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フツーに生きてるGAYの日常

やわらかくありたいなぁ。

織田作之助「夫婦善哉」●読書レビュー

豊田四郎監督の映画版「夫婦善哉」に感動し原作を読んでみたくなった。
ネットの「青空文庫」で公開されているのを知り、さっそくプリントアウト。いわゆる短編小説なので一時間もあれば読めてしまう手軽さが嬉しい。

「青空文庫版」では、難しい漢字や知らない言葉に読み仮名が記されていて、非常に読みやすかった。
映画では森繁久弥さんと淡島千景さんが演じた
あの愛すべきキャラクター、柳吉と蝶子が
より一層生き生きと感じられる名文だった。


男性作家による、女性へのファンタジー

先に映画を見た分、どうしても比較しながら読んでしまうのだが、小説ではより生活に密着した描写の細やかさが印象に残る。特にお金の記述が具体的で詳しく、生活感に満ちあふれている(笑)。
いくら愛があっても先立つものがなければ続かぬのが実際の生活。特に芸者と旦那との駆け落ち道中なのだから、自分たちで逞しく稼がなくては食ってはいけない。
しかし柳吉は金持ちのボンボン育ちですぐに散財してしまう。そのたびに派遣芸者(ヤトナ)として稼ぎに出なければならない蝶子。かなり散々な目に合わされ苦労の連続。夫のでたらめな行状の尻拭いを結局は蝶子がしなければならないのだ。

でも、蝶子はけっして柳吉を捨てようともしなければ別れようともしない。普通だったらこんなひどい仕打ちを受けていたらとっくに別れるだろう。ところが、貧乏育ちで一介の芸者である自分と柳吉が一緒にいることは特別なことなのだという謙虚な姿勢を一貫して持ち続ける。
とても自制心のある女性だなぁと感心するとともに、自分が決めたことを貫き通す意志の強さを感じる。

蝶子というのはある意味では、男性作家から見た理想の女性像の象徴であり、「こんな女がいたらいいなぁ」というファンタジーなのかもしれない。

甘え上手な男は得をする

柳吉という男性も、女性をそこまで惚れさせるほど、母性本能をくすぐる魅力にあふれた人なのだろう。
蝶子にしてみれば、どんな逆境でもそれが好きな人と一緒に過ごすためならば逆境とは感じないものなのかもしれない。柳吉と一緒にいるという、ただそれだけのことが蝶子を生き生きと輝かせる原動力になっているのだ。

よく聞く話だが、長年連れ添うと夫婦というものはお互いの嫌な面ばかり目に付くようになり、愛情表現もしなくなるらしい。しかしそれでも夫婦関係が続くのは、日本社会の場合たいていは「女性が辛抱するから」なのだろう。経済的に自立していないため、夫の収入がなければ生きて行かれない場合も多いので辛抱を当然と受けとめている人も多いだろう。「女性というものはそういうもの」という社会的な役割分担を疑わずに受け入れているから、辛抱を辛抱とは感じないのかもしれない。
しかし蝶子の場合、経済的には自立している。
芸者としての専門的技能も身につけている彼女は、たとえ一人でもバリバリ稼いで生きて行かれるはず。でも彼女は柳吉と別れない。なぜ、こんなどうしようもない情けない男と別れないのかといえば・・・柳吉が愛すべきキャラクターだからなのだろう。変に威張った所はないし、自分の情けなさを隠さないし、女性への甘え方も心得ている。

女性の大半は、甘えられるのが大好きである。
(↑注:僕の独断と偏見ですっ!)

甘えられるということは、女性のプライドを満たすことにもつながる。
ということは・・・
もしかしたら、女性に愛される術を心得ている柳吉の方が、実はしたたかなのかもしれない。


SとMの駆け引きが夫婦の妙!?

一方の蝶子もなかなかどうしてしたたか。柳吉がフラフラといなくなっても、結局は自分の所に帰って来るしかないことを心の奥では確信しているかのような強さを感じさせる。
感情表現がストレートな蝶子は、柳吉が遊んで散財して帰って来た時には容赦なく折檻する。儀式のように行われる折檻は、まるで夫婦の絆を確かめ合っているかのよう(笑)。
折檻というものは、相手に愛情があるからするものだ。
される側も、信頼しているから折檻されることを受け入れる。
軽いSMのようだが、そうした関係に実はお互いが快楽を感じているから、繰り返されるのではなかろうか。
S同士、M同士の夫婦というのは上手く行きそうもない。
SとMが駆け引きし合うバランス関係こそ、夫婦を成り立たせる絶対条件であり、快楽なのかもしれない。

・・・こうしてこの二人のことを思い描くと、なんだかんだ言って「自分が帰るべき人」を見つけた者の持つ強さを感じる。

まだそうした経験のない僕には想像の中の出来事。
そして、いつか誰かとこうした確信に満ちた関係が気付けたら・・・と思う自分を発見する。
なんでそう思うのか。
やっぱり人は、基本的にさびしがりやなんだと思う。

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