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ロビー・ボルドウィン「ワンダフル・デイ」●MOVIEレビュー

忘れたくても忘れられない映画。

実家に帰り複雑な思いをした のは、半分はこの映画のせいだっ!。
今年の「東京国際レズビアン&ゲイ映画祭」で上映された短編オムニバス
『夜の彼方へ ボーイズ短編集』の一篇であるこの映画は、そう文句を付けたくなるほど、今の僕にとってタイムリーな映画となってしまった。見なきゃよかった・・・。

母の危篤でカミングアウト。

母親が危篤であることを知ったドラァグクイーンが、その病室へ向かう。
タクシーに乗りながら回想する母との思い出が、イメージショットで挿入される13分の短編。
ゲイバーでのショーを終えるやいなや、そのままタクシーに飛び乗り車内でメイクを落とす。服は舞台衣裳のきらびやかなドレスのまま。
「どうして化粧を落とすんだ」と運転手に言われ、「こんな格好じゃ病院に入れないわよ」とヒステリックに返す彼。どうやら母にはカミングアウトしていないらしい。
さっきまで妖艶だったその顔は、疲れた男の顔へと変化する。

少年の頃の回想シーンは、プールの高飛込みに挑戦するところ。
飛び込む前の怖れ、おののき。おだやかな顔で応援する母の顔。姉の顔。
それはすでに遠い過去。優しかった母は、もうすぐこの世からいなくなろうとしている。

タクシーの運転手に制服を借り、病室に駆け込む彼。ベッドで眠る昏睡状態の母。
二人きりになった彼はついに、いちばん言いたかったことを母に告白する。
「僕、ドラァグクイーンなんだ。」
母には聞こえているのかわからない。
するとそのとき・・・母の意識が戻った。
母は笑顔を浮かべて言う。
「自信を持ちなさい。」

・・・罪な映画だ。

この映画の面白さは、こうした湿っぽい場面と並行してインサートされる、あっけらかんとした現実描写にある。看護婦や医師は、病室にはいない。家族水入らずの時間を邪魔しないためだ。なんと彼らは別室で、のんきにもテレビのスポーツ中継に熱中している。

母親が絶命する瞬間。心電図が警報を鳴らす頃。
テレビのスポーツ中継の歓声も一段と大きくなる。そして母の死を嘆き悲しむ主人公と、テレビに向かって楽しそうに興奮する看護婦たちの表情が交互に対比的に描かれる。
「死」と「カタルシス」の同居。世の中は一面ではない。
それを見る観客の意識は、その対照的な光景に引き裂かれる。どちらの情景にも感情的に没頭できない。だからこそ基本的には笑っていられる。そんな映画だった。

なんか、こういう「親との邂逅」の場面って同性愛者だったら必ず夢想する典型的な出来事。
その呪縛から逃れることは難しい。それがこうもはっきりと鮮明に映し出されると・・・
「忘れたくても忘れられない」映画になってしまう。
なるべく考えないようにして逃げている事柄が、無邪気にもヒューマニスティックに美しく描き出されてしまうことの残酷さ。正直、「やめてくれ~」と叫びたくなる。

呪縛から抜け出せない・・・

だから先日、僕が久しぶりの帰省で両親に会って妙にナーバスになってしまったのは、この映画のせいなのだ。(ということにしておこう・・・笑。)妙に脳裏に焼きついてしまった。
罪な映画だ。たった13分の短編なのに。
まずい。この映画のコントロールから抜け出せなくなってしまいそうだ。

「A Wonderful Day ワンダフル・デイ」
監督: ロビー・ボルドウィン
Dir: Robbie Baldwin
2003 / AUSTRALIA / Betacam SP / 13min

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