「yes」創刊の波紋005●「vol.2」の発売日決定

ライターの北丸雄二さんが先日のコメント欄で予告してくださったとおり、映画「ブロークバック・マウンテン」の特集が今回の目玉であり、「社会現象を追って、いろいろと分析をする」ということなので楽しみです。
3月4日の日本公開が迫るにつれ、アカデミー賞の話題性もあり映画雑誌をはじめ数々の雑誌が続々とこの映画を取り上げている昨今ですが、当然のことながらゲイの視点から書かれたものを見かけることはありません。こういう時こそ「yes」の存在意義が問われるチャンスなのではないでしょうか。3月18日からの全国拡大ロードショーに合わせた発売のタイミングもなかなか上手いです。表紙は主演のヒース・レジャーで、彼のインタビューも掲載されるということなので、書店でも目立つのではないでしょうか。
今回の予告で僕がいちばん期待しているのは英国の「シビル・パートナーシップ法」についての大特集。昨年末の施行以来、エルトン・ジョンやジョージ・マイケルらの意識的なパフォーマンスのおかげで日本でも新聞の社会面で多数報じられました。しかし、そのディテールについては詳しく知り得ていません。実際にどのような制度で、従来とはなにが変わったのか。新たな問題点は起きていないのか。ぜひとも詳しく知りたいのでタイムリーな企画です。
僕は正直、「結婚」という制度自体、身近に感じたこともなければ自分のこととして現実味を持って考えたこともありません。「自分には必要ない」と漠然とした所で思っています。しかしそれは単に「あきらめ」と「情報不足」が引き起こしているのかもしれないとも思うことがあります。詳しく知ってみたら何か自分の意識が変わるのかもしれないし、変わらないのかもしれない。まずはちゃんと知ってみたいのです。
また創刊号に引き続き、LGBTマーケットと一般企業とのパートナーシップについての記事があるみたいです。これは創刊号で最も「目から鱗が落ちた」内容であり、希望を与えてくれる記事でした。このように従来の日本では欠けていた発想やビジネスモデルに気付かせてくれる記事こそ、この雑誌ならではの優れた特徴だと思います。この情報をもたらしてくれたと言う事実は、長い目で見たら大きな功績に繋がるのではないでしょうか。
●「yes vol.1」
創刊号を買って僕が最も嬉しく感じたのは、雑誌全体から製作者達の「やったるで~っ!」という熱い思いが伝わってきたこと。ぜひその「熱さ」を保ったままでの更なる発展と継続を期待してます。
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たかがテレビ012●松本清張スぺシャル「指」感想(直後編)

