲得できているのではないかと思います。もし日本で公開される機会があったらぜひ、見てみたいと思います。

 「原爆投下は正当だった」とほとんどの国民が思っているとメディアによって伝えられているアメリカにおいて、アカデミー会員たちがどんな評価を下すのか。原爆を真正面から扱ったこの作品の動向に注目したいと思います。

 スティーブン氏は現在、アメリカで若者に人気のケーブルTV「HBO」の依頼で、2007年から原爆シリーズを放映するために広島、長崎、米国の被爆者を取材しているそうです。
 彼のように「宙ぶらりんで、どちらに対しても批判的な立場を取れる」ことをプラスにして最大限に生かしている姿勢は、ゲイである僕に、なんだかとても勇気をくれます。

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