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フツーに生きてるGAYの日常

やわらかくありたいなぁ。

2006-01
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園子温「奇妙なサーカス」●MOVIEレビュー

美人が狂うのって美しい

タイトルに惹かれて見に行った。新宿歌舞伎町のド真ん中にある、ちょっとうら寂れた映画館(新宿トーア)は、この映画にぴったりの舞台設定だった。観客は全員が男性・・・。ドロドロと血なまぐさく甘美で濃厚かつエロティックで倒錯したこの映画は、なるほど男性が一人でこっそりと見に行くのにふさわしいのかもしれない。
そして僕にとっても・・・かなり好きな世界かも(笑)。通常の映画では味わえない濃厚な興奮を味わいながら、視覚的にも内容的にもグロテスクな世界にどっぷりと浸かってしまった。

★東京での上映は本日で終了。
地方での公開がはじまります。(公式サイト)

宮崎ますみ復帰作

女優・宮崎ますみにとって、この映画は久しぶりのカムバック作だという。その力の入れようは半端じゃなく、「だ・・・大丈夫?」と心配してしまうほどに壊れまくってくれているから素敵だ。これから「中年」と呼ばれる年代にさしかかろうとしている彼女だけれど、ちょっと疲れてきている感じがかえって色っぽい。「熟女」とはこうした美しさを持つ人にこそ、ふさわしい言葉だろう。

しかも彼女の演技のすごいところは、表面的な美しさをぶっ壊すことに積極的であり、自らが率先してエロスとグロテスクを追求しているところ。心から楽しんで、このハードな役を生きたというところ。それこそ本物の知性と芸術的感性を持っている人でなければ出来ない芸当だと思う。
この映画の彼女は本当に美しい。どんどん汚れて壊れて行く所が最高に美しい。本能や欲望の剥き出しになった所ではじめて見えてくる、人間の本当の美しさというものに気付かせてくれるのだ。

いしだ壱成の狂気と浮遊感

かつてアイドルとして名を馳せた、いしだ壱成の姿を久々に見た。映画の後半をかき回す重要な役どころだ。彼の中性的でふわふわしているけれど鋭いナイフを秘めているかのような独特な存在感が、とても生かされる役どころだった。
浮ついた「ブームとしての人気」から解放されて自由な立場を獲得した人が、俳優としてすばらしい成果をあげることがある。彼にとってこの映画は、そういうものになったのだと思う。

近親相姦・憎悪の渦巻く多次元ワールド

精力絶倫の父親に愛された娘。
母親とのセックスを目撃させられ、自分と父親とのセックスも母親に見られる。すべては父親の性的興奮を満たすため。しかも、なんとその父親は小学校の校長であり、普段は偉そうに生徒達に「道徳」を諭しているという皮肉めいた設定が最高(笑)。

父親という「一人の男」をめぐる母と娘の愛憎。
やがて娘は自分と母親を同一視しはじめ・・・母も同じく倒錯しはじめる。皆がだんだんと狂って行く様子が、独特の映像・美術・音楽センスで彩られ、ギリギリの所で「品」を保ちながらエンターテインメントとしても成立しているからすごい。
時空間の移動が自由であり、次の展開が全く読めないのでどんどん引き込まれる。そしてなにより映像として感覚的に楽しませる術に長けている。しかも内容は哲学的。何拍子もそろった贅沢な映画だ。
地上波テレビのゴールデンタイムではまず間違いなく放送できないだろうし、そんなことをしたら表面的な偽善ばかりを繕いたがる「PTAのご婦人方」から抗議が殺到することは必至(笑)。
しかし人間なんてものは一皮剥けばグロテスクな肉が露呈し真っ赤な血が流れるのが本性。そうしたダークな部分と向き合うには、かなり「心臓の強さ」が要求されるし、精神的な鍛錬が必要なのだ。むしろこうした映画が広く受け入れられることこそが本物の「文化的成熟」。そんなことも考えてしまったりなんかして。

Scan0004.jpgグロテスク=男性的なエロスなのか!?

僕が園子温監督の映画を見たのはこれがはじめてなのだが、その映画的センスには本当に驚いた。感覚的には江戸川乱歩の倒錯世界に通じていると思う。
そういえば乱歩ファンにも圧倒的に男性が多い。乱歩の特集上映が開催されると客席のほぼ大多数は男性が占め、ある意味異様な雰囲気で満たされるのが常。男性的な感覚とはけっこう、グロテスクなものを求めるものなのかもしれない。では女性的な感覚の持ち主がこうした世界を見た時に何を感じるのか。ちょっと気になるところではある。

この監督の代表作には映画 『自殺サークル』があるという。・・・これまたスゴそうだが、エネルギーを蓄えた上で、覚悟を決めた上で、いつか見てみようと思う。・・・ただ、かなりハマリそうだから気をつけないと(笑)。

DVD発売中

●関連記事・・・乳癌で療養中の宮崎ますみさんを応援します。
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