とりあえず、見終わって直後のホットな感想を書いておきますね。落ち着いた感想は改めて書こうと思います。
(番組詳細はこちらを参照)
考えてみたら、「レズビアン」が主要な登場人物として出てくる作品を見ること自体、僕にとっては「はじめて」に近いので、かなりドキドキしながら見ました。きっとレズビアンの人たちがゲイの映画やドラマを見る時は、こんな感覚なのかもしれないと思いながら。同じマイノリティー同士なのに、お互いのことがわかっているようでわかっていない。ゲイは基本的に女性に性的魅力を感じないし、レズビアンは基本的に男性に性的魅力を感じない。だから、意識しないと「交わり」が生まれないんですよね・・・な~んてことを考えながら、ツッコミどころ満載のドラマを見ていました。
まずいちばん思ったのが、女性って綺麗(笑)。このドラマ、男がバカに見えて来ますね~(←これはゲイの発言か?笑)。主要な男性キャストは西村和彦氏と石田純一氏だけだったのだけれど、基本的に物語の主軸を握っているのが女性陣ばかりなので完全に男は「添え物」扱い(笑)。後藤真希さんは演技はともかくルックスはピカ一だし、どことなく少年っぽいかと思いきや「女」になっても見違えるほど美しく、レズビアンたちを翻弄する色気をおもいっきり発散していました。全編にわたってとにかく「女性陣の美しさ」が強調される画面作りだったため、途中でCMに出てくる男たちのことも「邪魔っ!」って感じたし「現実に引き戻さないでっ!」と思ったりしてしまった。(←繰り返す。これはゲイの発言か?笑)
美しい女性だけの世界って、独特の「異空間」を作り出すみたいですね。宝塚にハマる女性の気持ちが、わかったような気持ちになりました。このドラマは、視聴者をもレズビアン的感覚に陶酔させてくれる魔力を持っていたという意味では成功だったと言えるでしょう。
物語上、後藤真希さんを巡って壮絶な火花を散らしあったのが高岡早紀さんと萬田久子さん。特に萬田さんは登場シーンからして寂しい中年女性の悲哀が滲み出てました。綺麗な若い子にメロメロになり、財力にものを言わせて主人公のパトロンになることを生きがいにしてしまう。「あなたをスターにしてあげる」と必死に主人公を自分に繋ぎ止めようとする憐れさと滑稽さを、ちょっとカリカチュア気味ながらも上手く表現していて、さすがでした。
対する高岡早紀さんは、主人公が売れない時代に所属していた小劇場劇団の看板女優。こちらも主人公のことが好きなので、自分が働くレズビアン・バーで主人公が働くことを斡旋し、自分が演じるはずだった主役の座も与えてあげたりする健気な役。中年パトロン(萬田さん)をどう操るべきかを主人公に伝授したりと、なかなかしたたかに自分の思いを遂げようとします。高岡早紀さんは表情をあまり作らずとも、あの独特の妖艶な目つきと分厚い唇による色気が「レズビアンらしく」見えるため、演技にも抑制が効いていて一番リアルに役を造形できていたのではないかと思いました。
萬田さんも高岡さんも結局は、主人公がスターの階段を上る際に邪魔になるため殺されてしまうのですが、この二人のレズビアン描写に共通するのは「健気」だから「美しさに翻弄」されて「破滅」してしまうということ。
隠れて生きている者が愛する対象を見つけた時に、過剰なまでにのめりこんでしまう。これぞ同性愛を描くときの定番中の定番「王道」でしょう。要するに「フツー」じゃない(笑)。まあ、これが松本清張原作の限界なのかもしれないですね。
一つ、レズビアン描写で気になったのが、主人公が働くレズビアン・バーのママの役(高畑淳子)。星野真里演じるレポーターが主人公の過去を調査しに訪ねた時、ママは「お店の子の過去は喋らないよ」と言っておきながらいきなりドアの鍵を閉め、「私と付き合ってくれたら喋る」と言って星野真里の指を「カポッ」とくわえました(笑)。いくらレズビアンが影の存在だということを強調したいからと言って、バーのママがあそこまで若い女の子に飢えているとは思えません。そもそもバーのセット自体、地底の鍾乳洞みたいな暗くジメジメした怪しい空間として造形されており、「やっぱりこう来たか」という、悪い意味での期待をそのまま実現してくれていました。
もしあのママと客の関係をゲイに置き換えて考えても、あそこまであからさまに他人に対して自分の「飢え」を表現する人はいないと思います。普通に社会で生活している人間なのですよ。ここにも松本清張ならではの「サスペンス的に展開させるための前時代的な力技」を感じ、強引だなァとちょっと引きました。結局「男目線」だしご都合主義なんですよね、人間描写が。「火曜サスペンス劇場」は終わるべくして終わったんだなあと感じたし、こうした「誇張したドラマ」による人間描写の限界と、そうした安っぽい表現が引き起こしてきた弊害を感じます。
貧しい女の子が芸能界で「スター」としてのし上がる為に、人間的な感情や愛情を捨て、男でも女でも利用できるものは利用し、利用できなくなったら捨てて有名になって行く。このドラマにおけるレズビアンたちは、そのための踏み台であってレズビアンである必然性はありませんでした。ただ単に「インパクトのある素材として」使われただけなのではないでしょうか。
全体的にサラーッとドラマが流れてしまったのは主演女優さんの個性によるのでしょう。持ち味が「ルックス」にしかなく、ギラギラしてドロドロした「ハングリーな人間としての」エネルギーを表現しきれていないのです。彼女は「人とベッドを共にする」ということをどのように捉えて演じたのでしょう。
たとえ女たちを「スターになるために利用した」にしても、二人きりの時間やベッドで愛し合う時などには、もっと熱烈で親密な雰囲気が醸し出されたはずです。だって主人公は女性と「寝ることが出来る」人だったわけだから。本当に嫌だったらあんなに回数を重ねることは不可能なはずです。(人間って、けっこうそういう生き物だから)。本当に女が嫌ならさっさと利用できる「男」を見つけてしまえばいいはずなんです。美貌で世間を渡り歩く設定なのだから。どうしてわざわざ同性である「女」を利用したのか。そこらへんに演技者としてのリアリティーを持たないと、冷酷に人間を切り捨てて行く際の「冷酷さ」すらも浮かび上がらず、なんだか山場のない薄っぺらい物語で終わってしまいます。
もしや現代の若手女優でこの濃厚な世界を体現できる人はいないのかも・・・と思ってしまいました。物語の設定自体がどうしても、70年代~80年代の若者たちのテイストを感じさせてしまうのです(←要するに、古臭い。)現代では、ここまでハングリーな人は既に「絶滅」していると言えるのでは・・・。
「指」というタイトルは、やはりベッドで愛し合うことを象徴していました(笑)。
「女は指で愛し合うのよ」という過激な台詞もあったのだから、もっと本気で演じてドキドキさせて欲しかったなぁ~。
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メゾン・ド・ヒミコで未知との遭遇015●韓国でヒット中

