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フツーに生きてるGAYの日常

やわらかくありたいなぁ。

2005-08
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ミック・デイヴィス「モディリアーニ~真実の愛~」●MOVIEレビュー

モディリアーニに覗かれて育つ

小さい頃、両親の寝室に一枚だけ
モディリアーニの絵があった。
もちろんレプリカだが額縁に入れられたその絵は、
小首を傾げた細長い女性がじっとこちらを見返しているという、典型的な彼の女性像。

寂しがりやで甘えん坊だった僕はよく、眠っている両親の間に割り込んで暖かさの中で眠っていた。明くる朝に目覚めると、目玉のないモディリアーニの女性像に覗き込まれるので僕もジッとみつめていた。
だから今でもモディリアーニの絵を見かけると、とても心が落ち着く。
この映画を見るまで、この画家の生涯に興味を持つことはなかったのだが、かなり面白い生き方をした人だったらしい。

ピカソと、本当の意味でのライバル関係

今世紀初頭のパリ、モンパルナスのカフェでの伝説はやっぱり外せない。
コクトーやユトリロなど若い芸術家たちが集まり芸術論に華を咲かせていたという、アート界における伝説。この映画では、そこで出会ったピカソとモディリアーニのライバル関係に焦点を絞ってわかりやすくした。

すでに若い頃から名声を確立していたピカソに対して、まったく無名だったモディリアーニ。二人の芸術表現や生き方は対照的なのだが、互いに気になってしょうがない。まさにライバルなのだ。
二人は事あるごとに挑発し合い喧嘩をするが心の底では尊敬しあっている。その心理描写が面白くスリリング。
対立関係をお互いに作り出すからこそ創作への原動力が生まれる。否定されるからこそなんとか肯定されようと燃えてしまうのが人間というもの。

争っている最中は互いに疎ましく憎しみも覚えるのだろうが、根底に相手への敬意や愛情があるからこそ、嫉妬の炎は燃えあがるのだ。たいへんなエネルギーが必要ではあるのだが、そのおかげで生み出された数々の作品を目にすると、たとえ嫉妬という負の感情であっても見方を代えれば素晴らしいものに思えてくる。

流行のスタイルを忌避し、自己のスタイルを追及

当時の美術界ではフォービスムやキュビズムが大流行。ピカソはそれらを最も上手に吸収し、自己表現へと取り入れて変身して行く。モディリアーニが反発したのはそういったピカソの姿勢であった。
ピカソは、いわば「スター」になる才能に長けていたのだ。なんでも面白がれるし変わり身の早い性格だったのだろう。
それに対してモディリアーニは天の邪鬼。流行に乗ってしまうことは彼の性格が許さない。だから絵が商品にならない。時代の主流ではなく、はみ出してしまうからだ。

金銭的にも貧しく健康面でも優れなかった。だったらなおさら流行作家になって生計を立てようとは思わなかったのだろうか。
思わなかったのだ、そこがモディリアーニのモディリアーニたるところ。
写真を見るとかなりの美男子であったようだから、きっと女性が放っておかなかったにちがいない。彼のまっすぐな性格に惚れ込む強い女性が常に傍にいたのだろう。そして彼もたぶん甘え上手だったのだろう。

絵がかけなくなって彫刻に専念していた時期もあるらしい。
そうした創作面での妥協を許さない性格は徐々に実を結び、自己のスタイルの確立へと繋がって行く。今となっては誰もが思い浮かべるあの「モディリアーニ調」の女性画は、この性格だから生み出された独自のスタイルなのだ。
憂いを帯びてどこか儚げだけれども、その自分が秘めている芯の強さがどこかしらにじみ出てくる人物画。それはきっと、モディリアーニの自画像でもあるのだろう。

死ぬのを待たれていた画家。

なかなか職業画家としての地位を確立できず、かといって自分の信念・性格を曲げることもできなかった彼は、次第に酒に溺れるようになる。
結局35歳で身体を持ち崩し死去。妻のジャンヌは
第二子を身籠っていたのだが、彼の死から二日後に後追い自殺する。

実は、彼の生前からその絵の可能性に気付いていた画商はかなりいるらしい。しかし本人の性格や体調不良からその死が迫っていることは周囲も察知していて、死後に絵を安く買占め、高値で売ろうと画策していたという。
結局、そのたくらみどおりになった。

死人に口なし。商品化される「モディリアーニ伝説」。

今では世界的に有名なブランドと化したモディリアーニ。これほど世界中に広まるものであったことを、ついに本人は知らないままだった。そこがいわゆる「モディリアーニ伝説」として人々の興味をそそるところ。

芸術家という、一見華々しくも思える生き方の裏に潜む一筋縄では行かぬ闇。
そこを垣間見られる彼の伝説。
まっすぐに生きた人が、認められないままに人知れず非業の死を遂げる。
それは、そこまでの強さを持てずにフツーに生きている我々が、実は心の底で憧れる激しい生き方。要するに一つのヒーロー像である。
この映画は、そうしたモディリアーニ伝説を見事に補強し、観客を表面的に楽しませてくれる。
もう少しこの監督なりの見解や批評にまで踏み込んで表現することは出来なかったのだろうか。恋愛映画として商品化するには、しょうがないことなのかもしれないが。

「真実の愛」
・・・副題のセンスとしてどうなんだろう(笑)


この映画の日本公開時の副題には「真実の愛」とある。モディリアーニの死後自殺したジャンヌとの「愛」もこの映画の軸として描かれているからだ。
しかし僕の興味が、彼の芸術家としての生涯の方にあったためか、「愛」とやらの描写はあまり印象に残らなかった。なぜならこの手の映画にありがちな、女性観客を意識したラブロマンス風の演出の紋切り型から抜け切れていなかったように思うから。
そこに捉われてしまったことが、この映画を中途半端な印象にしてしまった原因なのではなかろうか。芸術家というものは、決して綺麗なものではない。ヒーローでもない。
表現せざるを得ない屈折を抱えた人間が行う排泄行為が芸術だ。
安易に主人公をヒーローにしてしまうのではなく、もう少し「人間の狂気」に迫って欲しかった。

比較するのもなんだけど、やっぱり比較してみたくなった。

1958年にジャック・ベッケル監督が、ジェラール・フィリップの主演で「モンパルナスの灯」という映画を創っている。
こちらもモディリアーニの生涯を描いているが、この映画とは焦点の当て方がだいぶ違うらしい。
パンフレットで評論化が比較して、今回の作品の甘ったるさを婉曲的に皮肉っていた。
ぜひ見てみようと思う。


「モディリアーニ~真実の愛~」
2004年 仏・英・伊合作 126分
監督・脚本・・・ミック・デイヴィス
エグゼクティブ・プロデューサー・・・アンディ・ガルシア
出演・・・アンディ・ガルシア、エルザ・ジルベルスタイン、オミッド・ジャリリ、
エヴァ・ヘルツィゴヴァ、イポリット・ジラルド他

「モディリアーニ 真実の愛」DVD

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