(→朝鮮日報2/19「日本映画『メゾン・ド・ヒミコ』、韓国で静かなブーム 」 )
公開は1/26から5つの映画館で始まり、この規模の公開にしては異例の4万人の動員を記録。韓国ポータルサイト「NAVER」での「ネチズン」による評価も高いと書かれているので覗いてみましたが・・・( →参照)
あはは、読めね~(笑)。
Yahooの翻訳をかけてみたらかろうじて不思議な日本語で雰囲気を知ることはできます。(→参照)たしかに、映画を見た人が10点満点で点数を付ける投票において、平均9点以上を維持しているようです。(2/21現在)
韓国では一昨年、犬童一心監督の「ジョゼと虎と魚たち」が評判を呼び、昨年になって再上映されたこともあるらしいですね。
( →朝鮮日報2005.11/3「日本の低予算映画『ジョゼと虎…』1年ぶりの再上映、なぜ?」)
その流れもあって今回の公開が実現したようですが、ちょうど「王の男」で同性愛に社会の関心が集まっている韓国では、タイムリーな映画だということも出来るでしょう。しばらくは観客動員を増やしそうです。
ちなみに日本でもロードショーの終了後、二番館系の映画館で上映が続いています。
現在は早稲田松竹ほか2館で公開中。(24日まで→「Movie Waker「メゾン・ド・ヒミコ」参照 )
☆DVD3/3発売
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たかがテレビ011●後藤真希さんがレズビアンを演じるドラマ21日放送

(・・・やっぱ「赤面」しながら「世界に挑む」になっちゃうんですね~。←同じ世界に住んでるんだっつーの。笑)
日本テレビで2/21(火)21:00~放送のドラマコンプレックス「松本清張スペシャル『指』」
この作品は「火曜サスペンス劇場」で1982年に名取裕子主演で放送され、「火サス」史上最高の視聴率28.0%を記録したらしいです。やはり「レズビアンもの」というだけでも珍しいので注目を集めやすいのでしょうか。今回は原作とは設定を変え、芸能界の頂点に上り詰めていく女優の姿を描くとのこと。
共演は高岡早紀、星野真里、萬田久子、西村和彦、石田純一ほか。おそらく番組宣伝等で日本テレビでは「同性愛」の言葉がしばらく飛び交うことになるのでしょうね。
民放ドラマ初主演となる後藤さんは、こんなコメントをしているようです。
「あまりにエロチックな内容なので『なんだこりゃ』って叫んで、赤面しました」
「やっぱりレズビアンの世界ってよく分からない」
・・・演じ終えた女優さんにしては無防備すぎるコメントですね~もっと魂込めて仕事せいっ!
な~んて(笑)。
こちらのサイトで予告映像が見られるのですが、後藤さんが萬田久子さんに抱かれる場面があるようです。おおっ!僕としては萬田久子さんのネットリした怪しい個性は大好きなので、見てみよ~っと。高岡早紀もスゴそうだし。レズビアンの方々にとってみたらけっこう、いいキャストが揃っているのかもしれない。
それにしてもタイトルの『指』って・・・ストレートすぎ。(←そ・・・そういうこと・・・でしょ?)
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ウォンビン兵役報道に思う003●同性愛兵士に「性交渉時の写真提出」を求める韓国軍

(→2/17の記事「同性愛者」を理由に転役された兵士、昨年は8人より)
陸軍関係者は16日、「昨年、同性愛を理由に現役服務への非適合判定を受け、軍服務を中断した兵士は8人に上る」と話した。
同関係者は「これら兵士は自身の部隊指揮官との相談で同性愛による苦しみを告白したほか、軍は規定と手続きにより現役服務への不適合判定審議を経て転役するよう措置した」と語った。軍当局は同性愛者に対し軍人事法施行規則第56条の「変態的な性的傾向をみせる者は現役服務不適合者に該当する」との規定により、転役措置を下している。
一方、国防部関係者は、国家人権委員会や同性愛者人権連帯などが軍の刑法第92条が同性愛者への偏見と差別を内包しているとし、これを廃止するよう要求したことに対し、「同性愛を認める方向で法律を改正するのは困難」との立場を示した。
軍の刑法第92条は単純な同性愛だけではなく、非正常的な方法による性的行為者についても1年以下の懲役刑に処するよう記している。

また、軍隊内部では「同性愛だけではなく、非正常的な方法による性的行為者についても1年以下の懲役刑」とあります。韓国の軍隊は男性のみで構成されているわけですから要するに「他人と性行為」をすることが「非正常的な方法」だとされて罰せられるわけですね。
ぶっちゃけてしまえば、いわゆる軍隊生活においては自慰行為しか「正常な性行為」とは認められていないということ。男としては大変だ~(笑)。2/15には次のような記事も公開されています。
(→ 「性交渉時の写真提出せよ」・・・同性愛兵士の人権被害深刻)
人権運動愛の部屋など44の社会市民団体の集まりである「人権団体連席会議」は15日、ソウル鍾路区安国洞のヌティナムカフェで記者会見を開き、「軍隊内の同性愛者の人権被害を糾弾する」とし、早急な解決を求めた。
同会議は「昨年6月に入隊したある兵士が、自分が同性愛者であるという事実を明らかにし、軍隊内でカウンセリングを求めたが、軍当局はこのような事実に対し秘密維持の約束を守らなかっただけでなく、同意なしでエイズ検査を受けさせたほか、同性愛者であることを証明するため、性交渉の際の写真まで提出させたという内容が同性愛者人権連帯に受け付けられた」と主張した。 「この報告により、軍隊内で同性愛者がどんなに差別を受け、抑圧的な環境におかれているのかが分かる」とし、軍当局の無責任な行動を批判した。
同性愛者人権連帯の関係者は「男性の同性愛者らが軍入隊を避けることができないという状況の中、同性愛者らはいつもセクハラの加害者として扱われ、自分が同性愛者であるという事実をあたかも罪人のように隠し続け、2年間の兵役に耐えなければならない」と話した。

国自体が同性愛を禁じているわけでもなく、映画「王の男」の大ブームを見てもわかるとおり、民衆感情としては同性愛への寛容さも併せ持っている韓国社会。
必要以上に脅威を煽って武器を消費しようとするアメリカの軍産複合体からの圧力が強いのかもしれませんが、そろそろ過去の軍事政権がもたらした影から脱却すべき時が迫っているのではないでしょうか。
「王の男」ブームの動向とも併せて、注視し続けようと思います。
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